2013/04/20

常識的に考えれば PiL の曲を聴いて「楽しい」という人はどうかしてます (Public Image Ltd 2013-4-5 東京 SHIBUYA-AX)

この4月5日東京 SHIBUYA-AX で PiL のライヴを観てきました。最新アルバム「This is PiL」のリリース後、初めての日本でのライブです。感想ですか?ええと、細かいことはよくおぼえてないけど、すっごく楽しかったです。

わかってるよ、何だよそれ、その保育園児が遠足行ってきたみたいな感想は、って言いたいんだろ。仕方ないじゃない、本当なんだから。でもさ、保育園で初めて遠足行ったときくらい楽しかったこと、最近あったか?楽しさを甘く見てもらっちゃ困るな、大切なことなんだぜ。

2011年の PiL 復活ライヴの評判は「かっこいい!」「チャーミング!」「すごい声!」でした。今回の来日ではさらに「すっごく楽しい!」が加わったのです。30年以上ずっとメタルボックス聴き続けてるおっさんも、たまたま招待券もらって PiL って何なのかよく知らないのにライヴに来ちゃった女の子も一緒になって「楽しい!」って踊ってました。

常識的に考えれば PiL の曲を聴いて「楽しい」という人はどうかしてます。神の名のもとに行われる殺戮を歌った Four Enclosed Walls、首にまとわりつき振り払えない悪夢を歌った Albatross、くだらない記憶ばかり頭にため込んで年老いていく男の歌 Memories、危篤の母親が苦しみ死を迎える様を歌った Death Disco、お互いの無理解による別離を歌った Flowers of Romance に、アパルトヘイト下での拷問や抵抗を歌った Rise 等々、どれも普通の楽しさとは正反対の歌ばかりです。

でも楽しいんです。信じられませんが、信じられないほど楽しいんです。別に日本人の観客が英語の意味がわからないからじゃないよ。英語圏の観客だっておんなじ反応をしています。理由は簡単です。エネルギーです。悲惨だったり深刻だったりする歌詞の内容とは裏腹にジョン・ライドンの声、PiL のサウンドにそれらをものともしないエネルギーを感じるからです。そして、自分の中からも同じエネルギーがわき起こってくるのが感じられるからです。だからみんな Death Disco でジョン・ライドンが泣き叫ぶように歌う中、涙を流しながら楽しそうに踊るんです。うん、端からはすごく変に見えても仕方ないと思う。

今回の PiL 来日コンサート、行きたくてもどうしても都合がつかず行けなかった。あるいは知らずに見逃してしまったという人も多いことでしょう。そんな人に朗報です。日本でのコンサートの直後に行われたシドニー公演の模様が Moshcam で公開されることになっています。公開の時期はたぶんゴールデンウィーク明けぐらいだと思います。楽しみに待っていてください。そして、来年か再来年、次回の PiL 来日は決して見逃さないように。一緒に「俺たちはここにいるぞ! (Here We are !)」って叫びましょう。

(2013/05/11 追記)
Moshcam で PiL のコンサート・ヴィデオが公開されました