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2012/09/01

みんなアメリカを探しに来たんだ (America - ファースト・エイド・キット)

Long Live Liberty
Long Live Liberty, a photo by Wallflower83 on Flickr.

ポーラー音楽賞(Polar Music Prize)、日本での知名度はいまひとつなんですが、ABBA のマネージャーだった Stig Anderson がスウェーデン王立音楽アカデミーの援助を受けて1989年に創設した賞で、音楽界のノーベル賞とも呼ばれています。今年はポール・サイモン(Paul Simon)とヨーヨー・マ(Yo-Yo Ma)が受賞し、授賞式が8月28日にストックホルムで開催されました。

受賞者を差し置いて、昨年に引き続きステージに立って歌ったのはスウェーデンが誇るおぼこ姉妹デュオ、ファースト・エイド・キット(First Aid Kit)です。去年は「Dancing Barefoot」を歌って受賞者のパティ・スミス(Patti Smith)を泣かせてしまったんですが、今年もまたやってくれました。

歌ったのはポール・サイモンのサイモン & ガーファンクル(Simon & Garfunkel)時代の曲「America」です。客席で聴いてるポール、うるうるしてます。なんだかこの授賞式、もはやファースト・エイド・キットの実力をベテラン・アーティストにアピールする場になってませんかね。

「America」は探していたものが、あるはずの場所に見つからなかった。いったい何を探していたのか、わからなくなってしまったという青春の歌です。そこで探すのを止めてしまうと単なる昔を懐しむ歌にしかなりませんが、そこが始まりだと気付けば希望の歌になります。

「ぼくら恋人同士にならないか。お互いの財産目当てに結婚を企むんだ」
「あら、わたしカバンの中に少しばかり土地を持ってるのよ」
それからぼくらは煙草を1箱とミセス・ワグナーのパイを買い、アメリカを探して歩き出した

「キャシー」
ピッツバーグでグレイハウンドの長距離バスに乗るとき、ぼくは言った
「ミシガンにいた頃のことが、今じゃもう夢みたいに思えるよ」
サギノーからはヒッチハイクで4日もかかった。
ぼくはアメリカを探しに来たんだ

バスの中ではゲームをしてふざけ合った
彼女が「あのギャバジンのスーツを着た男の人はきっとスパイね」と言えば
ぼくは「気を付けろよ、あの蝶ネクタイは隠しカメラだから」と応えた

「煙草を取ってくれないかな。レインコートのポケットに残っているはずなんだけど」
「1時間前に吸ったのが最後の一本よ。」
仕方ないのでぼくは景色を眺め、彼女は雑誌をめくった
広々とした平原に月が昇っていた

「キャシー、ぼくは道に迷ってしまったみたいだ」
彼女が眠っているのを知りながらぼくは言った
「どうしてだかわからないけど、虚しくて、苦しいんだ。」
ニュージャージーの高速道路ですれ違う車の数を数えた
彼らもみんなアメリカを探しに来たんだ
みんなアメリカを探しに来たんだ

ファースト・エイド・キット、来年の授賞式では誰の歌を歌うんでしょう。今から楽しみです。

2012/01/26

寒い国から来た鏡獅子 (ザ・ライオンズ・ローア - ファースト・エイド・キット)

Untitled by Jen Yoshida
Untitled, a photo by Jen Yoshida on Flickr.

スウェーデンのおぼこ姉妹、ファースト・エイド・キット(First Aid Kit)の新しいアルバム「ザ・ライオンズ・ローア(The Lion's Roar)」が発売になりました。出足は好調で、iTunes のアルバムチャートを見ると、ノルウェーではいきなり1位、デンマーク、フィンランド、スウェーデンでもベスト10入りしています。日本でも、こないだのプロモーション来日の甲斐があって、雑誌などにも取り上げられ、徐々に注目されてきてるみたいです。2月8日にはめでたく国内盤も出ます。

この二人はねえ、やっぱライヴがいいのよ。向かって右がギターを持った妹のクララで、左がキーボードを前にした姉ちゃんのヨハンナ、あとは中央にサポートのドラムがいるだけのステージなんですが、ほかに何の仕掛けもない分、ただ「歌を歌うためにやって来ました」って感じがより間近に感じられて新鮮です。いや、YouTube とかでしかライヴ観たことないんですけど、そうなんです。

アルバムのタイトルになってる曲「The Lion's Roar」は2年くらい前から演奏されていて、ファンにはすっかりおなじみの曲なんですが、注目はヨハンナのキーボードです。一見テキトーに弾いてる風なんですけど、いやなかなか、少ない音数とやわらかい音色で、ここしかないでしょってとこを攻めてきます。

あと見どころはもちろん、二人並んで長い髪を振り乱してのヘッドバンギングです。

2月から4月にかけてのツアーは北欧から始まり、ヨーロッパ各地、イギリス、オーストラリア、北米など既に40ヶ所以上のライヴが予定されています。日本での予定は今のところありませんが、オラ、今年の紅白にこの曲、お勧めしたいんですけど。

白々とした朝が、誰もおぼえていないことを歌い、音を奏でる
説教とお祈り、教訓を与える立場の人々に
まんまと騙されたことに、目をつむりたい人たちのために
だけどそれは失敗に終わり
夜はおかしさのあまり噴き出してしまう

わたしが言ったとおりでしょう
あなたのまわりが変わってしまうかもしれないって
それでもまだ、何もかも命じようとする気?
どうあがいても、すべては刻々と変わっているのに

わたしは大ばか者だけど、あなたも同じよね
ライオンの吠える声
ライオンの吠える大きな声
あなたから逃れ、叫ばせる声
わたしは、どうすればいいのかわからなかった

そうね、あなたのことを
もう少し、理解できたらと思うこともある
本のあらすじみたいに
でも、わたしにできるのは
あなたのおどおどした笑顔から
あなたを取り巻いて吹く昔の風のように
次に起こることを予想するだけ

わたしは大ばか者だけど、あなたも同じよね
ライオンの吠える声
ライオンの吠える大きな声
あなたを求め、探させる声
わたしは、どうすればいいのかわからなかった

わたしだけのローズマリー・ヒルがいたらと、思うこともある
あの場所に腰かけ、素晴らしい湖を眺めて歌えたら
そしてときどき、あなたのために歌えたら
歌は山々を越え、海と星の彼方へ上り
もし望めば、あなたをわたしの元へ導いてくれるはず

ライオンの吠える声
ライオンの吠える大きな声
前にも聴いたことがある
子どもの夢想、ひとりぼっちで泣き叫ぶ、ライオンの声

2011/08/22

打倒ボブ・ディランのおぼこ姉妹デュオ (I Met Up With The King - ファース ト・エイド・キット)

First Aid Kit 010 by lactulli
First Aid Kit 010, a photo by lactulli on Flickr.

本日ご紹介するのはスウェーデンから来た姉妹デュオ、ファースト・エイド・キット(First Aid Kit)です。

3年ほど前、YouTuube で公開したビデオが評判となり、数多くのコンサートこなした後、昨年ファースト・アルバム「The Big Black & The Blue」をリリース、さらにジャック・ホワイト(Jack White)の目に止まり、今年の初めにジャックのプロデュースで Thirdman Reccords からもシングルを1枚リリースしています。2枚目のアルバムレコーディングも既に完了していて、9月からは US ツアーが予定されています。

つまりプロのミュージシャンとしてのキャリアはもう3年ほどになるのですが、姉ちゃんのヨハンナは1990年生まれで今年21歳、三つ年下の妹クララはまだ18歳です。

スウェーデン出身のおぼこ娘といってもさすがに今は21世紀ですから、二人はご両親のかけるパティ・スミス(Patti Smith)、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(Velvet Underground)やピクシーズ(Pixies)などを聴いて育ったそうです。ヨハンナはジャーマン・テクノにハマっていたんですが、妹のクララはなぜかカーター・ファミリー(Carter Family)などの古いアメリカン・カントリーが大好きで、13歳でギターを持って歌いはじめ、後から姉ちゃんも一緒に歌うようになったそうです。

ビデオはファースト・アルバムに収録されている「I Met Up With The King」です。ボブ・ディラン(Bob Dylan)を意識して書いた曲だそうです。並のおぼこ娘にはないサムシング・ウィズ・ダークネスがあります。ギターを弾きながらリード部分を歌ってるのがクララです。ヨハンナはエンディングでキーボードを頭で弾いてます。

王様に出会った
彼は自分の体が燃えてるんだって言ってた
王様に出会った
彼の体は腐りはじめていた
彼は
ぼくは以前と何も変わっていない
だから忘れないでと言ってた

だけど
誰も彼のことを信じなかった
誰も彼のことを信じなかった

ひとりのきれいな少女がいた
彼女は世界に恋をしていた
そしてある少年を愛した
少年は彼女の体が目当てで、心には見向きもしなかった
少年は彼女の持っていたものをすべて奪った
何も残さずせんぶ奪っていった

だけど
誰も彼女のことを信じなかった
誰も彼女のことを信じなかった

地面の泥の中に突っ伏すと
自分が王様になったような気がする
あの少女になったような気がする
みんな何かを考えていて
みんな何かを知ってるけど
私には何もわからない
歴史にとって、私たちは何の意味もない
神様、感謝します

あなたは私のことを信じる?
私のことを信じる?
きっと信じないわね
信じるはずないわ