Gang of Four, a photo by forklift on Flickr. |
2004年秋、ニューイングランドのとある家庭での会話。
「キャロル、ちょっと話があるんだ」
「何?あたし明日の準備で忙しいの。後にしてくれない?」
「頼むよ。ちょっとぼくの話をきいてくれよ。」
「何よう。また仕事が嫌になったとかの話じゃないでしょうね?」
「あの実は...ギャング・オブ・フォーをさ、再結成するんだ。」
「ギャング・オブ・フォーって...まさかあの20年以上前のヒット曲、『制服のオトコが好き♡(I Love a Man in Uniform)』のギャング・オブ・フォー?」
「茶化すなよ。あの曲は確かにヒットしたけど、意図とは別にゲイ・クラブでウケただけで、ほかにもっと色々あるよ。『欠陥品(Damaged Goods)』とかさ...。」
「そんな曲、今どき聴きたい人いる?懐しの何とかフェスティバルの出演?休暇取れるの?」
「そうじゃなくてパーマネントな再結成なんだ。音楽活動を再開しようと思うんだ。」
「ちょっと待ってよ!仕事は?」
「ぼくの身分で無期限長期の休暇なんて許してもらえないよ。今の仕事は辞める。」
「ちょっとあなた!何言ってんのよ!ぼくにはサラリーマンは向かないとか何とかさんざんごたく並べて仕事を転々とした挙句、やっと今の大学講師の仕事にありついたんじゃない。誰のおかげよ?今まであたしがダンス教室でやっと支えてきたんじゃない!あの娘はもうすぐ小学校なのよ!これからもっとお金がかかるのよ!正気で言ってるの?この間わけのわかんない芸能記者がインタビューに来たときぼくは教師だって言ってたじゃない。田舎のお父さんとお母さんもあれ読んでとっても喜んでくれたのよ!」
「きみには苦労かけて本当にすまないと思っている。でもぼくは今ここで音楽をやらなければ一生後悔すると思うんだ。やり残したことがあるんだ」
「あたしや娘の人生はどうなるのよ?あの馬鹿アンディとジョンは何て言ってきたの?」
「オリジナルメンバーで再結成したいって。デイヴも OK してるって。」
「あんな2人の言うことを信用するわけ?だいたいあの2人、10年くらい前にも2人だけでギャング・オブ・フォーを再結成してしょーもないレコード作ってたじゃない!あなた自身がそう言ってたじゃない!」
「...うん。でも今度はもう一度4人揃って本当のギャング・オブ・フォーでやりたいって言ってるんだ。」
「あたしだってギャング・オブ・フォーが今でも一部でカルト的な人気を誇っていることは知らないわけじゃないわ。悪いけどあなたのためにはっきり言うわよ。ギャング・オブ・フォーのメンバーは誰かったらまずギターのアンディ・ギル。それからボーカルのジョン・キング。ふつう知ってるのはそこまで。それで充分。今やかなりのマニアじゃないとベーシスト、デイヴ・アレンの名前は出てこないわ。ドラマーのヒューゴー・バーナムなんて名前、誰も知らないわよ!冷静になってよ。」
「ぼくら4人じゃないと出せない音があるんだよ。」
「目を覚ましてよ!25年経ったのよ!あなたもうすぐ50よ!ハゲてるし太ってるのよ!」
「わかってる。それでもぼくが叩かなくちゃならないんだ。」
「...ツアーに出るの?」
「うん。」
「それで『貧乏はまっぴら(To Hell With Poverty)』も演ったりするわけ?」
「....うん。」