2012/06/23

ロックのステージが伝統芸能になる日 (二代目アリス・クーパーを考える)

Alice Cooper & Orianthi
Alice Cooper & Orianthi, a photo by Mike__Lawrence on Flickr.

前回「これからは旅芸人一座の時代だ」という話をしたので、この人に触れておかないわけにはいけません。アリス・クーパーです。業界デビューは1967年ですから、この道45年の大ベテランです。マリリン・マンソン、ロブ・ゾンビ、キッスなどに大きな影響を及ぼし、シアトリカルなステージとショック・ロックの創始者として知られる偉い人です。アリス・クーパー一座を率い、今も精力的にライヴ活動を続けています。

ロック音楽というものが生まれてそろそろ50年くらい経ちます。ロックが生まれて間もない頃は演る方も聴く方も若くて「ロック音楽 = 若者の音楽」のように思われていたのですが、当然そんなの錯覚で、時が経つに連れ人は年を取っていきます。今では60代、70代のロック・ミュージシャンもリスナーも珍しくありません。

何十年にも渡って活動を続けているロック・ミュージシャンはけっこうたくさんいます。ただし、昔一世を風靡したアーティストでも、その後のキャリアの中で新たなファンを獲得できなければ、観客は中年や年寄りばかりになってしまいます。

ところがアリスは違います。アリスのステージというのは、ぶっちゃけ40年前も今も、あまり変わっていません。変わっていないのになぜか、常に新しいファンを獲得し続けています。アリスのライヴには兄ちゃん、姉ちゃん、おじさん、おばさんだけでなく、最近ファンになったガキんちょや、アリスと同年代のじいちゃん、ばあちゃんまで、他に例を見ないほど幅広い年齢層のファンが集まります。メタルなギターが鳴り響くステージの最前列でばあちゃんがガキんちょと一緒に「あ〜い、らぶざでぇっど」と歌ってる姿、これほど感動的な光景がほかにあるでしょうか?

新たなファンを常に獲得し続ける理由、それはもちろんアリス自身の作詞、作曲能力やステージ・パフォーマーとしての才能、魅力によるものであることに疑いはありません。だけどそれだけじゃないと思います。アリスのステージや作品にはアリス自身を越えた何かが宿ってるんだと思います。

日本の伝統芸能の世界でよく使われる言いまわしに「芸は一代限り」というのがあります。人の才能とか魅力というのは他人に引き継げません。その人だけのものです。だけど一方で、個人の才能を越えて引き継げるものがあるからこそ、「伝統」芸能というものが成り立つわけです。

ロック音楽とそのコンサートいうのは、まだ歴史の浅い芸能です。だからまだ伝統として引き継ぐべき形が見出せていないのだとも言えます。だけどアリスのステージは?アリスはひょっとしたら、今後数百年に渡って引き継がれる普遍的な何かを既に見つけたんじゃないかと思うのです。

普通、人は「俺は18歳、だけど頭は赤ん坊のまま、心はもう年寄り」とか「俺は死体が大好き」なんて歌やギロチン、縛り首パフォーマンスに伝統としての価値を認めたりしません。ですが、確かにここに何かあるんです。世代を越えて人を惹き付ける何かがあるんです。それをアリスが発見したんです。

アリスは今年64歳なんですが、今でも年間80本とか90本という、驚異的な数のステージをこなしています。ずっとそれを続けてます。旅芸人なんです。ですが体力的に考えて、今のようなステージができるのはあと数年でしょう。ここから先は勝手な妄想なんですが、アリスは今、自分の芸を引き継ぐべき跡取りを探してるんじゃないかと思うんです。

一年ほど前、アリスのバンドにオリアンティ(Orianthi)が加わりました。マイケル・ジャクソンの This is It にも出ていた、まだ20代の若き女性ギタリストです。何の根拠もないんですが、アリスはこのオリアンティを二代目アリス・クーパーにしようと考えてるんじゃないかな、と思うんです。

Q: アリスと一緒にやることになった経緯を教えてもらえますか?

ボブ・エズリンからのメールがきっかけだったの。ボブとはフィフィ・ドブソンの曲で一緒に仕事したことがあったんだけど、私がニューアルバムをレコーディングしていたナッシュビルまで彼が会いに来て、アリスのバンドでやってみる気はないかって誘ってくれたのよ。アリスとは一度アメリカン・アイドルで一緒に School's Out をプレイしたこともあったし、すごく惹かれる話だったのよ。

でもやってみたらこれマジですかって感じだった。だってアリスの曲を全部1週間で覚えなくちゃならなかったんだから。だけどこういうチャレンジは大好き。自分を未知の新しい分野に挑戦させるの。ミュージシャンってそういう人種なのよ。

Q: ええと、あなたはまだ15歳でしたよね?アリス・クーパーの長年に渡る膨大な作品についてあまりご存知なかったのでは?

15よりはちょっとだけ老けてるわよ!(笑) もちろん School's Out や Poison とか曲は色々聴いていたわ。アリスのことはずっと、すばらしくクールで最高のオリジネーターだと思っていたけど、バンドでアリスの曲をカバーしたことはなかっただけ。

1週間かそこらの大急ぎでレパートリーを覚えてみて分かったのは、曲がすごくうまく書かれてるってことだったの。クールなギター・パートがたくさんあるだけじゃなく、プレイヤーがさらに活躍できる余地が残されているのよ。スティーヴ・ハンターと一緒にプレイできるのも楽しい。今までやってきたことはまったく違う経験なのよ。

Q: マイケル・ジャクソンと一緒に仕事をした後ですから、間違いなくたくさんのバンドやツアーのオファーがあったと思うんですが、なぜアリス・クーパーを選んだんですか?

それが正しいと思ったからよ。ホンモノのロックンロールで、今まで私がやったこととは全然違っていたから。私はロッキー・ホラー・ショーみたいで、演劇的なアリスのステージが大好きなの。単なるコンサートじゃなくて、まさにショーなのよ。彼は素晴しいパフォーマーであり、ホンモノの存在感を持ってる。私はそういうのをやりたかったのよ。

Interview: Orianthi on touring with Alice Cooper

ね、なかなかいい娘でしょう、オリアンティ。二代目アリス・クーパーもありかなって思わない?もしオリアンティが来年のツアーと次のアルバムのレコーディングに参加するなら、俄然その確率は高くなると思います。

もちろんそんないきなりじゃなく、これから10年くらいかけて徐々にステージ上でのオリアンティの役割を増やして、その後、初代アリス・クーパーの引退と同時に二代目襲名披露を行うって感じでいかがでしょう?

あと30年くらい経って貫禄の付いたオリアンティがアリス・メイクで「私が車をドライヴ、あんたは私のタイヤの下敷き」って Under My Wheels を歌うの聴きたくない?オラは聴きたいなあ。

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