David Bowie - The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars (1972), a photo by luna715 on Flickr. |
「ジギー・スターダスト・アンド・ザ・スパイダース・フロム・マーズの栄華と没落 (The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars)」というデイヴィッド・ボウイ(David Bowie)のアルバムがあります。1972年、今から40年近く前に発表された作品です。
アルバムはひとつのストーリーに沿って展開するいわゆるコンセプト・アルバムになっていて、人類の滅亡まであと5年という世界が描かれています。デイヴィッド・ボウイはその世界に突如彗星のように現れたロックスター、ジギー・スターダストを演じています。
今回紹介する「ファイヴ・イヤーズ(Five Years)」はこのアルバム冒頭を飾る曲です。あと5年しかないとニュースで報じられた直後の町の様子と、それを目にした青年(後のジギー・スターダスト)の心象風景が歌われています。
自分たちにはあと5年しか残されていない、それを知ったとき人はどうなるのか?世界はどうなるのか?日本に住む人の多くは今、これをかなり明確にイメージできる状態にあるのではないでしょうか?
絶望し途方に暮れる人がいます。お祈りをする人がいます。何を根拠に滅亡すると言うんだ、ちゃんとしたデータを示せ!と主張する人もいます。何とか対策を講じて滅亡を防ごうとがんばる人もいます。今がチャンスと株を買ったり売ったりに忙しい人もいます。今現在苦しみの真っただ中にいる人や5年を待たずに死んでしまう人もいます。
もしあと5年しか残っていないとしても、多くの人はその5年を生き続けるわけです。仕事をしたり、ごはんを食べたり、子供の面倒を見たりしなくちゃなりません。淡々と生活していくしかない。だけどそれまでとはまったく違う、そんな世界です。
広場を通り抜けると、たくさんの母親たちが泣いていた
ぼくらにはあと5年しか残されていない、そのニュースが報じられたところだった
ニュースキャスターの男は泣きながら、世界は間もなく滅びるのだと言った
その涙に濡れた顔を見て、嘘じゃないとわかった電話やオペラハウスの音、大好きな曲のメロディーが聴こえた
少年たちや玩具や電気アイロンやテレビが見えた
身の回りのものをすべて覚えておかなくちゃならない気がして
ぜんぶ頭に押し込もうとして、ぼくの頭は破裂しそうになった
太った人、痩せた人、背の高い人、低い人
それからありとあらゆる無名な人、有名な人
ぼくは今まで、これほどたくさんの人を愛おしく感じたことはないぼくと同じくらいの年頃の少女が正気を失って、小さな子供たちを殴っていた
もし近くにいた黒人が止めなかったら、殺していたかもしれない
片腕の兵士が車のホイールをじっと見つめていた
ひとりの警官が跪き、牧師の足にキスをした
その光景を見た同性愛者が嘔吐したぼくがきみを見たのは、アイスクリームパーラーだったと思う
優雅にミルクセーキを飲みながら、笑い、元気に手を振る姿を
まさか自分がこんな風に歌われるなんて思ってもみなかったはず