Alice Cooper, a photo by Jan Kjellin on Flickr. |
ボブ・ディラン(Bob Dylan)がローリングストーン誌のインタビューで「アリス・クーパーのこと、忘れてねが?」と言ったのは1978年のことです。もちろんローリングストーンを読むタイプの人たちは、ディランがそう言ってもアリスのことを気にかけたりしません。だいたいローリングストーンって、昔からおっさん臭い雑誌だったんだよ。己れの中に潜むフランケンシュタインと日夜格闘している健全な悩める青少年はローリングストーンなんか読んだりしません。アリス・クーパーはこの青少年たちを相手に歌い続けているのです。
アリス・クーパーが歌手としてデビューしたのは高校で開かれたパーティーです。教師のみなさんご列席のパーティーにアリスは「キャーキャー叫ぶ女の子たちを予め雇って」臨んだそうです。またフランク・ザッパ(Frank Zappa)の主催するレーベルのオーディションでは、ザッパが「じゃ、明日の7時に家に来てくれ」と言ったのを良いことに、早朝ザッパの家へ忍び込んで機材をセット、7時になった瞬間にドカーンと演奏を始めたそうです。悩める青少年なら誰もが憧れる伝説的エピソードです。このときザッパはガウンのままコーヒーカップを持って出てきて「んじゃ、契約しよ」と言ったそうです。尊敬できる大人の対応です。以来、アリスは40年以上に渡りゲテモノ路線を走り続けています。
悩める青少年たちは大人たちが嫌がる、眉をひそめるようなものが大好きです。連続殺人鬼やゲテモノが大好きです。その中に「自分の真の姿」を見出すからです。アリスは青少年が望むものだけでなく、それ以上のものを提供します。連続殺人鬼やゲテモノの形をした青少年のさらに背後にあるものです。連続殺人鬼やゲテモノを通じてしか表現できない、説得力を持たない「本当のこと」というのが、世の中には確かに存在するのです。
「The Song That Didn't Rhyme」はアルバム「The Eyes of Alice Cooper(2003)」に収録されている曲です。「くだらない」「ゲテモノ」と言われ世間に相手にされなかったけど、そのくだらないものがこうして生き延びているんだよ、という歌です。「きみのやってるくだらないことはとっても正しい!」という歌です。ボブ・ディランは歌ってくれないタイプの歌です。
だけど、アリスにはほかにも素晴らしい曲がたくさんあり過ぎて、ライブではこの曲ほとんど歌われていないんです。
曲を書いたんだ
だけど最初の構想からしてダメで
一行一行が苦行だった
スピード感とか魅力的なところはゼロ
シリアスさもなければ気の利いたところもまるでない
韻もろくに踏んでない歌だったバンドは途方に暮れ、シンガーは歌えない
ドラマーもまともに叩けなかった
ラジオのDJにはボイコットされ
クレジットカードの取引が停止された
ビルボードには犯罪に値するとまで書かれたメロディーは誰にもわからないキーの中をさまよい
歌詞は何ひとつ意味を伝えない
けどあの曲が頭から離れない
きみの3分間を無駄にする
韻もろくに踏んでない歌平凡さと退屈のあまり
グルーピーたちはみんないびきをかいていた
初めてライブで演奏したとき
レコード会社の社員はみんな解雇され、社長も辞任した
だけどその歌だけは、なぜかこうして生き延びているメロディーは誰にもわからないキーの中をさまよい
歌詞は何ひとつ意味を伝えない
けどあの曲が頭から離れないメロディーは誰にもわからないキーの中をさまよい
歌詞は何ひとつ意味を伝えない
けどあの曲が頭から離れないきみの3分間を無駄にする歌
何ひとつ役に立たないのに
韻もろくに踏んでない歌に
12ドル99セント払ってくれたことを
感謝するよ