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2015/11/15

便所と夫婦と世界が抱える問題 (Double Trouble - Public Image Ltd)

いったい何をごちゃごちゃ言ってんだよ。何だって?トイレがまたぶっこわれた?ああ、前は俺が直したよ。また配管屋を頼めって言ったろ。何度でも頼めって...。

なんということでしょう。PiLのニューアルバムWhat the World Needs Now...はトラブルの歌で幕を開けます。その名もDouble Trouble、あろうことか便所の配管トラブル、ウンコ飛び散り夫婦喧嘩ソングです。

ここに至った経過を見ず知らずの第三者の立場から簡単にご説明いたします。ジョン・ライドンは元祖パンク、Do It Yourselfの人ですから何でも自分でやります。ご飯作ったり、義理の孫のためにPTAの会合に出席したりと家のこともマメでして、トイレの配管一式まで自分でやってしまいます。だもんで、妻のノラは別のトイレの調子が悪くなったときもまたジョンが直してくれると思ってそのままにして置いたらそれが大惨事に...という次第です。

甘い言葉などいらない
俺を安全な場所に押し込むな
やさしく抱きしめられてたまるか
俺が望むもの、それはトラブル、トラブル、トラブル

文句あるんんだろ、望むところだ
もっと怒れよ、すっきりしようぜ
白黒はっきりさせよう、それしかない

俺が望むものはトラブル、次から次へやってくるトラブル
俺にトラブルを与えてくれ

一応解説しておきますと、Double Troubleというのはシェイクスピア由来のフレーズです。マクベスに出てくる魔女たちがヒキガエルやトカゲ、毒草なんかを大きな鍋で煮込みながら歌う呪いの歌です。映画のハリー・ポッターにも出てきます。Double, Double, Toil and Trouble(次々とふりかかれ、苦難と厄災よ)って歌詞です。実際に聴いてみると納得いただけると思いますが、三歳児ならToilet Troubleって空耳するのも無理はありません。けどだからといって、還暦を目の前にした大の男がWhat the World Needs Now...と冠したアルバムの一曲目でそれを力いっぱい歌うかというと、歌うんです。パンクですから。

崇められるなんてごめんだ
肩身の狭い思いはまっぴらだ
俺の名を汚すな
トラブル到来で屈辱とおさらばだ

世の中がエボラだ、戦争だ、経済格差だ、テロだって次々と大きなトラブルに見舞われているときに便所が壊れたって夫婦喧嘩ですか、呑気だねえという感想を抱く方々も少なくないことでしょうが、便所や夫婦喧嘩の問題にちゃんと取り組めないような人が世界の問題をどうこうできるはずなどありません。そうゆうもんです。それもできないような人たちがなぜか結構政治家や実業家になってしまっているということが問題をさらに根深いものにしているのです。便所と夫婦喧嘩は今こそ歌うべき大きな問題です。

ジョン・ライドンが今までに経験した最大のトラブル、それは7歳のときに髄膜炎にかかり、それまでの記憶をすべて失ってしまったことです。親の顔も自分が誰なのか分からない、言葉も話せず人の話はノイズにしか聞こえない、スプーンの持ち方すら分からないほどでした。数年かかって徐々に記憶は取り戻したのですが、いくつかの後遺症が残り、中でも幻影は長く続いたそうです。

ひどい頭痛と目まい、失神、火を吹く緑色のドラゴンとか存在しないものが見え始めた。そんなものいないって分かってる自分の中に、ドラゴンが見てパニックを起こしてる自分がいるんだ。それがどれほど恐しいことか。身体が勝手に反応して止まらない。恐怖のあまり引き付けを起こした。

次の朝、母親は容態がさらに悪化していることに気付いて医者を呼んだ。医者が到着すると俺は気を失なった。気が付くとそこは救急車の中だった。俺はまた気を失なった。次に俺が意識を取り戻したのは病院の中で数ヶ月後のことだった。俺は6ヶ月以上も昏睡状態だったんだ。

率直に言って、俺が空想にふけるようなことはまずない。俺の頭の中にそんな余地はない。他人の気持ちを考えない奴だってときどき言われるのはそのせいかもしれないな。時間をムダにしたくないのさ。朝起きるのはものすごい努力を必要とするけど、俺にとっては眠ることの方がその10倍も大変なことなんだ。眠るのが嫌いだ。起きたときにまた自分が誰だか思い出せなくなるんじゃないかって恐怖に襲われるんだ。この感覚はおそらく一生俺につきまとうはずだ。絶対に消えない。俺がなかなか眠らず、常に警戒してるのはそのせいなんだよ。ま、昔は「眠らずにいられるモノ」に頼ったことがあったような気もするけどな。

退院してからもしばらくの間は度々幻影に悩まされた。すごく怖いやつだ。中でも思い出すのは神父。今でもときどきその夢を見る。背が高くガリガリに痩せた男で黒い髪に黒い瞳、そのものすごく恐しい目で俺を睨むんだ。ハンパじゃなく大ごとなんだ。そいつが夢に現われると、俺は立ち向かわなくちゃならない。そうすれば消え去る。だけどそれは簡単なことじゃない。自分が夢を見てる状態で夢のコントールなんてできないだろ。だけどどうにかこうにか、何年もかかって、俺は自分の夢をコントロールできるようになったんだ。

John Lydon - Anger Is An Energy: My Life Uncensored

もう少しで死ぬところだったんだ。まったく笑えるようなことじゃない。だけど妙なことにあの病気が今の俺を作ったんだ。あれを経験したからこそ俺は今ここにいるんだ。かつて俺を死にそうにしてくれた神様には感謝するよ。記憶をすべて失なってしまい自分が誰であるかさえ分からなくなったんだ。あのときの苦しさは今も忘れちゃいない。俺が今までに味わった最大の達成感はあの病気を克服したことさ。

Lydon calling: A visit with the punk king

ジョン・ライドンというのはこうゆう人ですから、身近な個人的なトラブルと世界的なトラブルに優劣を付けたりしません。小さな個人的なトラブルに悩んでる人を馬鹿にしたりしません。どれも大切なことです。だからみなさんも日常様々トラブルに遭遇してると思いますが、Double Troubleを聴いて元気を出して立ち向かってください。健闘を祈ります。

ところトイレの件はどうなったのでしょう?

なんだかんだで、俺たちはバケツを使うハメになる

おう、いえー。

2014/10/11

怒りはエネルギーだ - ジョン・ライドンの自伝第二弾「Anger is an Energy: My Life Uncensored」

1994年に出版された「Rotten: No Irish, No Blacks, No Dogs」に続くジョン・ライドンの自伝第二弾「Anger is an Energy: My Life Uncensored」が10月9日に発売されました。

「えーっ、自伝ってそんなに何冊も出すものなの?」って思いました?いや、自伝/伝記大好きの国イギリスではぜんぜん珍しくないことのようです。それに書くべきことがある、出す価値があるから出すんです。

ということで、最初はおもしろいエピソードでもちょこっと訳して紹介しようかなと思ったんですが、当のジョン・ライドンが宣伝のため、ラジオ、テレビ、出版イベントなどに出演しまくっておりまして、そのひとつのインタビュー記事がすごく良かったもんですから、そっちを紹介します。

まず予備知識のない方のためにちょっと説明しておきますと、ジョン・ライドン、別名ジョニー・ロットンは7歳のとき髄膜炎という病気にかかります。一命はとりとめたものの、高熱の後半年も昏睡状態が続き、目覚めたときには完全に記憶を失なっていました。自分が誰かわからない、両親の顔も覚えていない、言葉も話せない、体の動かし方すら覚束無いという状態です。彼は7歳からその後4年間を自分が誰であったかを思い出すために費します。

怒りは俺のあらゆる種類の記憶を取り戻すために必要なエネルギーだった。完全に記憶を取り戻し、自分が誰で、自分の両親が誰だかわかるようになるまで数年かかった。病院は両親に「とにかく彼を怒らせなさい」と言った。それが記憶を取り戻すエネルギーになるんだって。だけどもしそうしなければ、ずっとこのままだろうって。

不満とかいうレベルの話じゃないぜ。俺は自分自身に対して怒ったんだ。とにかくそのエネルギーのおかげで俺は自分が見つけるべきものを見つけられるようになった。この怒りのエネルギーがあったからこそ、今俺はこうしているんだと思う。おかげで俺は人間として独り立ちできたわけさ。マルコム・マクラーレンなんかがあたかも俺を育て上げたみたいに言ってたが、それより遥か以前のことだよ。

だがまた自分が起き上がれなくなってしまうんじゃないか、自分が誰だか思い出せなくなってしまうんじゃないかという恐怖は今も消えない。これ以上の孤独な思いはほかに絶対ない。両親が俺を憐れんで甘やかしていたら、俺は施設に入れられて、ずっとそのままだったのかもしれない。

というわけで、俺の個性や生命力というものができ上がったわけだ。危機一髪だったのさ。せっかくセカンド・チャンスをもらったんだぜ。無駄になんかできるわけない。

俺の曲に対してその視点や意図に共感を示す人々がいる。彼らはそういうことをすべて理解していて、俺と経験を共有できてるんだ。驚くべきことだよ。

俺にはそこで共有されている痛みが何だかわかる。そういう人間がいれば、同じような経験を共有できる。もちろん細かな点は違っているだろうよ。だけど目を見ればわかる。だから俺はそれを心の奥の闇に閉じ込めるんじゃない、オープンにしなくちゃならない、白日の元にさらそうという気持になるんだ。

だから俺は続けてるんだ。そういうのを見るのがうれしいんだ。だってみんな生きてるってことなんだぜ。「コンサート会場は空っぽだ、ジョン。みんな自殺しちゃったんだ」なんてうれしいわけないだろ。

俺たちはみんな色んなものに対する怒りを抱えている。だが幸いなことに、その怒りをポジティヴに使うこともできる。俺は、歌を作るってことはそれを促すものでなくちゃならないと思ってる。

俺は正しい音程で歌う必要なんてないし、アメリカン・アイドルの予選を通過するためにやってるんでもない。俺はノイズを組み合わせて曲を作る。俺が感じるままのノイズだ。作曲家になんてならなくていい。ただ誠実にやればいい。俺はいつも自分が感じるあらゆる感情を表現しようとしている。ギグで解き放つ感情が歌に命を吹き込むんだ。

曲の中には歌うとき、ものすごく緊張するものもある。たとえばDeathDisco、あれは俺の母親の死について歌ったものなんだ。死で誰かを失うことに慣れることなんてできるわけない。

だがそうした歌を歌うとき、即興演奏というのはジェットコースターになる。俺が今PiLで一緒にやってるのはみんなすっげーいい連中ばかりで、高い技能と許容力を持ち合わせている。彼らがそのノイズとトーン、張り詰めたサウンドで俺をチャレンジしがいのある高みへ連れて行ってくれるんだ。

音楽にはどんな制限もルールもない、完全なる自由、最高の空間だと思うね。その代わりたくさんのものをつぎ込まなくちゃならないが、その価値はある。トレードオフさ。だけどそれだけの価値があるんだ。

'We all have an inner anger which should be used to a positive end' - John Lydon speaks to the SNJ ahead of the Cheltenham Literature Festival

ね、今出す価値、読む価値のある本だと思うでしょ。原著は500ページを越えるぶ厚い本なんですが、Amazon Kindle版はなんとわずか580円で売ってます(580円というのは発売直後のサービス価格だったらしく、現在は通常価格になっています。2015/01/30 追記)。

でも「英語で500ページの本なんて読めないよ」という人が大半でしょう。そうですよね。邦訳出るかなあ。昨今の日本の出版状況からすると、このボリュームの翻訳本が出る可能性はきわめて低いんですよね。そのまま日本語にすると700ページ、800ページというボリュームになってしまうため、値段が高くなる → 売れる部数が限られる → 出しても採算取れない、ってことで、出版社は出すのをためらってしまうんですよね。

でもここは前作「No Irish, No Blacks, No Dogs」を出したロッキングオン、意地見せて出してくれよお。今、一番出すべき本でしょう。全国の小中学校の図書館に必ず一冊は置いとくべき本だよ。

あ、そうそう、本のタイトル「Anger is an Energy」というのは、もちろんPiL(Public Image Ltd)の代表曲「Rise」のフレーズから取ったものです。

それから、この本の出版準備とジーザス・クライスト・スーパースター出演のため、ジョン・ライドンはPiLとしての活動を休止していましたが、12月にライヴ活動を再開、同時にニューアルバムのレコーディングを始め、来年夏発売の予定です。

(関連記事)
ロッキングオンにはジョン・ライドンの自伝「No Irish, No Blacks, No Dogs」の完全版を出していただきたい
May the road rise with you (Rise - パブリック・イメージ・リミテッド)

2013/10/17

ジョン・ライドンが BMI London Award 2013 の BMI Icon 受賞

「俺はアイコンなんかじゃない、ジョニーキャン、アイキャンだ」

10月15日、ロンドンで2013年 BMI London Awards の授賞式が開催され、我らがジョン・ライドンが BMI Icon 賞を受賞しました

「BMI、何それ?デブの人のベストドレッサー賞?」と思う人がいても無理はないんですが、違うの。BMI ってのは Broadcast Music, Inc. の略で、音楽が放送やコンサートでの使われたときの著作権使用料を徴収するアメリカ本拠の非営利団体です。日本でいえば JASRAC みたいなもんです。

で、BMI Icon 賞ってのは「ある世代の他の音楽家たちに多大な影響を与えた類い稀(たぐいまれ)なソングライターに与えられる」もので、これまでにレイ・デイヴィスやヴァン・モリソン、ブライアン・フェリーなど錚々(そうそう)たる面々が受賞しています。ジョン・ライドンはそのような「ソングライター」のひとりとして選ばれたわけです。

以前 Rock and Roll Hall of Fame にセックス・ピストルズが選ばれたときは「俺たちがロックの殿堂入りを喜んで、2万5千ドルも払ってディナー・パーティに出席すると思ってんのか、バーカ」と言って授賞式に出なかったんですが、今回はたいへん喜んでいて UK ツアーの最中にも関わらず PiL のメンバーや妻のノラと一緒に出席しました。

審査員たちはほかの無難なやつを選んどけばいいものを、あえて俺の業績に注目してくれたんだぜ。俺からすれば、それがすごく大切なことなんだ。

俺は賞なら何でももらうってタイプの人間じゃない。この賞をもらうことにしたのは、それが俺にとってものすごく意味のあるものだったからさ。

あいつら(BMI)は俺たちに金が入るように日夜戦ってくれてるんだぜ。胸がアツくなるよ。

John Lydon honoured at BMI Awards

著作権といえば、普通バンドとして活動している場合でも著作権者としてクレジットするのは直接作詞や作曲に関わったメンバーの名前だけです。これがメンバー間の収入の差となって、後々関係がギクシャクするというのはよくあることです。

セックス・ピストルズやジョン・ライドンがそれまでの常識を破って始めたことは山ほどあるんですが「レコーディングに関わったメンバー全員の名前をソングライターとしてクレジットする」というのもそのひとつです。ピストルズがレコードを出した当時そんな例はほとんどなかったもんだから、みんなレコードを見て「あれ?曲のクレジットにメンバー全員の名前が書かれてる!」って驚いたものです。

後続のパンク・バンドもこぞってこれを真似したんですが、その意味を理解したのはずっと後になってからのはずです。今ではジャンルを問わず、色んなバンドが曲のクレジットにメンバー全員の名前を載せるようになりました。こんなところでも、後のバンドに大きな影響を与えてるんですよ、ジョン・ライドンという人は。

BMI のサイトでは著作権者のクレジットが検索できるようになっていて、たとえばシド・ヴィシャスがベースを弾いている「Bodies」という曲にはちゃんと本名の John Simon Beverleyでソングライターとしてクレジットされていることが分かります。今でもこの曲がラジオなどで流れる度に彼(の遺族)にお金が入るわけです。

ところで BMI 授賞式のニュース、NME を始めイギリスの商業音楽サイトにはなぜかほとんど取り上げられていません。同じイギリスでも先のインタビューを掲載した Evening Telegraph など一般のニュースサイトでは報じられているのに、商業音楽ニュースサイトはほぼ無視です。

理由はよくわかりませんが、どうやら BMI がアメリカ本拠の団体なのでイギリス音楽ギョーカイ的には取り上げたくないみたいですね。アメリカの著作権管理団体なのにロンドンにも拠点を置いて BMI London Award みたいに派手なイベントをやってるわけです。音楽著作権流通のグローバル化を見据えてイギリスでもアピールしたい BMI、「ここは俺の縄張りだぞ、入ってくんな!」というイギリス側、という構図なんじゃないかな。知りませんけど。

一方のアメリカ側は Rolling Stone が BMI Icon 賞、授賞式直前インタビューを掲載しています。

2013/05/11

パンクってのは愛のことだ! (Public Image Ltd Live in Sydney)

PiL Sydney Concert

みなさんお待ちかね、先月4月10日にオーストラリアのシドニー、エンモア・シアターでのパブリック・イメージ・リミテッド(Public Image Ltd)のライヴ映像が Moshcam で公開されました。全17曲、2時間強のライヴすべてがおうちで誰もが無料で観られるんです。しかもその映像と音は、共にこれまでの PiL のライヴ・ヴィデオの中でも最高の品質なんです。これを幸せと呼ばずに何と呼びましょう。

3月末から始まった今年の PiL ツアー、オーストラリアは中国、日本に続いて3カ国目です。PiL が最後にオーストラリアでコンサートをしたのは1989年のことですから、実に24年ぶりのオーストラリアということになりますが、映像を見てわかる通り、前回のコンサートのときにはまだ生まれていなかったような若いファンもたくさん集まっています。

ついでなんでこの Moshcam というサイトについて説明しておきましょう。Moshcam は様々なアーティストのコンサートをインターネット上で配信しているオーストラリアの会社です。2007年の設立で、最初はもっぱらシドニーでのライヴを撮影して配信していたんですが、どんどん勢力を伸ばして最近はロンドンやニューヨークなど他の都市でのライヴまで配信するようになっていて、数百本の高品質ライヴ映像を無料で配信しています。日本にはなかなか来ないようなバンドのライヴもここで観られます。

だけどそんなことしてこの会社はどうやって稼いでるんだろう?すみません、その内情はよく知らないんですけど、どうやら Goole TV や hulu などにコンテンツを販売して利益を得ているみたいです。このためよくある映像サイトみたいにうるさい広告に煩わされることがありません。

しかしちょっと前までは時間帯によって映像や音が途切れたりすることがよくあったんですが、最近コンサート映像を moshcam.com のほか YouTube でも提供するようになって負荷が分散されたためか、ネットワークの回線面も改善されてきたようです。

ということで PiL のライヴは moshcam.com と YouTube、どちらでも好きな方を選んで楽しむことができるのですが、若干使い勝手に違いがあります。moshcam.com の方は広告が入らないし、曲と曲の間の切り替わりがスムーズなのでコンサートを通して楽しみたいときにはお勧めです。ただし Flash が使われているため iPad や iPhone では観られません。一方の YouTube は iPad/iPhone も大丈夫で回線に合わせて映像品質を選べるのがメリットなんですが、曲毎にぶつぶつ途切れることと広告がうるさいのが欠点です。

私はまだ試していないんですが、iPad/iPhone には専用のアプリが用意されているので、そっちを使った方が快適かもしれません。

PiL のコンサート内容については観ていただければわかります。あえて説明はいたしません。お楽しみください。ジョニー・アンド・ザ・ボーイズ、渾身のライヴです。ジョニーの「パンクってのは愛のことだ! (Punk is Love!)」という言葉で幕を開けます。

2013/04/20

常識的に考えれば PiL の曲を聴いて「楽しい」という人はどうかしてます (Public Image Ltd 2013-4-5 東京 SHIBUYA-AX)

この4月5日東京 SHIBUYA-AX で PiL のライヴを観てきました。最新アルバム「This is PiL」のリリース後、初めての日本でのライブです。感想ですか?ええと、細かいことはよくおぼえてないけど、すっごく楽しかったです。

わかってるよ、何だよそれ、その保育園児が遠足行ってきたみたいな感想は、って言いたいんだろ。仕方ないじゃない、本当なんだから。でもさ、保育園で初めて遠足行ったときくらい楽しかったこと、最近あったか?楽しさを甘く見てもらっちゃ困るな、大切なことなんだぜ。

2011年の PiL 復活ライヴの評判は「かっこいい!」「チャーミング!」「すごい声!」でした。今回の来日ではさらに「すっごく楽しい!」が加わったのです。30年以上ずっとメタルボックス聴き続けてるおっさんも、たまたま招待券もらって PiL って何なのかよく知らないのにライヴに来ちゃった女の子も一緒になって「楽しい!」って踊ってました。

常識的に考えれば PiL の曲を聴いて「楽しい」という人はどうかしてます。神の名のもとに行われる殺戮を歌った Four Enclosed Walls、首にまとわりつき振り払えない悪夢を歌った Albatross、くだらない記憶ばかり頭にため込んで年老いていく男の歌 Memories、危篤の母親が苦しみ死を迎える様を歌った Death Disco、お互いの無理解による別離を歌った Flowers of Romance に、アパルトヘイト下での拷問や抵抗を歌った Rise 等々、どれも普通の楽しさとは正反対の歌ばかりです。

でも楽しいんです。信じられませんが、信じられないほど楽しいんです。別に日本人の観客が英語の意味がわからないからじゃないよ。英語圏の観客だっておんなじ反応をしています。理由は簡単です。エネルギーです。悲惨だったり深刻だったりする歌詞の内容とは裏腹にジョン・ライドンの声、PiL のサウンドにそれらをものともしないエネルギーを感じるからです。そして、自分の中からも同じエネルギーがわき起こってくるのが感じられるからです。だからみんな Death Disco でジョン・ライドンが泣き叫ぶように歌う中、涙を流しながら楽しそうに踊るんです。うん、端からはすごく変に見えても仕方ないと思う。

今回の PiL 来日コンサート、行きたくてもどうしても都合がつかず行けなかった。あるいは知らずに見逃してしまったという人も多いことでしょう。そんな人に朗報です。日本でのコンサートの直後に行われたシドニー公演の模様が Moshcam で公開されることになっています。公開の時期はたぶんゴールデンウィーク明けぐらいだと思います。楽しみに待っていてください。そして、来年か再来年、次回の PiL 来日は決して見逃さないように。一緒に「俺たちはここにいるぞ! (Here We are !)」って叫びましょう。

(2013/05/11 追記)
Moshcam で PiL のコンサート・ヴィデオが公開されました

2013/04/08

PiL (Public Image Ltd) JAPAN TOUR 2013 4/6(土)東京 SHIBUYA-AX

PiL (Public Image Ltd) JAPAN TOUR 2013 4/5(金)東京 SHIBUYA-AX

PiL (Public Image Ltd) JAPAN TOUR 2013 4/3(水)大阪 なんばHATCH

PiL (Public Image Ltd) JAPAN TOUR 2013 4/2(火)名古屋 CLUB DIAMOND HALL

2013/03/31

PiL のライヴとアイルランド流の楽しみ方

John Lydon, PIL, The Opera House
John Lydon, PIL, The Opera House, a photo by PJMixer on Flickr.

現代の社会生活、特に学校とか仕事の場において感情をあらわにすることは良くないこととされています。人前で派手に怒ったり、泣いたり、笑ったりは控えなくちゃならないことになっています。感情を抑えて人とつき合ってます。でもじゃあみんな一体どこで感情をあらわにしてるんでしょう。

感情というのはひとりだけじゃ生まれません。少なくとも自分じゃない別の存在を感じて初めて感情というものが生まれます。親しい間柄ならお互い怒って怒鳴り合ったり、一緒に泣いたり笑ったりもできます。お互いが信頼できる間柄じゃないとなかなかできません。さほど親しくない人を相手に怒鳴ったら、簡単にその関係が壊れてしまうからです。涙と鼻水をたらしておいおい泣く姿だって親しい人じゃないと見せられないし、本当に親しくないと一緒に心から笑って楽しむことなんてなかなかできません。

感情というのは人間が生きる上でとっても重要なものなんですが、会社や学校での生活では何だか「抑え込め」「我慢しろ」と言うばかりで「それはとっても大切なものなんだからちゃんと吐き出すべきものなんだよ」という人はあまりいません。

人が幸せかどうかをどうやって測るのかは難しい問題です。衣食住足りて、仕事もお金もあるのに幸せを感じられない人は世界中にごまんといます。ですがひとつ確実に言えるのは感情をあらわにできる、信頼できる誰かが身近にいるかどうかというのは幸せの大きな要素です。人間生きていれば誰にでもつらいことや悲しいことがあります。それがいかに不幸で苦しいことであろうと、そのとき誰かと一緒に心から泣いて悲しむことができるのであれば、それはとっても幸せなことです。

セックス・ピストルズの時代からそうですが、ジョン・ライドンの歌は不思議なかたちで人の感情にはたらきかけます。怒り、喜び、悲しみ、普通はそれぞれ別に分かれているはずの感情がごっちゃになって押し寄せてきます。たとえば PiL の代表曲「Death Disco」、この曲は癌で死を目前にした母親のことを歌った曲です。ジョンは本当に泣き叫ぶようにして歌います。ですが、ライヴでこの曲が始まるとなぜかそうした意味がすべてぶっ飛び観客はみな狂喜乱舞します。

ジョニー自身はこれを結婚式で泣いて、葬式で大笑いするアイルランド流の楽しみ方だと言っています。そう、みんなで悲しめるというのはとても楽しいことなんです。信じられない?だったらぜひ PiL のライヴへ行って実感してみるといいよ。

たとえばイスラエルの人々に「アッラー」と合唱させる、そんなこと普通常識的に考えてできることではありません。不可能です。ところが信じられないことに2010年、現実に彼はにそれをやってのけているんです。理屈ではなく、イスラエル人が一緒に歌わずにいられない感情を彼は引き出したのだと思います。

理屈ばかりじゃなく、みんなもっと感情、エモーションの力を信じた方がいいよ。

俺は動物の声を怖いとかうるさいとか思ったことはない。子どもの声も同じだ。子どもたちが遊んだりはしゃいだりしてる声を煩わしく感じたことは一度もない。不思議なことに子どもの声は PiL が表現してるものと同じだからさ。さらに不思議なことに PiL はなぜか子どもにすごくウケる、それも同じ理由なんだ。

心底誠実であることが素晴しい成果を上げたってことさ。俺は本当のことを率直に伝えること、そして俺を育ててくれた階級や文化、俺が信頼するもの、そして誠実さに対する愛を表現することに力を注いできたんだ。子どもは嘘つきが嫌いだからな。

子どもは大人の嘘をすぐに見抜く。まあ大人も子どもが嘘をついたらすぐにわかるけどな(笑)。だが子どもは嘘をついてるんじゃない、遊んでるだけだ。そうだろ?子どもは障壁を乗り越えるんだ。それが素晴しいんだ。実際俺の心にもそういう子どもっぽいものが残ってる。無知じゃないぜ。純粋なんだ。現実の世界がどうであろうと、惑わされたりしないんだ。

アルバムの中にエデンの園へ帰ろうって歌がある。宗教からいただいてきた言葉だが、友人や近所の人、親戚みんなが話しかけてくれる素晴しい場所を観念的に表現してる。俺が子どもの頃住んでいた場所は実際そんな感じのところだった。だが昔のことを懐しんでるだけじゃなく、今の社会に生きるみんなにもそうあり続けてほしいと願ってる。

PiL のギグは楽しいイベントなんだ。敵は誰もいない。みんなお互い友達になるために集まるんだ。子どもを連れて来るといい。PiL のギグなら安全だ。じいちゃんばあちゃんも連れて来てくれよ。きっとみんな気に入るぜ。

SmartShanghai Interview: John Lydon

PiL の曲をエモーショナルに楽しむというのは、たとえばこんな感じです。

(注) ジョニーは「子どもを連れて来るといい」と言ってるんですが、この4月の PiL 東京ライブの会場 SHIBUYA-AX は「未就学児(6歳未満)のご入場をお断りさせていただきます」だそうです。けしからんです。コンサートって花火大会なんかと同じ娯楽だよ。子どもの入場を断る花火大会なんてあり得ないでしょう。

2013/03/30

PiL の Xfm スタジオ・ライヴがダウンロードできるようになってました

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Lu Edmonds at the Royale, Boston, 10-15-2012, a photo by xrayspx on Flickr.

昨年ロンドンの FM ラジオ局 Xfm で PiL のスタジオ・ライヴが放送され、そのときの演奏が Web で聴けるようになってることは以前紹介した通りなんですが、さっき聴き直そうとしていて各曲のファイルがちゃんとダウンロードできるようになってることに気付きました。

普通 Flash のインストールされた PC の Web ブラウザで Xfm Sessions - Public Image Ltd のページにアクセスして曲の Listen マークをクリックスするとプレイヤーのウィンドウが開いて曲が聴ける仕組みなんですけど、これ実はストリーミングじゃなくてファイルのダウンロード再生なんですよ。たまたま Flash が無効になった状態でこのページにアクセスしたところ、Flash が使えない人用にファイルダウンロードのリンクが表示されることがわかりました。

ファイルは MP3 と M4A の2種類が用意されています。「Flash ってどうやれば無効になるの?やり方わかんない」という人のために、ダウンロード用のリストを作成しておきました。MP3 か M4A、好きな方を右クリックして「リンク先を別名で保存」とやれば PC に保存されます。

  1. One Drop (MP3 / M4A)
  2. Out of the Woods (MP3 / M4A)
  3. Reggie Song (MP3 / M4A)
  4. Deeper Water (MP3 / M4A)

何れも「This is PiL」に収録されている新しい曲です。ラジオのスタジオでの一発録りですが、ジョニーが「アルバム This is PiL のレコーディングはほとんどライヴのようにおこなった」という言葉が嘘じゃないとわかる素晴しい演奏です。特にルー・エドモンズ(Lu Edmonds)のサズの細かなワザがよおく聴こえます。

これを聴きながら来週のコンサートを楽しみに待ちましょう。

英語がわかんないからって気にすることない。俺もよくわかんねえんだから (PiL China 2013)

摩登天空新年钜献 后朋克传奇乐队PUBLIC IMAGE LTD双城记

今年の PiL のツアーが今夜、北京でのコンサートから始まります。来週には日本にやってきます。比較的暖かい日が続くようですが、ぎりぎりになって風邪をひいたりしないよう、お家に帰ってきたら必ずうがい、手洗いを忘れないでください。早寝、早起き、万全の体調でジョニーとその仲間たちを迎えましょう。

さて PiL のツアーの始まりは中国、北京と上海でコンサートをするんですが、日本同様、西洋とは大幅に異なる文化を持ち、つい最近まで文化的な交流が強く制限されていた国でのコンサートということで、現地ニュースサイトの取材を受けたり、ジョニーはすごく張り切ってキャンペーンをしていて、YouTube には PiL Chna 2013 という専用リストまで設けています。だけど中国から YouTube へのアクセスって制限されてるんじゃなかったっけ?

中国の現在の物価水準からすると 普通の人にとって PiL のチケットはものすごく高価なもののようです(日本だと2万円以上するくらいの感じ?)。観に行ける人はかなり限られるんでしょうけど、今回ジョニーのパフォーマンスを観る人の中から将来の中国のキーパーソンが生まれることは間違いありません。

どういうわけか、きわめて不思議なことに俺の歌詞はすべて(中国)政府に承認されたんだ(笑)。きっと俺がすごく正しいことを言ってるって認められたんだな。さすがは西洋の国にはできなかったたくさんのことを成し遂げてきた国だ。こんなにオープンに歓迎されてゾクゾクする。最高におもしろい。人生最高の経験になりそうだ。

西洋の国の人間は中国を自分たちと違う、よそ者として見てる。だが俺はその中国の、政治家じゃない普通の人々に会いに行くんだ。そしてその人々のために演奏する。

俺たちが本当に興味を持っているの今の中国の政治状況なんかじゃなく、中国の文化を築き上げてきた人々の方なんだ。俺は子どもの頃学校で孔子について学んだ。みんな学んでるんだぜ。だから俺たちが中国に対して持ってる印象は、ここ70年くらいの政治状況によるものじゃなく、何百年もの間世界中にポジティブな影響を及ぼしてきた中国の方なのさ。

かつては障壁があり、俺たちは中国に行くことができなかった。だがその障壁は今や崩れ落ちた。だが俺たちにこれからの中国をどうしたらいいかなんて話を期待しないでくれ。俺たちをエルトン・ジョンと一緒にするなよ

あいつはものごとを一方からばかり見て、両面から見ようとしない。そうじゃないか。あいつはいつも同性愛者としての視点からしかものを言ってない。だから狭くて偏狭な見方になるんだ。俺はいかなる人種、宗教的、政治的信条、性的傾向も受け入れる、かまわない。人間の中に俺の敵は誰ひとりいない。なのに政治的勢力というやつは俺に難癖をつけてばかりだ。だが一方で、中国政府は俺の歌詞をチェックして、俺が何を主張し、何のために中国に行くのか認識した上で、見事許可を出した。中国とっていいことじゃないか。

中国はずっと文化的に俺の興味を引いてきた国だし、これからも引き続けるだろう。だがその中国は現代の世界に扉を開き、PiL を受け入れたと同時に西洋の生活様式も受け入れようとしている。だから西洋の考え方に染まらないうちに、それが問題だらけなんだと言っておく。西洋と同じやり方をしていくと、西洋と同じ問題に次々と遭遇する。西洋が提供するものを鵜呑みにするな。おかしなものがたくさん混ざってる。ただし西洋には PiL がいる。こっちはすごくいいものだから素直に受け入れていい。

俺が今の中国について何か見て知ってることと言えばネットの Google マップで見たものくらいさ。ただそれもスモッグで覆われててほとんど見えなかったんだけどな(笑)。

ものすごい楽しみだよ。何も知らないからさ。何も知らない赤ん坊のような状態で中国へ行くんだ。だからやさしくしてくれよ。友達になってくれるよな。中国人は歓迎してくれるよな。素晴しい機会なんだ。俺はこの機会を絶対無駄にしたりしない。だからみんなも無駄にしないでくれ。

SmartShanghai Interview: John Lydon

John Lydon: Message for China - 「英語がわかんないからって気にすることない。俺もよくわかんねえんだから」

2013/03/12

日本のライヴ会場は凶暴なくらいポジティヴなエネルギーに溢れてる - PiL 来日記念盤「レジー・ソング/アウト・オブ・ザ・ウッズ」

Reggie Song / Out of the Woods

ジョニー・アンド・ザ・ボーイズ、PiL の来日がいよいよあと3週間後に迫ってまいりました。みなさんいかがお過ごしでしょうか。コンサート近くになってから風邪をひいたり、お腹をこわしたりしないよう体調には充分気を付けましょう。

さてこの来日タイミングに合わせて EMI Music Japan から来日記念盤「レジー・ソング/アウト・オブ・ザ・ウッズ」がリリースされます。明日、3月13日の発売です。

イギリス、アメリカでは昨年の10月に発売されたシングルというかミニ・アルバムなんですが「This is PiL」からの2曲のほか、2010年ニューヨークのライヴ5曲が収録されています。全部で47分もあるので実質普通のアルバムと変わらないのですが値段は1500円という特別価格です。

PiLの国内盤が出る、出ないはとっても重要なんです。音楽のダウンロード販売や聴き放題サービスがあまり普及していない日本の子供たちはTSUTAYAが頼りです。健全な青少年の育成は近所のTSUTAYAにPiLがあるかないかに大きく左右されます。

現在の PiL は大手レコード会社とは契約せず、自前のレーベル PiL Official から 作品をリリースしています。世界各地での販売はそれぞれの国の販売会社と契約を結んでおこなっているんですが、EMI グループ企業で PiL の CD を販売してるのは唯一日本だけです。

EMI Music Japan の中の人、CD が売れなくて厳しい中がんばってるね。ジョニーも喜んでるよ。つい先日のインタビューでも EMI Japan は特別だって言ってたよ。

日本人は精神的な自由を持ってる。あんな狭い島に住んでるんだから、物理的な面で日本人は社会的に強い制約の中で生きている。物理的な制約と過密状態から生まれる様々な問題の中で何とかやっていかなくちゃならない。それが逆に日本人が頭の中で世界を広げるチャンスになったんだ。

PiL のすごく実験的な面、(1981年の) Flowers of Romance みたいなアルバムだって日本ではちゃんと評価してくれた。ヨーロッパやアメリカのレーベルはリリースさえ嫌がっていたのに、日本では発売翌週になんとチャート入りしたんだぜ。

たしかチャートの8位じゃなかったかな。ものすごい元気付けられたよ。お陰で(ヨーロッパやアメリカの)レーベルの連中に「このアルバムが売れないだって?生憎もう売れてるんだよ!」って言えるようになった。

日本でのショーはこの上ない最高のものにしたいと思ってる。俺はそれが目的でやってるんだ。みんなから金をふんだくるためのショーじゃない、みんなと何かを分かち合うためのショーなんだ。

俺は幸せもんだよ、また日本に行けてものすごくうれしい。日本でやるギグの雰囲気は大好きなんだ。凶暴なくらいポジティヴなエネルギーに溢れてる。それに EMI Japan は俺たちにずっと、ちゃんと敬意を持って接してくれてる数少ないレーベルのひとつがなんだぜ。他の国の EMI ではあり得ない。日本だけのことなんだ。ニホン・イチバン(笑)。

Tokyo Weekender - Q & A: John Lydon

2012/12/08

2013年4月の PiL 来日決定! ジョニーおじさんがやって来る!!

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Public Image Ltd. at the Royale, Boston, 10-15-2012, a photo by xrayspx on Flickr.

何の前触れもなく突然の発表、驚きのニュースです。来年2013年4月、PiL の来日単独コンサートが決定しました! 名古屋、大阪、東京の3ヶ所、その内東京は2回で計4回の公演です。いやあ、このところいつもツアー日程はギリギリまで発表されなかったので、こんなに早く発表されるなんて。心の準備がまだできてないんですけど。

でもこうやって早く日程が決まるってことは、資金的な余裕もできてプロモーターへの信用も付いたってことですから、大変喜ばしいことです。

公式サイトの発表によると、日本に来る前に北京と上海でもコンサートをやるそうです。ジョン・ライドンがいよいよ中国へ進出します。すごいなあ、中国だとどんなコンサートになるのかなあ。きっと PiL なんか聴いたこともないような人がたくさん来てジョニーのパフォーマンスを観て、そこで人生変わっちゃうような人が続出するんだろうなあ。

日本でのコンサートは去年もやってますけど、メインはフェス(サマソニ)への出演だったし、新木場 Studio Coast での単独公演は直前になって決まったものだったから、知らなかった、スケジュールの都合がつかなかったとかで行けなかった人もたくさんいるはず。今度はスケジュール調整する時間もたっぷりあるから大丈夫。お金、体調、スケジュール、しっかり準備して臨みましょう。

「えーっ、ジョニー・ロットンって昔の人で、今はもうデブのおっさんでしょう?そんなの観ても...。」と思ってる人がまだ多いのかもしれません。確かにデブです。もう56歳です。だけど今が全盛期なんです。信じられないくらいカッコ良くてキュートなデブのおっさんです。嘘だと思ったら去年 PiL を観た人たちの感想を読んでみてください。

まだ信じられない?そりゃ自分の目で確かめるしかないね。

今日集まってるのは恥ずかしがり屋ばかりなのか?今日はドキュメンタリーの撮影をしてるんだぜ。みんな気弱なヘタレなんかじゃないってことを見せてやれよ!

2012/11/21

PiL のギグが終わるとみんな楽しそうに笑顔で帰るんだぜ。本当だよ。

PIL
PIL shot at Fun Fun Fun Fest 2012 by Dj Linda Lovely on Flickr.

PiL の北米ツアーは11月3日の Fun Fun Fun Festival で無事終了しました。1ヶ月足らずの間に20ヶ所、連日2時間前後のライヴという超ハード・スケジュールなのに、ツアー直前にジョン・ライドンが風邪をひくというアクシデントが発生、途中で声が出なくなるんじゃないかとすごく心配したんですが、取り越し苦労でした。

ライヴの合間にインタビュー、テレビ出演やらサイン会の数々をこなした上、日を追うに連れて疲れが出てくるどころか、ますます声の出が良くなるというジョニーの超人ぶりを思い知らされました。何で、どうやって、どこからあんな声出てくるの?

残念ながら今年のツアーはこれで終了。日本へは来られませんでした。でも日本だけじゃなく、ドイツやオーストラリア、南米なんか日本以上に長い間ツアーで行ってないから、また来年すぐに動き出してくれるはずです。

もうしばらくレコードや CD で我慢しましょう。ところで PiL の最新シングル「Reggie Song / Out of the Woods」はもう手に入れた?残念ながら国内盤の発売はないけど、輸入盤ショップや Amazon などで簡単に手に入ります。シングルとは言っても CD だとオマケでライヴが5曲も入ってるから、長さはアルバム並みの46分もあります。

そのほかにもネットで観られる/聴ける公式ライヴ音源がいくつか公開されているのでご紹介します。

Xfm Sessions
7月にロンドンのラジオ局 Xfm で放送されたスタジオ・ライヴ。
PUBLIC IMAGE LTD PERFORMS IN THE CURRENT STUDIO
10月にミネソタのラジオ局 The Current で放送されたスタジオ・ライヴ
PiL Live @ The Knitting Factory Reno
10月27日、ネバダ州レノ The Knitting Factory からリアルタイムでストリーミング放送されたライヴ映像。映像はピンボケですが音はバッチリで約2時間のライブ丸ごと観られます。

それから次の来日ライヴへ向けて、ジョニーからライヴの心得。

20年間休んで何をしてたんだって?何も休んじゃいない。レコード会社に破産状態に追い込まれていたんだよ。連中は俺が唯一、最も得意とすること、曲を書くことと人前でパフォーマンスする機会を俺から奪ったんだ。

ただの偏屈オヤジとしてのカムバックしたって意味はない。俺は自分が心から愛してる人間のために、人間の歌を歌いたかったんだ。俺は憎しみをいつまでも腹に抱えてるようなタイプの人間じゃない。そんな人間になるのはまっぴらだ。

俺はたとえ相手が大嫌いな人間だろうと、良く観察してそいつの良い所を見つけ出せる。それが俺のやり方だ。そうやって生きてきたんだ。たくさんの人間が憎悪で人生を腐らせるのをイヤというほど見てきた。時間とエネルギーを絶えずほかの人間を憎むことに費してると、やがて自分で自分を憎むハメになる。別に説教したいわけじゃない。だが俺はそうやって努力しながら生きてるんだ。

ライヴでは思う存分楽しんでくれ。自分自身を満喫するんだ。サウンドにふさわしい自由なダンスというものを理解して、カラダとアタマを解放するんだ。バンドと観客が一緒になって作り上げる最高の空間、この上ない快感だぜ。

俺は PiL を何よりも愛してる。俺たちは2時間目いっぱい、手抜きなしでプレイする。俺たちはみんなを解放するためにステージに立ってるんだ。アイルランド人の宴会とレイヴ・パーティとトルコ人の結婚式とギリシャ人結婚披露宴、そんなのを全部一緒に開くみたいなもんだ。俺たちの音楽は色んなものの融合物だ。俺はこと音楽に関してはチャレンジ精神が旺盛なんだ。恐れることなく突き進む。インプロヴィゼーションが溢れる一方で、ダンサブルでもある。PiL は常に形を変え続けるんだ。

PiL のギグが終わるとみんな楽しそうに笑顔で帰るんだぜ。本当だよ。

Q&A: John Lydon of Public Image Ltd.

2012/10/14

俺にとっては歌うことも議論なんだ - This is the story of Johnny Rotten

10月から今年の PiL ワールドツアー後半戦、アメリカとカナダでのツアーが始まっています。わずか1ヶ月の間に20ヶ所でライヴを行います。連日毎回2時間以上のライヴです。これがどれほど超人的なことか、去年の来日ライヴや4月の Heaven でのライヴ DVD を見た人ならわかると思います。

レッド・ツェッペリンなら2時間やっても実際にロバート・プラントが歌ってるのはその3割くらいの時間に過ぎません。でもジョニーは違うんですよ。2時間以上、本当に全身全霊で、目いっぱい休みなく吠え続けるんです。どうしてあんなことを毎日のようにやって喉をつぶさないのか、本当に不思議です。心配になってきます。でも YouTube に上がってくる各地でのライヴの様子を見ると、相変わらずの全力投球でまったく加減してません。

それだけでなく、ツアーの合間には数多くの音楽サイトのインタビューを受け、サイン会までやってます。つい先日はアル・ゴアが会長を務める民主党系メディア Current TV に出演、インタビューの冒頭でオバマ支持を明言して、反オバマな人たちから盛大に叩かれたりしています。

火中に栗を拾いに行くというか、火を見ると栗を探さずにいられない自分の性格を、ジョニーはインタビューでこのように語っています。

Q: どんなものに対して不誠実さを感じますか?

すべての政治家、公的機関、それに政党だよ。一旦その中に組込まれてしまうと、妥協を強いられることになる。そしてその妥協こそが嘘の源になってる。俺は妥協と戦うことにやりがいを感じてるのかもしれないな。俺は妥協する必要なんて感じない。人は多様になればなるほど良いものになれるんだ。

みんなの意見が一致することなんてあり得ない、それでいいんだってことにみんなどうして同意できないんだ?俺の特に仲のいい友人の何人かは、俺とはまるで意見が合わない。何ごとに関してもまったく一致しない。だけど俺にとってはそれこそが素晴しい関係なんだ。

Q: それはどうしてですか?

自分ではこうすべきだって思っていることが、ほかの人間にはそうとは限らない、それを絶えず俺に警告し気付かせてくれるからだよ。それがいいんだ。俺たちは誰もがそれぞれ違うことに興味を持ち、異なる視点や意見を持ってる。だが自分をさらけ出してまったく違った視点を持つ人と議論してみると、やがて自分が間違っていたと気付くこともある。それが学ぶ機会になるんだ。自分の間違いを認めることが最高の成果になる。確実に自分の糧になるんだよ。

Q: 自分が間違ってたと思ったのはどんなことですか?

すぐに思い付くことといえば、学校で教師と言い争ったことだな。だがその経験があったからこそ、俺は答に辿り着くこができた。俺は別に言い争いが好きなわけじゃない、ただシステムを盲信するんじゃなく真実は何かってことを知りたいだけなんだ。だからいつも議論してるんだよ。俺にとっては歌うことも議論なんだ。

Q: それは興味深い話ですね。どうして歌が議論になるんですか?

自分のものの見方を表明することだからさ。あるいは別の人間の視点に立ってものを見ようとする行為でもある。その見解は正しいものかもしれないし、間違っているかもしれない、だけどいずれにしろ、ほかの人間にコミュニケーションを促すことなんだ。そうやって新たな議論の種を蒔くんだよ。俺のことが嫌いで俺のやること成すことすべて気に入らない奴だっているが、逆に俺をヒーロー視する奴同様、ちゃんと議論をする限りどちらにもものを言う正当な権利があるのさ。ただもの分かりがいいだけの人間なんかよりはるかにマシだよ。「あの人いい人ね」ってのは人に対する最悪の侮辱だよ。

今日の昼間、YouTube で ACL Music Festival の中継を観ていたら、ニール・ヤングがコンサートのラストで「Hey Hey, My My」を歌っていました。知ってる人は知ってる、ジョニー・ロットンのことを歌った曲です。

1979年の「Rust Never Sleeps」に収録されている古い曲ですが、調べてみると奇しくも PiL が復活した2009年あたりからコンサートのセットリストに復活し、毎回最後に歌われているようです。同じインタビューの中で、この曲についての話もジョニーがしていました。

Q: ニール・ヤングが書いた「Hey Hey, My My」をあなたがどう思ってるのかずっと知りたかったんですが。

「Rust Never Sleeps」に入ってる曲だろ?笑っちゃうよ。(真似て歌い始める) "This is the story of Johnny Rotten. The king is gone but not forgotten." 俺もニール・ヤングが何を考えてこの曲を作ったのか知りたかったんだよ。だから VH1 で Rotten TV って番組をやってたとき、彼に直接その話を聞きたいってマネージメントに電話したことがあるんだ。だけど彼の事務所から返ってきた返事は「ジョニー・ロットンなんて知らない」だった(笑)。俺があの曲に関して知ってるのはそれだけさ。

Q: それはヒドい話ですね。その後もニール・ヤングに会ったことはないんですか?

彼はずっと俺のソング・ヒーローのひとりさ。彼が長年に渡って書いてきた詩や独特のアプローチが大好きなんだ。特にアルバム「Zuma」、あれが大好きなんだ。

Q: 素晴しいレコードですよね。

もちろん彼に会ってみたいとは思うよ。だけど長年思い描いてきた人物の場合、実際に会ってみるとがっかりするかもしれないって覚悟しなくちゃならない。

俺はビーチ・ボーイズも好きなんだよ。この間イギリスのテレビのライヴショーにビーチ・ボーイズが PiL と一緒に出演したんだ。YouTube なんかでも話題になってるはずだよ。その時俺はひどい風邪をひいていて喉の調子も良くなかったんだけどさ、ステージで歌ってるときは、驚異のヴォーカリスト集団ビーチ・ボーイズが聴いてるんだって、気になって仕方なかった(笑)。ブライアン・ウィルソンがすぐそばに座って指を鳴らしながら頭を揺らして楽しんでたんだぜ。すげえうれしかった。感激だよ。

その後バンドのメンバーのひとりが俺をブライアンに紹介してくれたんだけど、今まで会ったことがないほど奇妙な人物だった。だらっとして、心ここにあらずって感じだった。「写真を撮るのかい」って彼は言ったんだ。それで一緒に写真を撮ったんだけど、まるでロボットみたいだった。その後彼は椅子まで連れて行かれると、座ってテレビの画面をただ見つめていた。それが今のブライアンだった。俺は彼のことをすごく尊敬していたから、彼があんな風にボロボロになっているなんて信じたくなかったよ。

ま、ロットン様の音楽的嗜好はこうして実に多岐に富んでいるってことさ。

Mr. Rotten - John Lydon

でも PiL の演奏を聴いてるブライアン・ウィルソン、とても楽しそうだよ。

2012/09/30

それは地理的な場所じゃない、俺たちの心の中にある場所なんだ (Reggie Song - パブリック・イメージ・リミテッド)

明日10月1日、イギリスで PiL の新しいシングル「Reggie Song」が発売になります。今回取り上げているテーマはずばりエデンの園です。「Religion」の続編ともいえる曲で、いよいよ旧約聖書、創世記との対決です。

「The Room I Am In」の記事でも紹介した通り、ジョン・ライドンはここ数年インタビューで度々「この地上こそが天国なんだ (Heaven is on earth)」という言葉を口にしていますが、これがアルバム「This is PiL」を通じて共通するテーマにもなっています。

俺たちが経験できる唯一のものが、この現実なんだ。馬鹿野郎なのは、俺たちをエデンの園から追い出した神の方だ。だから俺たちにはエデンの園に帰る権利がある。そうすべきだ、そうしようぜ! そういう歌です。

俺たちの親友、特にランボーと仲のいいレジナルドって奴のことを歌った曲だ。もうずっと昔からの友達でさ、フィンズベリーパークで生まれ育ったアーセナル国の住民さ。どんな困難なことがあっても、決っしてあきらめない奴なんだ。あいつはジャマイカ人の血をひいてるんだけど、まあそんなことは俺たちにとって重要じゃない。俺たちはフィンズベリーパークの仲間なんだ。あいつは自分の子どもたちの面倒をみてやりたいんだけど、それが許されていない。政治システムのせいさ。そのシステムが彼からありとあらゆるチャンスを奪い、苦しめてるんだ。同じような問題はあちこちにあって、しばしば悪循環を引き起こしている。だけどあいつはそんな制度ともうまくつき合っていく方法を身に付けている。うまく操るんだよ。すごくイカれた奴さ。俺と同じくらいイカれてる。

俺たちはみんなイカれてるんだ。だがお互い愛しあってる。お互い真摯に、誠実につき合ってるからさ。レジナルドは賞賛に値する奴なんだ。ある日あいつが言ったんだよ。「灯火のように光れ」って。そして「ジョニー、おまえは灯火のように光らなくちゃならない」って言ったんだ。その言葉に俺が「エデンの園で」って付け加えたわけさ。すげえ!素晴しいリフレインだ。まさに真理だよ。俺たちはみんなエデンの園に帰りたいんだ。俺たちにとってのエデンの園がフィンズベリーパークなんだよ。だがそれは地理的な場所じゃない、俺たちの心の中にある場所なんだ。

JOHN LYDON: I AM FOLK MUSIC

この Reggie Song には4月のロンドン Heven でのライヴ映像をフィーチャーしたオフィシャルなビデオもあるんですが、もっと観ていただきたいのは9月25日にイギリス BBC テレビ音楽番組「Later... with Jools Holland」に出演したときのスタジオ・ライヴ映像です。PiL としてのテレビ出演は20年ぶりで、ジョニーはホームレス風ディナー・ファッションで登場します。この日のジョニー、風邪をひいていて声がちゃんと出ていないんですけど、それを補って余りある迫力が伝わってくるはずです。

レジナルドを知ってるかい?
分別をわきまえた奴でさ
あいつはちょっとしたアイディアを持ってる
それで穏やかな気持になれるんだ
あいつはヤバいものには近付かない
エデンの園アダムとイヴみたいに
すごく純真な奴なんだ

あいつは夢見てる
俺たちはみんな夢見てる
俺たちがここを出ていかなければならない理由なんてない
俺たちは、エデンの園で灯火のように光るんだ
悪いことなんて何もない、ここを出ていく理由もない

だから俺たちは光るんだ
光っているんだ

エデンの園で灯火のように光るんだ
出て行く理由なんて、どこにも、何ひとつもない
エデンの園で、俺を光らせてくれ
出て行く理由なんて、何ひとつない

あいつはロンドンで生まれた
俺もロンドンで生まれた
俺たちの多くはロンドンの生まれだ
だがどこの生まれだろうと関係ない
あんたもあの園に帰れば、まっとうな人間でいられる

俺はずっと夢見ている
悪いことも、出て行く理由も、何ひとつないんだ
エデンの園で灯火のように光るんだ
出て行く理由なんてどこにもない

上等なウィードから
七本の楡の木(セヴン・シスターズ)まで
何でも揃ってる
俺はそのフィンズベリーパークの生まれなんだ
こきげんだぜ
きっとあんたにもわかる日が来る
神の言葉をあれこれ考えたところで
大したことは何もわかりゃしない
あいつは女好きでさ
純真なやつなんだ
エデンの園にいるみたいに

エデンの園で灯火のように光れ
出て行く理由なんてどこにもない
エデンの園で灯火のように光るんだ
出て行く理由なんてどこにもない

俺はずっと夢見てる
出て行く理由なんてない
俺は今でもエデンの園に住んでいる

俺はずっと夢見てる
出て行く理由なんてない
俺は今も住んでいる
みんな住んでいるんだ
エデンの園に

2012/09/06

あんたがいるそこはずっと、まぎれもない天国なんだ (The Room I Am In - パブリック・イメージ・リミテッド)

Snow at Finsbury Park
Snow at Finsbury Park, a photo by Xenoc on Flickr.

ジョン・ライドンのロリポップ・ブログ(Lollipop Blog)、ブログと言ってもジョンが文章を書いて公開してるわけじゃありません。インタビューのビデオです。普段着のジョンが居間の椅子に座って話す様子を撮影、そのビデオを YouTube で公開するだけという、きわめて21世紀の PiL らしい低予算のプロモーション活動です。そのロリポップ・ブログ第4回のビデオが先日公開されました。今回のテーマは、ニューアルバム「This is PiL」収録の曲「The Room I Am In」についてです。

この曲は明確なビートやメロディーのない、いわゆるアンビエントな感じのサウンドで、従来の PiL にはなかったタイプの曲です。ジョンもほとんどメロディらしきものは歌わず詩を朗読しています。重苦しい一方でどこか美しいムードの漂う曲なんですが、曲の途中でなぜかジョンは笑っています。なぜでしょう。その理由は「ここが天国だから」です。

この曲はルー・エドモンズがスタジオで録ったものを編集したことから始まったんだ。メンバーの誰ひとりモノになるとは思ってなかった曲さ。テクノロジーの力で作り上げた音楽だな(笑)。みんなびっくりしたよ。彼は素晴しいものにしてくれたんだ。アンビエントで調子外れなサウンドで、心地良くて美しく、それでいて皮肉な感じも漂ってる。彼の心の底から生まれたサウンドだよ。

だから俺は、それに負けない相応(ふさわ)しい歌を入れようと思ったんだ。最終的に「絶望の中での生活」を心を込めて語るのがいいってわかったんだ。公営住宅の部屋、タールで汚れた壁、俺たちが育った場所の諸々についてさ。

だが地獄に思えるようなこの場所が、実は天国なんだってことを理解しなくちゃならない。俺たちが生きてるこの現実こそが天国なんだ。だから精一杯生きなくちゃならない。俺たちが経験できる唯一のものが、この現実なんだ。

宗教が広めてる最も有害な考えが「死後の救済」ってやつさ。宗教が言ってるのは今生きてることを無駄にしろってことじゃないか。

ここが天国なんだ。この部屋にいるみんな、世界中のみんなが今いるのが天国なんだ。今あんたがしている呼吸のひとつひとつ、それが天国なんだ。

あんたも自分の母親が癌になって、最後に息をひきとる場に立ち会えば、ああここが天国だったんだなってわかるはずだよ。

いつもだとここでライヴのビデオをご紹介するんですが、今のところ「The Room I Am In」はライヴで演奏されていないため、ビデオもありません。「へえ、ジョン・ライドンって、こんなこと歌う人なんだ」と興味を持った方はぜひ PiL のアルバム「This is Pil」をお買い求めください。

この窓からは、大した希望など見えた試しがない
このちっぽけな建物の外では
どんよりと曇った朝から始まり、晴れた空が広がり
夕暮れの色はやがて、漆黒と星だけの空になる
窓格子ごしにそれを眺めるだけ
汚物だらけの公営住宅
そこの部屋に俺はいる

わかっている
そんな中に
俺がいるちっぽけな部屋がある
俺の地獄
それが俺の居場所
それが俺の居場所

あんたがいるのはほかのどこでもない
あんたがいるそこはずっと
まぎれもない
天国なんだ

2012/08/29

アナログ・レコードに手を出すな!

Record Slow motion with needle
Record Slow motion with needle, a photo by kingdesmond1337 on Flickr.

「CD の音はダメだよ。MP3 とか iPod なんてもってのほか。やっぱ音楽はレコードで聴かなくちゃ。音の質感というかツヤが違うんだよねえ。それに何といってもあの大きなジャケット。」

中高年の音楽ファンがこんなセリフをほざくのを聞いたことはありませんか?何だか「お前が聴いてるのは質の低い音楽なんだ」って言われてるみたいで、すごくムカつきますよね。だいたいレコードなんてそのへんの店に行っても売ってない過去の遺物です。じじい共と一緒にさっさと滅びてほしい。レコードにこだわっていた人種といえば DJ がいるけど、あいつらでさえ最近はレコードはおろか CD すら使わなくなっています。

だいたいさあ、レコードって直径30センチもあるでかい円盤なのに、1枚50分くらいしか曲が入らないんですよ。しかも表と裏、別々に25分だって。25分経ったら続きを聴くのに円盤をひっくり返さなきゃ聴けないんだって。信じられる?

レコードってあれ、ただのビニールの円盤に溝を刻んでるだけでしょう。それをダイヤモンドでできた小さな針で引っかいて振動させて、それを電気で増幅して音を鳴らすだけなんだって。あまりにも原始的というか、それって安土桃山時代あたりの技術ですよね。それに針でビニールをこするわけだから、レコードは聴くたびにだんだん磨り減ってくんだって。「磨り減るほど聴き込んだ音楽」って、あれ例えじゃないんだって、本当に磨り減るんですって。アタマ悪過ぎ。

もそもさあ、あんなでかいレコードとレコードプレイヤーなんて持ち歩けないでしょう。電車やスタバで聴きたいときどうするんですか。聴けないでしょう。いや、そう思って「外で音楽聴きたいときはどうするんですか?」って尋ねたことがあるんですよ。そしたら「頭の中にしっかり音が刻まれた脳内ジュークボックスがあるから大丈夫。どんな場所でもすぐに好きな曲が聴けるよ」だって。アタマおかしい。

普通は iPod や iPhone で好きなときに好きな場所で音楽聴きますよね。連中違うんですって。新しいレコードが手に入ってもどこでもすぐに聴けるわけじゃないから「今日は真っ直ぐ家に帰って、ご飯食べて、あのレコード聴くぞ。今日は家に帰ったら、絶対あのレコード聴くぞ」って一日中考えながら、ずっと我慢して過ごすんですって。間違いなく変態。

AMP Magazine のサイト見ていたら、PiL のジョン・ライドンっておっさんのインタビューが載ってて、例によってレコードについて熱く語っていたんですよ。このおっさんはレコード・マニアで、20年くらい借金で首がまわらなくて座敷牢状態で新作を発表できなかったらしいんだけど、それでも自分で集めたレコードは手離さなくて、今はロンドンとロスの2箇所に大量のレコード・コレクション保管してるんですって。話を聞いてる若いインタビュアーがまた世間知らずで「ぼくもレコード・プレイヤー買います!」なんて言い出す始末。みんな、気を確かに持って!

Q: ここ数年、アナログ・レコードがまた盛り返してきていることをどう思いますか?あなたがアナログ・レコードの熱狂的支持者である理由も教えてください。

音楽を理解し満喫したいなら、アナログ・レコードを聴くべきだだよ。CD も高い技術レベルで製造すればいいものになるかもしれないが、今のところアナログ・レコードの質感には及ばない。あと何といっても大きさなんだよ。12インチのビニールの円盤は、アーティストが聞き手とその世界を分かち合うため、招き入れるために必要な大きさなんだよ。レコードの溝に指が触れないように注意しながら、真ん中のラベルに書かれた情報を見て、自分が今聴こうとしてるものを確認するんだ。俺が今までに買った一番高価なものはレコード・プレイヤーなんだよ。

Q: レコード・プレイヤーは今まで持ってなかったんですけど、そんな話を聞くと1台欲しくなりますね。

こういうジェネレーション・ギャップが生じた原因は、レコード会社の経営的な判断によるものなんだ。レコードを聴いてきた俺とレコードを知らないあんたは、聴いてきたものがまるで違うんだよ。レコード会社は CD というより安く音楽を製造する手段を得て、レコードを作るのを止めてしまった。安くなった一方で質が落ちた。で、知っての通りダウンロード音楽になるとさらにまた質が落ちたんだ。何か変わる度にすぐそれと分かるほど質が落ちる。ひどい話だよ。

PiL としての俺の立場から言えば、俺たちみたいな低音のぶ厚い音楽を聴くときは、インターネット経由で、しかもヘッドフォンを使って聴いたりすべきじゃない。自分の好みの音楽かどうかを確かめるにはそれでも用は足りるかもしれないが、大きな音で、ちゃんとした音の感触を楽しみたいのなら CD を買ってほしい。もっといい音で聴きたいならアナログ・レコードを買ってくれ。レコード・プレイヤーを置く場所が必要になるけどな。

Q: もうひとつ私が持ってないものが...

ああ、コンピューターを一式買うのに似てるよ。レコードで音楽を聴くには色々用意しなくちゃならない物があって、それが揃って始めて音が聴けるようになる。いずれにせよ、俺がやってるような聴き方は快適だぜ。大きなスピーカーのコーン紙が振動して部屋の中に響き渡る、これ以上のものはないよ。静電気のパチパチいう音がターンテーブルで鳴って、細かな音の隅々まで聴こえてくる。俺たちはでっかい部屋でレコーディングしたんだ。それを再現したいなら、部屋の中を音で満たすしかないんだよ。

Q: レコード・プレイヤーを買ってきます!

それがいい。世界が一変するぜ。

JOHN LYDON talks about the new album, the Occupy movement, Pete Townsend’s unsavory remarks about age, and Kickstarter

ああ、それからグルーヴ(groove)って言葉あるでしょう。「イェー、このグルーヴ、感じるかい?」のグルーヴ。グルーヴってレコードの溝のことなんですって。

2012/08/27

ジョニー・ロットンはアメリカを愛してる (Johnny Rotten Loves America)

An old Black Confederate Solider and his Grandson
An old Black Confederate Solider and his Grandson, a photo by J. Stephen Conn on Flickr.

PiL の北米ツアーに合わせて10月1日にシングル「Out of the Woods」がリリースされる件、先日はさらっと書きましたけど、これアメリカ人にとっては大変な問題作なんですよ。「Anarchy in the UK」や「God Save the Queen」なんかより、はるかにインパクト大きいはず。これがもし大手レコード会社からのリリースだったら、絶対に発売が認められない内容の曲です。

この曲はアメリカ南北戦争でのチャンセラーズヴィルの戦いについて歌っている。南北戦争にすごく興味があって調べたんだが、アメリカの真の歴史が独善的な見方によって無視されてることがわかって、ものすごい憤りをおぼえたんだ。そこから生まれた曲なんだよ。

アフリカ系アメリカ人は、アメリカの歴史のその部分において完全に無視されているのさ。俺はフロリダで教師をしているネルソン・ウィンブッシュ(Nelson W. Winbush)という人物に会った。彼の曽祖父は黒人の南軍兵士(black confederate soldier)だったんだ。自由な身分にあり、ボランティアとして志願し、南軍の兵士になった人物さ。

アメリカの歴史における黒人の本当の歴史なんだが、これは今でもうかつに会話に持ち出すと大問題になってしまう内容なんだ。この曲はそうした事実すべてと関連している。すごく興味深い話だろ。

John Lydon's Guide To 'This Is PiL'

これだけじゃ何のことだかピンと来ない人が多いと思うので、ちょっと解説します。まずアメリカの南北戦争、学校の世界史の時間に習いましたよね、150年ほど前にアメリカで起きた内戦です。南部11州が合衆国からの独立を宣言して結成したアメリカ連合国(Confederate States of America)と北部の合衆国との間で起きた戦争で、アメリカ史上最大の62万人という(第二次世界大戦よりも多い)犠牲者をもたらした戦争でもあります。

北軍は奴隷制を否定(正義)、南軍は奴隷制を擁護(悪)、結果は正義の北軍が勝利し、リンカーンが奴隷の解放を宣言して平和が訪れました。こんなイメージで把えてる人が大半だと思います。ですが Two sides to every story、人間の起こす戦争というものはそう単純なものではありません。戦争の原因自体は奴隷制とは直接関係がなく、貿易政策や州の自治権をめぐる、産業構造の違いからくる利害の対立です。奴隷の解放は副次的な結果に過ぎない、仮に南軍が勝利したとしてもやはり世の流れによって、奴隷は解放されていただろうという見方もできるのです。

北軍に黒人の兵士がいたことは、映画「グローリー (Glory)」に描かれたこともあり、知っている人も多いでしょう。ところが北軍だけじゃなく、南軍にも黒人の兵士がいたんです。しかも奴隷ではなく自由な身分の黒人で、自ら志願して兵士になった人々が。

この曲は黒人の南軍兵士の視点で歌っているんだ。

Public Image Ltd live at Heaven: Lock up your children

この記事の最初にある古い写真に写っているのがその兵士のひとり、Louis Napoleon Nelsonです。彼の隣で軍服を着てポーズをとっている子どもは曾孫(ひまご)のネルソン・ウィンブッシュです。戦争から70年ほど後、1932年に撮られた写真です。ジョン・ライドンが会って話を聞いてきたというのは、このウィンブッシュ氏です。

「北軍 = 奴隷解放 = 正義」説ひいては合衆国の大義を揺がしかねない黒人南軍兵士の存在は、公式の記録が残っていないことから長らくアメリカ国内で否定され続け、認められるようになってきたのは、つい最近のことです

ジョン・ライドンがウィンブッシュ氏に会いに行ったのは2007年のことで、当時のジョンはレコードを出したくても出せない状況にあったため、テレビに活路を見出そうとしていました。そこで彼が作ったのが、ランボーと共にハリケーン・カトリーナの被災地や民兵の集会などを訪れ、アメリカ南部の歴史を探るというドキュメンタリー番組「Johnny Rotten Loves America」です。その取材のひとつでウィンブッシュ氏に出会ったわけです。

ところがこの番組、放送してくれるテレビ局が現われず、結局お蔵入りになってしまいました。番組のトレーラーだけは YouTube に上がっているので観ていただくとすぐにわかりますが、This is Jonny Rotten なアプローチです。アメリカのテレビ局が逃げ腰になるのも無理はありません。

スティーヴン・フライ(Stephen Frye)はアメリカ南部のことを何も理解しちゃいない。そこに暮してるのが人の良い人間ばかりだってことは知ってるかもしれないが、あの土地の歴史について何もわかっちゃいないんだ。彼が南北戦争に関する番組をつくったことがあったが、南北戦争は奴隷解放のためだったなんていう安易な考えに基いたものだった。そんなの嘘っぱちだ。事実じゃない。だったらリンカーンの妻がアメリカ最大の奴隷所有者だったという事実をどう説明するんだ?戦争が終わっても長いこと黒人たちが解放されなかったのはなぜなのか説明してくれよ。

南軍旗(Confederate flag)を人種差別主義者の旗のように言うのも止めるべきだ。そもそも黒人たちは合衆国の旗の(もと)で奴隷としてアフリカから連れて来られたんだぜ。俺は真実が知りたいだけなんだ。もちろん南部ではひどいことが行われていたろう。だが南北両方でひどいことが行われていたんだ。だが嘘をつき続けてる限り、国の問題は何ひとつ解決できやしない。特に歴史というやつは、嘘つきどもがあれこれ好んで操作するもんだからな。

この件は、真実がどうであったのか厳しく検証すべき問題なんだ。じゃないと俺たちは、虚空の中で無意味な空想上の議論をしてるだけに終わってしまう。

PiL's John Lydon on appearing in butter commercials and being on Judge Judy

つまりシングル「Out of the Woods」は5年越し、「Johnny Rotten Loves America」で果せなかったことに対するリターン・マッチなんです。10月からこのシングルを携えて PiL の仲間と共にジョン・ライドンが再びアメリカへ乗り込みます。