Death Disco - 「母ちゃんと俺」 絵: ジョン・ライドン |
ニューアルバム「This Is PiL」の発売があと2週間ちょっとに迫ってまいりましたがみなさんいかがお過ごしでしょうか?そんな時期に何で「Death Disco」みたいな古い曲を持ち出すんだよ、と思う方も多いと思いますが、いや母の日なんだからさ、書きたいことがあるんだよ、だから書かせてくれよ。ニューアルバムや新曲のことはまた後で色々書くからさ。
「Death Disco」は1979年6月に PiL 2枚目のシングルとして発表された曲で、同じ曲のミックス違いは後に「Swan Lake」というタイトルで「Metal Box/Second Editon」にも収録されています。家を揺らすようなぶんぶん超低音ベースと70年代末のディスコビートの上で、ギターが執拗に「白鳥の湖」のフレーズを繰り返す中、ジョン・ライドンが泣き叫ぶように歌う曲です。この曲は当時、癌で死を目前にした母親のためにジョンが書いた曲として知られています。
癌になった母ちゃんがさ、自分のために曲を何か書いてくれって言ったんだ。それで書いた曲が「Death Disco」なんだ。母ちゃんはすごくおもしろい曲だって言ってくれた。うちの家族ってそんな感じなんだよ。母ちゃんはどんな深刻な状況でもユーモアを忘れないんだ。
(「Plastic Box」ライナーノーツ)
この母親にして、この子あり。死を目前にした母ちゃんを前にこうゆう曲を作る息子も息子なら、おそらくそれを心から喜んでいたであろう母ちゃんも母ちゃんです。
発表当時、この曲はイギリスのシングルチャートで20位まで上がりました。何せ内容が内容ですから拍手喝采で迎えられたわけではなく、みんな部屋に籠って暗い顔して聴いてたはずです。またこの当時の PiL はライヴ自体数えるほどしかやってませんから、人前で演奏されることがあまりなかったわけです。
2009年、ジョンが活動を停止していた PiL を復活させるにあたり、その大きな動機となったのはこの曲を歌うことでした。
俺は様々な感情を声にして吐き出すことができる。俺たちが演奏する「Death Disco」のような曲は、いんちきくさい絵空事でもなければ、他愛のないポップソングでもない。両親が死んだときに感じた心の底からの怒りであり、悲しみなんだ。俺の母親はずっと前に死んだ。あの曲は癌で死を前にした母親のために頼まれて作った曲だ。親父も去年死んだ。俺には今、ステージの上で吐き出さなきゃならないものがあるんだ。あの曲が今でも俺の胸をめちゃめちゃに掻きむしっているんだ。
「Death Disco」は弔いのディスコ・ソングです。もちろん人は普通、葬式で騒いで踊ったりしません。でも亡くなったのが本当にあなたにとってかけがえのない人だったら?同じ思いを抱く人たちが集まったなら、それぞれの感情を吐き出して一緒に踊ることも許されるのでは?
再始動した PiL を迎えたのはそんな光景でした。観客たちはジョンと一緒になって感情を吐き出し、踊りまくります。「Death Disco」が作られてから30年、やっとこの曲が演奏されるにふさわしい場所が地上に現れたわけです。
力を貸してくれてお前らにはすごく感謝してるよ。こんな風に楽しめるなんて変だよな、これは死を歌った曲なのにさ。でもこれこそがアイルランド風の楽しみ方ってやつかもしれないな。ありがとう、感謝する。みんなに安らかな死がもたらされんことを!
目を見つめる
言葉で言えることなんて何もない
目がそう言っていた
最後の力が尽きようとしているもう望みはない
最後の力が尽きようとしている
目を見つめる
目を見つめる
どうしてなのか
決っしてわからない沈黙して何も語らない目
沈黙して何も語らない目
どうしてなのか、わからない
これが過去のこととなってしまうまでは
決っしてわからない
沈黙して何も語らない目目の中に見えたもの
目の中に見えたもの
もう望みはない
最後の力が尽きようとしている
彼女がゆっくりと死んでいくのを見つめているだけ
ベッドの上で息を詰まらせ
花が朽ち果てていく
目の中に見えたもの
ある一日の終わり
できることは沈黙だけ目を見つめる
目を見つめる
目を見つめる
俺の目で見つめる
言葉でなんか、何も言い表わせない
言葉でなんか、何も言い表わせない