46 - Kinks, The - Father Christmas - UK - 1977, a photo by Affendaddy on Flickr. |
キンクス(The Kinks)は長いキャリアを持ち、数多くの優れた作品を世に出した有名なロックバンドでありますが、同時期に登場したビートルズやストーンズ、あるいはザ・フーなんかに比べて今ひとつ人気がありません。それはなぜかと言えば、ソングライターであるレイ・デイヴィス(Ray Davies)の曲が常に「自分たちが落ち目であること」を意識して書かれているからだと思います。
「落ち目」というのは誰でもなろうと思ってなれるものではありません。なぜなら落ち目になるためには「過去の栄光」が必要だからです。イギリスというのはかつて大英帝国として栄華を極め世界を支配した、今は落ち目の国です。そしてレイ・デイヴィスはこの落ち目の国での人々の生活心情を、その天才的才能を持ってポップソングに結実させてきた人です。世界の中で落ち目というものを経験した国がまだ数少ないことを考慮すれば、キンクスの曲を共感を持って受け入れられる人の絶対数がまだ少ないということですから、イギリス国内ほどには世界で売れなかったとしても不思議ではありません。
落ち目になるにはまず栄光をつかまねばなりません。多くの国が競い合う中で栄光を勝ち取るには、もちろん国民の長年に渡る努力だけではなく、多くの偶然、幸運を必要とします。そして勝ち取った栄光もやがてその勢いが尽きる時がきます。下り坂になるのですが、最初はみんな気が付きません。なんか変だな、調子悪いな、でもまたがんばれば何とかなると考えて、下り坂であることを自覚しません。そのうち下向きの加速度が増して、みんなが「これはひょっとして落ち目というやつ?」と気が付いたときはもう後の祭りです。下向きの勢いがついているので、再び上昇に転じるには、前に上ったときとは比べものにならないほどの努力と幸運が必要となるからです。ほとんど無理といって過言ではありません。
でもまあ過去の栄光とはいえ、何もないよりましです。場合によっては過去の栄光に敬意をはらってくれる人もいるし、過去の栄光の残り物が全部すぐになくなってしまうわけでもないからです。
イギリスに比べるときわめて短いものでしたが、かつて日本にも栄光の日々と呼べるものがありました。そしてわたしたちは今、誰の目にも明らかな落ち目です。だからやっと日本でも、多くの人がキンクスの歌に共感できる日が来たんじゃないかなと思います。
イギリスは日本より先に、はるかに長く大規模な落ち目を経験しています。その中で様々な失敗をして、今もまだ落ち目から抜け出すどころか、さらに状況が悪化しているようです。だからこそ、わたしたちは今、キンクスを聴いて学ばなければならないのです。
キンクスのアルバムを全部揃えなさいとは申しません。せめてベスト・アルバムくらいは一家に一枚購入して、いざというときのために、代表曲はすべて歌えるようにしておきましょう。
メリー・クリスマス。
子供の頃、ぼくはサンタを信じていた
サンタの正体はパパだって知ってたけど
クリスマスの夜には靴下をつるして
翌朝プレゼントを開けてよろこんだものだけどこの前、ぼくは自分でサンタをやることになった
サンタの格好でデパートの前に立っていたら
チンピラのガキどもがやって来て、ぼくはいきなり襲われた
となりに立ってたトナカイもぶちのめされたそれから奴らは言った
おいサンタ、金をよこしな
ガキのおもちゃなんかに用はない
よこさないとぶち殺すぞ
俺を怒らせるなよ、俺たちは金が欲しいんだ
おもちゃなんか金持ちのガキにくれてやれ弟はスーパーヒーローのコスチュームなんか欲しがらない
妹もぬいぐるみなんかには興味がない
ジグソーパズルやおもちゃの金なんかくそくらえ
俺たちが欲しいのは現金だけだおいサンタ、金をよこしな
よこさないとぶち殺すぞ
おいサンタ、金をよこしな
ガキのおもちゃなんかに用はないんだだけどもし仕事があるなら、ひとつ俺の親父にくれないか
食わせなきゃならない家族がたくさんいるんだ
もし仕事をくれるなら、俺はマシンガンを手に入れて
あんたを町のチンピラどもから守ってやるおいサンタ、金をよこしな
ガキのおもちゃなんかに用はないんだ
よこさないとぶち殺すぞ
俺を怒らせるなよ、俺たちは金が欲しいんだ
おもちゃなんか金持ちのガキにくれてやれありがとうな、メリー・クリスマス
いいクリスマスを過ごせよ
だがいいか、ワインを飲むときも
何ももらえないガキが、たくさんいるってことを忘れんなよ