2011/03/05

カタギの生活(A Song From Under The Floorboards - マガジン)

Magazine at Manchester Academy - 17th February 2009 by Kerry Burnout
Magazine at Manchester Academy - 17th February 2009, a photo by Kerry Burnout on Flickr.

このサイトの記事で取り上げるミュージシャンは1970年代に登場した人が中心なので、ハゲてる人、スキンヘッドの人がたくさんいます。ブライアン・イーノを筆頭に、ワイヤーのグレアム・ルイスやロバート・グレイ、PiL ベーシストのスコット・ファースなど、みんなハゲてます。コリン・ニューマンは正面から見るとまだけっこう髪が残っているように見えますが、てっぺんの方はかなり寂しい状態になっています。

近頃は、ハゲてきたら中途半端に残しといても鬱陶しいから全部剃ってしまうという人が少なくありません。イギリスでの元パンクスの中年男性はスキンヘッドにヒゲとピアスというのが標準スタイルになっているようです。

かくいう私は額がかなり後退してきたものの、まだハゲというほどハゲてはいません。でもかなり昔、スキンヘッドにしていたことはあります。今でこそスキンヘッドというのはひとつのファッションスタイルとして定着していますが、当時日本でスキンヘッドにしていたのは、私とお坊さんとおじいさんと夏目雅子さんだけでした。

スキンヘッドにしてみて分かったのは、むき出しの頭皮は暑さ、寒さを非常に敏感に感じるということです。たとえば家の普通の照明の下へ行くと蛍光灯の熱を感じるくらい敏感なのです。スキンヘッドな人にとって、真夏や真冬に帽子をかぶらずに外を歩くなど自殺に等しい行為なのです。

あと髪はすぐに伸びるということもわかりました。床屋さんでカミソリを使ってツルツルに剃っても、翌日頭皮に触ると、もうジャリジャリしてます。きれいなスキンヘッドを保つため、私は毎日電気髭剃りで頭を剃っていました。でもそうすると、頭皮がカミソリ負けしてボロボロになってくるんです。お坊さんなどは、毎日米ぬかを布にくるんで、頭を磨いているんだという話を聞きました。見た目よりはるかに手間がかかるんですよ、スキンヘッド。

ええとなんだっけ?そうだ、そこで本日はまたスキンヘッドな人たちをご紹介します。ハワード・デヴォート(Howard Devoto)さんとマガジン(Magazine)のみなさんです。マガジンはバズコックス(Buzzcocks)のオリジナルメンバーであったハワードさんを中心に1977年に結成、1981年まで活動していたバンドです。

ヴォーカルのハワードさんはマガジン解散後もソロなどでしばらく音楽活動を続けていたのですが、やがてそれも止めて写真の代理店に就職し、カタギの生活を送るようになりました。2001年に ShelleyDevoto というユニットでちょっとだけ復活したのですが、基本的にはステージと無縁の生活です。

ところが2009年に突如マガジンを復活させ、ツアーを行い、ライブアルバムをリリースしました。次の映像は地元マンチェスターでのライブなんですが見てください、このステージでの立ち居振る舞いと顔つき。

絶対カタギじゃねえよ。

ぼくはいつも怒っているし、病んでいる
そしてものすごく醜い
苛立ちは、ぼくの元気の源
生きる意味なら知っているが、いったいそれが何の役にたつ
美しいものや良いものが、分からないわけじゃない

この歌は、床下から聴こえてくる歌
この歌は、壁の割れ目から聴こえてくる歌
ぼくの惰性が引き起こす出来ごと
ぼくは単なる虫けら
そして、ぼくはそれをすごく誇りに思う

高貴なものや最上のものも知っている
そうしたものにはちゃんと相応の敬意を払う
だけど最も美しい宝石はぼくの中にあって
ぼく自身の愚かさへの喜びで輝いている

この歌は、床下から聴こえてくる歌
この歌は、壁の割れ目から聴こえてくる歌
ぼくの惰性が引き起こす出来ごと
ぼくは単なる虫けら
そして、ぼくはそれをすごく誇りに思う

以前は幻影を自分でつくり出し、それを追いかけていた
考えつく限りの、ありとあらゆるまぼろしを
でも、そうした恩恵にあやかるのにも飽きてしまった
そう、ただ飽きてしまった

この歌は、床下から聴こえてくる歌
この歌は、壁の割れ目から聴こえてくる歌
ぼくの惰性が引き起こす出来ごと
ぼくは単なる虫けら
そして、ぼくはそれをすごく誇りに思う

この曲はモリッシー(Morrissey)のちょっと歌詞を変えてコブシを効かせたバージョンがあるんですが、こちらもなかなか泣かせる仕上がりです。