sparks9, a photo by The Untrained Eye on Flickr. |
切ない気持というのが洋の東西を問わず、偉大なポップソング、ラブソングを生み出す大切な要素であることは、多くの人が認める事実です。
ですが先日ふと「切ないって、英語でどういえばいいんだっけ?」と思って調べてみたんですが、なんかぴったりくる言葉がないんですよ。辞書には heartrending とか disconsolate という単語が載っているんですが、なんか大柄なハリウッド女優が号泣しながらハンカチで鼻水をチーン、ズズーッとやってる姿を想像してしまって、どうもしっくりきません。
かといって英語圏の人たちが「切ない気持」というものを理解していないのかといえば、そんなことはありません。なぜならスパークス(Sparks)という世界最高に切ないバンドが、絶大な人気といえないまでも、40年という長い間支持され続けているからです。
「切ない」という単語が存在しないからこそ、存在しない言葉を伝えようとして、ラッセル・メイル(Russell Mael)の声はあんなにも切ないのかもしれません。
「Pulling Rabbits Out of a Hat」はこれまで二度レコーディングされていて、同名のアルバム(1984)に収録されてるオリジナルのほか、セルフカバー・アルバム「Plagiarism (1997)」に入ってるオーケストラ・バージョンもあります。ビデオは2008年におこなわれた21夜におよぶキャリア総括ライブ Sparks Spectacular 第17夜のもので、オーケストラ付きの「Plagiarism」アレンジです。
ラッセル・メイルはどうしてこんな歌を泣かずに最後まで歌えるんだろう。
ぼくは太陽と月をつかんで
世界を手のひらに収めることだってできる
何だってぼくにはたやすいこと
だけどきみには、わかってもらえない帽子の中からウサギを取り出して見せる
帽子の中からウサギを取り出して見せても
返ってくるのは、礼儀正しい拍手だけ
ただ拍手、拍手、拍手、拍手だけ天国と地獄の驚愕の光景を目前に見せ
シャンゼリゼの光景にうっとりさせた後
タイタニック号を引き上げたとき
客席のきみが、帰ってしまうのが見えた帽子の中からウサギを取り出して見せる
帽子の中からウサギを取り出して見せても
返ってくるのは、礼儀正しい拍手だけ
ただ拍手、拍手、拍手、拍手だけ「おもしろいわね」きみが言ったのはそれだけ
「おもしろいわね」そしてきみは去っていったぼくは貧乏人を王様にすることもできる
水をワインに変えることだってできる
どれもぼくにはたやすいこと
だけどどうして、きみの心を変えられないんだろう帽子の中からウサギを取り出して見せる
帽子の中からウサギを取り出して見せても
返ってくるのは、礼儀正しい拍手だけ
ただ拍手、拍手、拍手、拍手だけ