2012/06/01

シド・ヴィシャスのオリジナルはシド・バレットだ!

Hamster by turquoise field
Hamster, a photo by turquoise field on Flickr.

PiL 20年ぶりのニューアルバム「This is PiL」が先月、無事リリースされました。長いこと待った甲斐のあるすばらしい作品で、書きたいことが色々たくさんあるんですが、ここはあわてず落ち着いて、新作については1曲ずつ徐々に書いていきたいと思います。なので、今日のところは新作とは直接関係のない軽いネタ。

ジョン・ライドンが友人のジョン・ビヴァリーにつけたあだ名、シド・ヴィシャスというのが、実は彼が飼っていたハムスターの名前だったというのはファンの間ではよく知られている話で、彼の自伝「No Irish, No Blacks, No Dogs」にも書かれています。ところが今年4月になって、新たな事実が判明しました。この話にはまだ続きがあったのです。

NME 4月14日号にジョン・ライドンとザ・ホラーズ(The Horrors)のリース・ウェッブ(Rhys Webb)の対談記事が掲載されました。ジョンとリースは和気藹々と音楽談義に花を咲かせているのですが、そこでこんな話をしています。

リース「シド・バレット時代のピンク・フロイドは聴いたことあります?好きですか?ファースト・アルバムは素晴らしいですよ。」

ジョン「好きだよ。シド・バレットといえば、彼がオリジナルのシド・ヴィシャスなんだ。彼のニックネームだったんだよ。それで俺は彼にちなんで、ペットのハムスターに同じ名前をつけた。シド・ヴィシャス2号さ。その後やってきたのがジョン・ビヴァリー、彼がシド・ヴィシャス3号になった。つまりシドは良き先人たちが連なる、由緒正しい名前を引き継いだんだよ。」

NME April 14, 2012

シド・バレットがシド・ヴィシャスというあだ名でまわりから呼ばれていたのか、それともジョンが勝手に名付けてそう呼んでいたのかは分かりませんが、とにかくピストルズのシドは三代目だそうです。

あとジョンは「I Hate Pink Floyd (ピンク・フロイドなんて大嫌いだ)」と胸に書かれた T シャツを着ていたのがきっかけでピストルズにスカウトされた経緯があって、本当にそうだと思ってる人が今でも多いのですが、上記の通りそんなことはありません。ピンク・フロイドは大好きだそうです。ジョンはデイヴ・ギルモアとも親交があって、2007年のインタビューではこんなことを言ってました。

(デイヴ・ギルモアは)すごくいいやつだよ。去年、LA でギグをやるから Dark Side Of The Moon の曲を何か歌ってくれないかって話があったんだ。ディスカバリー・チャンネルの虫のドキュメンタリー(John Lydon's Mega Bugs)の仕事とぶつかっていなければ、ぜひやりたかったんだけどさ。"I Hate Pink Floyd" に関する話には笑っちゃうよ。あれをマジに受け止めている奴は考えを改めたほうがいい。俺はシド・バレット、彼がオリジナルのシド・ヴィシャスなんだけど、彼のいた初期のピンク・フロイドが大好きなんだ。もちろん70年代のいくつかの作品も大好きさ。俺が嫌いだったのは、ピンク・フロイドを神のようにして崇めて、批判なんか許さないって態度を取っていた連中のほうさ。もうひとつおもしろい話があるんだよ。俺の弟がトリントン・パークにある学校に通ってるんだけど、そこの美術の教師がなんとロジャー・ウォーターズのヨメさんなんだよ! 世界は狭いよな。もちろんその女性が嘘をついていなければの話だけどさ... そうだよ、あいつら実はいんちきヒッピーなんだ!

Uncut Magazine, December 2007

昔のジョン・ライドンは他のアーティストやバンドなどの影響をめったに口にしないことで有名だったのですが、ここ5年ほど様子が変わってきて、好きなバンドや曲名をどんどん明かすようになっています。上記の対談でもほかに、ホークウィンド、ドクター・フィールグッド、ジェイムズ・ブラウン、ビージーズなどの名前が挙がってます。

現在イギリス BBC では、パンク35周年記念として Punk Britannia というテレビ、ラジオを合体させたシリーズ企画をやってるんですが、本日その第一弾、6 Music ラジオの番組 Playlist でジョン・ライドンの番組が放送されました。ジョンが DJ を勤め、1時間に渡って自分のお気に入りの曲をかけまくる番組です。今日かかったのは以下の20曲です。

  1. Jim Reeves - Welcome To My World
  2. Audience - Eye to Eye
  3. ABBA - Fernando
  4. Bonzo Dog Doo-Dah Band - Canyons of Your Mind
  5. Bee Gees - New York Mining Disaster
  6. Pete Seeger - Little Boxes
  7. Petula Clark - Downtown
  8. Noël Coward - Mrs. Worthington
  9. Johnny Cash - A Boy Named Sue
  10. Captain Beefheart and His Magic Band - Moonlight on Vermont
  11. Public Image Ltd. - Deeper Water
  12. Soggy Bottom Boys - Man of Constant Sorrow
  13. Patsy Cline - I Fall to Pieces
  14. T.Rex - Cadillac
  15. T.Rex - Life's a Gas
  16. Edgar Broughton Band - Gone Blue
  17. Black Sabbath - Paranoid
  18. Count Five - Psychotic Reaction
  19. Alice Cooper - I'm Eighteen
  20. Édith Piaf - No Regrets

このリストを見て「ええーっ、何これ?」と思う人、「あー、やっぱし」と思う人、「えーん、知らない曲ばっかし」と嘆く人、人によって感想は色々でしょうが、どれもジョンお勧めの曲です。6 Music の Web サイトで4週間聴けるようになってますので、この週末、ゆっくりとお楽しみください。

ところで Edgar Broughton Band の Gone Blue という曲はこの放送で初めて聴いたんですが、これひょっとして Poptones の元ネタ?

なおジョンのこの番組は続きの Part 2があり、6月3日、日本時間の夜8時から放送の予定です。

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