2011/03/01

ロッキングオンにはジョン・ライドンの自伝「No Irish, No Blacks, No Dogs」の完全版を出していただきたい

パブリック・イメージ・リミッテッド(Public Image Ltd.)の来日、サマーソニック(東京)への出演がアナウンスされました。大変めでたいことです。

ただ本来なら昨年末あたり製作に取りかかっていたはずのニューアルバムは、義理の娘アリ・アップの病死により延期されたままです。一方ツアーの予定は5月くらいから色々入っているので、当分アルバムを録音するヒマがない可能性大。来日に合わせたキャンペーンがセックス・ピストルズや PiL の旧譜ばかりというのはナンだなあ。もちろん聴いたことない人にはこの機会に是非聴いてほしいんですけどね。

そういえば1994年に出版されたジョン・ライドンの自伝「No Irish, No Blacks, No Dogs」、国内ではロッキングオンから「Still a Punk」というタイトルで翻訳版が出ているんですが、あれ実は大幅に内容がカットされているんですよ。これを機会に完全版を出して欲しいなあ。

1994年といえば、PiL は活動停止、セックス・ピストルズの再結成もまだ実現していないちょうど谷間に当たる時期でした。あまり売上げが見込めない中、原著の出版後、時間を置かずに日本語版を出しただけでもエラいなとは思います。値段を抑えるため、やむなくページを削らざる得なかったんだなとも思います。でもねえ、ホントに大幅に削られてるのよ。翻訳版で章がまるごと削られているのは、次の5つ。

13章 Paul Cook, Drummer
ポール・クックの話を中心に、ピストルズ初期についての内容。ジョンがジュークボックスをバックにアリス・クーパーの「Eighteen」を歌ったときの話もここに出てきます。
14章 "How Brilliant! They Hate the Beatles!" Paul Stahl, Marco Pirroni, & Dave Ruffy
マルコ・ピローニ(Adam & The Ants のギタリスト)、デイブ・ラフィ(The Ruts のドラマー)らによるピストルズ登場前後のイギリスの音楽シーンやファッションについての話。マルコのほかシド・ヴィシャスやヴィヴ・アルバーティンが参加、ジョンが Flowers of Romance と名づけたバンドには15名のメンバーがいて、一度もリハーサルをしたことがなかったそうです。
15章 Kiss This - The Pistols Track by Track
ジョン・ライドンとポール・クックによる、アルバム「Kiss This」の全曲解説。先日書いた、シドがアバのメンバーにサインをもらおうとしたときの話はここに出てきます。
18章 Big Draw, Then Hand on Face/Don Letss, John Lydon, and Jeanette Lee
ジョン・ライドン、ドン・レッツ、ジャネット・リー(一時 PiL のメンバーとしてクレジットされ、アルバム「Flowers of Romannce」のジャケットにも登場したお姉さん)による対談。ピストルズ脱退後、ジョンがドン・レッツ、デニス・モリスと共にジャマイカへ行き、ヴァージン・フロントライン・レーベルの立ち上げを手伝ったときの話やジョンがウンコ・サンドイッチをノラの友人に食べさせたときの話が出てきます。本のタイトルとなっている「アイルランド人、黒人、犬はお断り」の話もこの章で語られています。
20章 Never Mind the Lolling on the Sand, Here's the Affidavits/A Leagal Pie Fight
ジョンとマルコム間で争われた「グリッターベスト訴訟」と、ピストルズ解散前後の状況に関する関係者証言。

そのほかの章もあちこち削られています。病気で死ぬ前の母ちゃんをジョンがアメリカ旅行に招待した話とか、ピストルズのメンバーは音楽的な好みがバラバラで、一晩中話し合って判明した唯一共通の好みがドアーズ(The Doors)だったとかの話がばっさりカットされていて、オリジナルの7割くらいしか訳されていない感じです。

発売当時は先に述べたような状況だったとしても、なんだかんだで15年以上に渡って売れつづけてる本だもの、充分利益は出ているはず。ジョン・ライドンといえば、ロッキングオンの古参スタッフのみなさんが、昔ものすごくお世話になった人しょう?恩返しと思って、完全版を出したら?タイトルも原題通り「アイルランド人、黒人、犬はお断り」に直してさ。

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