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2012/12/16

若くてエネルギー溢れる俺ときみが手を組んで、一緒に選ばれようじゃないか (Elected - アリス・クーパー)

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Alice Cooper, a photo by Scott Butner on Flickr.

アリス・クーパーが何十年も人気を保ち、第一線で活躍している理由というのはですねえ、いつまでも「きみと俺」という悩める青少年に語りかける姿勢を保ち続けているからだと思います。

そんで人というのは年をとっておじさん、おばさんになっても案外まだ「悩める青少年」なんです。まじめに悩めば悩むほど深刻になって、出口が見えなくなってくるんですけど、そんなときでもアリスはニヤりと笑って語りかけてくれるんです。「俺はきみから生まれたんだぜ」って。

ジョン・ライドンも言ってる通り、アリス・クーパーは世界をちょっとだけマシな場所にしてくれた偉人のひとりです。世の中を少しでもマシにしたいと思ってるなら、みんなもうちょっとアリス・クーパーを聴くべきだと思うよ。

俺は極上品、きみが選ぶのは俺しかいない
俺を当選させてくれ
俺は金のロールス・ロイスに乗った生粋のアメリカ男
俺を当選させてくれ
子どもたちが望んでいるのは偽者じゃない、真の救世主
だから俺を選んでくれ
俺の作るルールでみんなを揺さぶってやろう
俺を当選させてくれ

俺は決して嘘はつかない
常に冷静な男だ
俺を当選させてくれ
俺は票を獲得しなくちゃならない
学校をどうするかは、前に言ったよな
俺を当選させてくれ

わたしが当選したあかつきには
新党(ニュー・パーティ)の結成をお約束しましょう
その名もどんちゃん騒ぎ(ワイルド・パーティ)です!
わたしたちは今、たくさんの問題を抱えています
ここ、テネシーはもちろんのこと
ナッシュヴィルもメンフィスも
アメリカ中が問題だらけです
ですが
わたしの知ったことじゃありません

俺たちはこの選挙に勝ち
この国を手中に収める
若くてエネルギー溢れる俺ときみが手を組んで
一緒に選ばれようじゃないか

2012/06/29

ママは俺の髪をカールして口紅を塗り、傷跡を隠してくれた (Born This Way - アリス・クーパー)

Alice Cooper @ Credicard Hall
Alice Cooper @ Credicard Hall, a photo by Focka on Flickr.

今月開催されたボナルー・フェスティヴァル、インターネットで中継されたため観た方も多いことでしょう。私も観ました。目当ては最終日の大トリ、アリス・クーパーです。去年のツアーに参加していたギターのスティーヴ・ハンターが今年はいないのですが、その分オリアンティがバンドに馴染み、ゾンビ・メイクをして弾きまくってました。

アリスの場合、出し物が色々あるためか、通常シーズンを通じてセットリストはほぼ固定です。アンコールは Elected で、これで終わりだなって思っていたら、もう一曲やってくれました。インダストリアルなアレンジのイントロで、オリアンティのギターが入ったところで「ああ、よく知ってる曲だ」ってわかりました。よく知ってる曲なんだけど、あれ?これ、何だっけ?

俺が子どもの頃、ママが言ってた
「私たちはみんな、生まれながらのスーパースターなのよ」
ママは俺の髪をカールして口紅を塗り、傷跡を隠してくれた
「あなたはちっとも変じゃないのよ、坊や」
ママは言った
「神様はあなたを理想的な存在として作られたの」
「だからほら、頭を上げて、前へ進むのよ。」
「いい?ママの言うこと、よく聞くのよ」

俺には俺だけの美しさがある
だって神は間違ったものを作ったりしないからな
俺は間違っていない
こうなる運命の(もと)に生まれてきたんだ

自分を恥じることはない
自分を愛することから、始まるんだ
俺は間違っていない
こうなる運命の(もと)に生まれてきたんだ

俺の名前はアリスだって言ったら、親父は腰を抜かしてた
親父には、まるで理解できなかった
化粧をして、行儀悪くふるまったが、そんなのは序の口
変人になることは、罪なんかじゃない
あいつらには、どうすることもできない
俺たちのことなんか何もわからないんだから
いいか?俺の言うことを、聞き逃すんじゃないぞ

俺には俺だけの美しさがある
だって神は間違ったものを作ったりしないからな
俺は間違っていない
こうなる運命の(もと)に生まれてきたんだ

自分を恥じることはない
自分を愛することから、始まるんだ
俺は間違っていない
こうなる運命の(もと)に生まれてきたんだ

このアリス・クーパーの Born This Way に対するガガ様からのツィート。

@realAliceCooper 身に余る光栄でございます、殿。歌詞を自分用に変えて歌った部分もすばらしい。#フランケン・ガガとぜひ共演したい

「身に余る光栄です(I am not worthy)」ってのは、もちろんウェインズ・ワールドのネタ。さすがガガ様は礼儀というものをよく心得てらっしゃる。

2012/06/23

ロックのステージが伝統芸能になる日 (二代目アリス・クーパーを考える)

Alice Cooper & Orianthi
Alice Cooper & Orianthi, a photo by Mike__Lawrence on Flickr.

前回「これからは旅芸人一座の時代だ」という話をしたので、この人に触れておかないわけにはいけません。アリス・クーパーです。業界デビューは1967年ですから、この道45年の大ベテランです。マリリン・マンソン、ロブ・ゾンビ、キッスなどに大きな影響を及ぼし、シアトリカルなステージとショック・ロックの創始者として知られる偉い人です。アリス・クーパー一座を率い、今も精力的にライヴ活動を続けています。

ロック音楽というものが生まれてそろそろ50年くらい経ちます。ロックが生まれて間もない頃は演る方も聴く方も若くて「ロック音楽 = 若者の音楽」のように思われていたのですが、当然そんなの錯覚で、時が経つに連れ人は年を取っていきます。今では60代、70代のロック・ミュージシャンもリスナーも珍しくありません。

何十年にも渡って活動を続けているロック・ミュージシャンはけっこうたくさんいます。ただし、昔一世を風靡したアーティストでも、その後のキャリアの中で新たなファンを獲得できなければ、観客は中年や年寄りばかりになってしまいます。

ところがアリスは違います。アリスのステージというのは、ぶっちゃけ40年前も今も、あまり変わっていません。変わっていないのになぜか、常に新しいファンを獲得し続けています。アリスのライヴには兄ちゃん、姉ちゃん、おじさん、おばさんだけでなく、最近ファンになったガキんちょや、アリスと同年代のじいちゃん、ばあちゃんまで、他に例を見ないほど幅広い年齢層のファンが集まります。メタルなギターが鳴り響くステージの最前列でばあちゃんがガキんちょと一緒に「あ〜い、らぶざでぇっど」と歌ってる姿、これほど感動的な光景がほかにあるでしょうか?

新たなファンを常に獲得し続ける理由、それはもちろんアリス自身の作詞、作曲能力やステージ・パフォーマーとしての才能、魅力によるものであることに疑いはありません。だけどそれだけじゃないと思います。アリスのステージや作品にはアリス自身を越えた何かが宿ってるんだと思います。

日本の伝統芸能の世界でよく使われる言いまわしに「芸は一代限り」というのがあります。人の才能とか魅力というのは他人に引き継げません。その人だけのものです。だけど一方で、個人の才能を越えて引き継げるものがあるからこそ、「伝統」芸能というものが成り立つわけです。

ロック音楽とそのコンサートいうのは、まだ歴史の浅い芸能です。だからまだ伝統として引き継ぐべき形が見出せていないのだとも言えます。だけどアリスのステージは?アリスはひょっとしたら、今後数百年に渡って引き継がれる普遍的な何かを既に見つけたんじゃないかと思うのです。

普通、人は「俺は18歳、だけど頭は赤ん坊のまま、心はもう年寄り」とか「俺は死体が大好き」なんて歌やギロチン、縛り首パフォーマンスに伝統としての価値を認めたりしません。ですが、確かにここに何かあるんです。世代を越えて人を惹き付ける何かがあるんです。それをアリスが発見したんです。

アリスは今年64歳なんですが、今でも年間80本とか90本という、驚異的な数のステージをこなしています。ずっとそれを続けてます。旅芸人なんです。ですが体力的に考えて、今のようなステージができるのはあと数年でしょう。ここから先は勝手な妄想なんですが、アリスは今、自分の芸を引き継ぐべき跡取りを探してるんじゃないかと思うんです。

一年ほど前、アリスのバンドにオリアンティ(Orianthi)が加わりました。マイケル・ジャクソンの This is It にも出ていた、まだ20代の若き女性ギタリストです。何の根拠もないんですが、アリスはこのオリアンティを二代目アリス・クーパーにしようと考えてるんじゃないかな、と思うんです。

Q: アリスと一緒にやることになった経緯を教えてもらえますか?

ボブ・エズリンからのメールがきっかけだったの。ボブとはフィフィ・ドブソンの曲で一緒に仕事したことがあったんだけど、私がニューアルバムをレコーディングしていたナッシュビルまで彼が会いに来て、アリスのバンドでやってみる気はないかって誘ってくれたのよ。アリスとは一度アメリカン・アイドルで一緒に School's Out をプレイしたこともあったし、すごく惹かれる話だったのよ。

でもやってみたらこれマジですかって感じだった。だってアリスの曲を全部1週間で覚えなくちゃならなかったんだから。だけどこういうチャレンジは大好き。自分を未知の新しい分野に挑戦させるの。ミュージシャンってそういう人種なのよ。

Q: ええと、あなたはまだ15歳でしたよね?アリス・クーパーの長年に渡る膨大な作品についてあまりご存知なかったのでは?

15よりはちょっとだけ老けてるわよ!(笑) もちろん School's Out や Poison とか曲は色々聴いていたわ。アリスのことはずっと、すばらしくクールで最高のオリジネーターだと思っていたけど、バンドでアリスの曲をカバーしたことはなかっただけ。

1週間かそこらの大急ぎでレパートリーを覚えてみて分かったのは、曲がすごくうまく書かれてるってことだったの。クールなギター・パートがたくさんあるだけじゃなく、プレイヤーがさらに活躍できる余地が残されているのよ。スティーヴ・ハンターと一緒にプレイできるのも楽しい。今までやってきたことはまったく違う経験なのよ。

Q: マイケル・ジャクソンと一緒に仕事をした後ですから、間違いなくたくさんのバンドやツアーのオファーがあったと思うんですが、なぜアリス・クーパーを選んだんですか?

それが正しいと思ったからよ。ホンモノのロックンロールで、今まで私がやったこととは全然違っていたから。私はロッキー・ホラー・ショーみたいで、演劇的なアリスのステージが大好きなの。単なるコンサートじゃなくて、まさにショーなのよ。彼は素晴しいパフォーマーであり、ホンモノの存在感を持ってる。私はそういうのをやりたかったのよ。

Interview: Orianthi on touring with Alice Cooper

ね、なかなかいい娘でしょう、オリアンティ。二代目アリス・クーパーもありかなって思わない?もしオリアンティが来年のツアーと次のアルバムのレコーディングに参加するなら、俄然その確率は高くなると思います。

もちろんそんないきなりじゃなく、これから10年くらいかけて徐々にステージ上でのオリアンティの役割を増やして、その後、初代アリス・クーパーの引退と同時に二代目襲名披露を行うって感じでいかがでしょう?

あと30年くらい経って貫禄の付いたオリアンティがアリス・メイクで「私が車をドライヴ、あんたは私のタイヤの下敷き」って Under My Wheels を歌うの聴きたくない?オラは聴きたいなあ。

2011/06/28

きみの3分間を無駄にする歌 (The Song That Didn't Rhyme - アリス・クーパ ー)

Alice Cooper by Jan Kjellin
Alice Cooper, a photo by Jan Kjellin on Flickr.

ボブ・ディラン(Bob Dylan)がローリングストーン誌のインタビューで「アリス・クーパーのこと、忘れてねが?」と言ったのは1978年のことです。もちろんローリングストーンを読むタイプの人たちは、ディランがそう言ってもアリスのことを気にかけたりしません。だいたいローリングストーンって、昔からおっさん臭い雑誌だったんだよ。己れの中に潜むフランケンシュタインと日夜格闘している健全な悩める青少年はローリングストーンなんか読んだりしません。アリス・クーパーはこの青少年たちを相手に歌い続けているのです。

アリス・クーパーが歌手としてデビューしたのは高校で開かれたパーティーです。教師のみなさんご列席のパーティーにアリスは「キャーキャー叫ぶ女の子たちを予め雇って」臨んだそうです。またフランク・ザッパ(Frank Zappa)の主催するレーベルのオーディションでは、ザッパが「じゃ、明日の7時に家に来てくれ」と言ったのを良いことに、早朝ザッパの家へ忍び込んで機材をセット、7時になった瞬間にドカーンと演奏を始めたそうです。悩める青少年なら誰もが憧れる伝説的エピソードです。このときザッパはガウンのままコーヒーカップを持って出てきて「んじゃ、契約しよ」と言ったそうです。尊敬できる大人の対応です。以来、アリスは40年以上に渡りゲテモノ路線を走り続けています。

悩める青少年たちは大人たちが嫌がる、眉をひそめるようなものが大好きです。連続殺人鬼やゲテモノが大好きです。その中に「自分の真の姿」を見出すからです。アリスは青少年が望むものだけでなく、それ以上のものを提供します。連続殺人鬼やゲテモノの形をした青少年のさらに背後にあるものです。連続殺人鬼やゲテモノを通じてしか表現できない、説得力を持たない「本当のこと」というのが、世の中には確かに存在するのです。

「The Song That Didn't Rhyme」はアルバム「The Eyes of Alice Cooper(2003)」に収録されている曲です。「くだらない」「ゲテモノ」と言われ世間に相手にされなかったけど、そのくだらないものがこうして生き延びているんだよ、という歌です。「きみのやってるくだらないことはとっても正しい!」という歌です。ボブ・ディランは歌ってくれないタイプの歌です。

だけど、アリスにはほかにも素晴らしい曲がたくさんあり過ぎて、ライブではこの曲ほとんど歌われていないんです。

曲を書いたんだ
だけど最初の構想からしてダメで
一行一行が苦行だった
スピード感とか魅力的なところはゼロ
シリアスさもなければ気の利いたところもまるでない
韻もろくに踏んでない歌だった

バンドは途方に暮れ、シンガーは歌えない
ドラマーもまともに叩けなかった
ラジオのDJにはボイコットされ
クレジットカードの取引が停止された
ビルボードには犯罪に値するとまで書かれた

メロディーは誰にもわからないキーの中をさまよい
歌詞は何ひとつ意味を伝えない
けどあの曲が頭から離れない
きみの3分間を無駄にする
韻もろくに踏んでない歌

平凡さと退屈のあまり
グルーピーたちはみんないびきをかいていた
初めてライブで演奏したとき
レコード会社の社員はみんな解雇され、社長も辞任した
だけどその歌だけは、なぜかこうして生き延びている

メロディーは誰にもわからないキーの中をさまよい
歌詞は何ひとつ意味を伝えない
けどあの曲が頭から離れない

メロディーは誰にもわからないキーの中をさまよい
歌詞は何ひとつ意味を伝えない
けどあの曲が頭から離れない

きみの3分間を無駄にする歌
何ひとつ役に立たないのに
韻もろくに踏んでない歌に
12ドル99セント払ってくれたことを
感謝するよ

2011/06/08

ConcertLive で PiL Live At The Isle Of Wight Festival 2011 の予約受付が始まってます

PiL @ Primavera Sound 2011 (3) by stinker
PiL @ Primavera Sound 2011 (3), a photo by stinker on Flickr.

今年のワイト島フェスティバル、ジョニーおじさん率いる PiL は6月11日に出演予定なんですが、その模様がライブ CD として発売されることになりました。既に発売元 ConcertLive の Web サイトで予約受付が始まってます。PiL が ConcertLive から CD を出すのは「ALiFE 2009」に続いて2回目で、例の限定版写真集「Mr Rotten's Scrapbook」も ConcertLive が企画したものです。

ConcertLive については以前「ALiFE 2009」が出たときにも書いたのですが、コンサートを録音してその場で CD に焼き、終了直後に会場で販売するというサービスをしていています。レコーディング機材と大量の CD ライターを積んだ車でコンサート会場へ乗り付けて作業しています。またコンサートに来られない人向けには通信販売もしています。

ConcertLive は学校の友達だった Adam Goodyer と James Perkins という2人が2005年に始めたイギリスの会社です。ある日の夜遅く、酔っ払った2人は以前観たマッシブ・アタックのコンサートで最後に演奏された曲が何だったのかで口論していました。Adam は「間違いなく Unfinished Sympathy だった」と主張、James は「いや、Blue Lines だった」と言い張りました。でもお互い証拠となるものが何もなかったので、結局どちらの記憶が正しいのかわかりませんでした。この言い争いがきっかけで「そうだ、コンサートの内容をすぐ CD にして家に持って帰れたらこんな口論をしなくて済む。世の中にはこういうことが原因で夫婦仲に亀裂が入ったり、ご近所との仲が険悪になったりする人がたくさんいるはずだ。ライブ CD があれば世界が平和になってみんなが幸せになれる。」ということで ConcertLive を立ち上げたそうです(About Us)。

当初はもっぱらイギリス国内のライブばかりだったのですが最近は力を付けてきたらしく、ヨーロッパでのライブ CD も販売するようになっています。似たようなサービスをやっている会社はほかにもいくつかあるのですが、下手にダウンロード販売をせずに物理的な CD にこだわったのが功を奏したようです。最近ではアリス・クーパー(Alice Cooper)やエルトン・ジョン(Elton John)などのビッグネームも ConcertLive で CD を販売するようになっています。アリス・クーパーの場合、ここ数年コンサートの録音をすべて Simfy Live で販売していたのですが、今年(ほぼ)オリジナルメンバーで再結成を果たしたアリス・クーパー・バンドのヨーロッパツアーは「No More Mr Nice Guy LIVE!」として ConcertLive から発売されます。こっちも予約受付中です。

(訂正) アリス・クーパーのツアーに昔のメンバーで参加しているのはスティーブ・ハンター(Steve Hunter)だけでした。

(7/31 追記) 国内でも販売されることになりました。9月19日の発売予定です。Amazon で予約受付中です。

2011/05/03

ジェシー・ジェーンの物語 (The Saga of Jasse Jane - アリス・クーパー)

Hamar Music Festival 2010 - Alice Cooper 05 by repost.no
Hamar Music Festival 2010 - Alice Cooper 05, a photo by repost.no on Flickr.

アーティストとか芸人が担っている仕事とは「普通に暮らしていただけでは見えない何かを見せること」ことです。もちろん普通の生活の中にも楽しいことや感動することはたくさんありますが、それだけでは満たされない「もっと何かを見たい、感じたい」という欲求を持っているからこそ人は映画や音楽を見たり聴いたりします。それが娯楽というものです。

中でも重要なのはエログロ、スプラッタです。日本の古典芸能、特に歌舞伎や文楽においてエログロ、スプラッタがその根幹を成す欠かせない要素となっているのはみなさんご存じの通りです。ただしエログロ、スプラッタが「常識ある社会人が見る健全な娯楽」として認知されている国は世界的にまだ少数派のようです。

アリス・クーパーは彼の声と歌詞、メロディーによって、私たちの普段暮らしている世界に似て非なる世界を作り出します。荒唐無稽でエログロ、スプラッタな世界です。アリスの歌の力とは聴き手が住んだことのない世界、経験したことのない人生の記憶を思い出させることです。

ジェシー・ジェーンの名前は知ってますよね?思い出せない?アリスが歌うジェシーの歌を聴いてみてください。懐かしく切ないメロディーと共にあなたがジェシーだった頃の記憶がよみがえることでしょう。

俺は今、テキサスの牢屋の中にいる

俺は姉貴のウェディングドレスを着て
ジュディ・ガーランドの歌を聴きながら
一晩中トレーラーを走らせていた

俺は今鉄格子の中だ

マックのハッピーセットを求めて
トレーラーを停め、中に入ると
店中みんな、こんなきれいな花嫁見たことないって感じだった

ジェシー・ジェーンは狂ってるんだろうか
それとも
蝶々みたいなドレスで着飾った、まともな男なんだろうか

金を払ってから
そのショボい町の労働者の方を振り返った
ひとりが顔を真っ赤にして拳を握り締め
手に持ったコーラを俺の顔にぶちまけた

ジェシー・ジェーンは狂ってるんだろうか
それとも
ファッションショー会場を探してる、ごく普通の市民なんだろうか

それで俺は頭にきて
ワンダーブラに挟んでいたピストルを取り出し
奴を撃った。みんな撃ち殺した
そして便所の個室に隠れているところを捕まった

俺の刑期は10年以上あるいは終身刑だ
ひとつだけ教えてやろう
俺はいつかここで
誰かすごくいい女房をみつけるんだ

ジェシー・ジェーンは狂ってるんだろうか
それとも
蝶々みたいなドレスで着飾った、まともな男なんだろうか

ジェシー・ジェーンは狂ってるんだろうか
それとも
ネバーランドに向かうピーターパンなんだろうか

2010/11/23

「アリス・クーパー」 by ジョン・ライドン

本日、勤労感謝の日を記念して、ジョン・ライドン氏の「アリス・クーパー」("Alice Cooper" by John Lydon)全文を訳出し、ここに公開させていただきます。

http://www.johnlydon.com/jlbooks.html#coops

原文は 1999年に発売されたアリス・クーパー(Alice Cooper)の CD ボックスセット「The Life & Crimes of Alice Cooper」に同梱のブックレット用に書き下ろされたものですが、アリス・クーパーの魅力だけでなく、ジョニーおじさんの音楽や人生に対する考え方が真摯に述べられたきわめて重要な資料となっています。

せっかくの休日にオラが丸一日かけて訳したものなので、「勤労に感謝しようにも仕事がねえんだよ!」という方も「そういえば、セックス・ピストルズが登場した1976年のイギリスも、ちょうど今の日本のように仕事のない若者が街に溢れていたんだよなあ」などと思いを馳せながらお楽しみください。さもなきゃくたばっちまえ。


アリス・クーパーの曲の歌詞なら全部知っている。

実際、この俺にいわゆる「音楽キャリア」と呼べるようなものがあるとすれば、それはジュークボックスから流れる I'm Eighteen を口パクで演じたことから始まった。およそ音楽とはほど遠い行為がパンクの誕生ってわけだ。最初、マルコム・マクラーレンがバンドに入らないかと声をかけてきたときは、冗談を言っているとしか思えなかった。パブに呼び出されて他のメンバーたちに会った。閉店後の店で、奴らは俺に歌真似でも何でもいいから歌ってみろと言ってきた。真似くらいならできるが、まともに歌えるわけがない。ジュークボックスにある曲の中で唯一何とかできそうだったのが I'm Eighteen だった。曲に合わせてベリーダンサーみたいにクネクネもだえまくるのを見て、マルコムは「よし、こいつしかいない!」と思ったらしい。こうして俺は職にありつき、華麗なるキャリアを歩み出したというわけだ。

俺はセックス・ピストルズを「音楽芸人」とか「悪意に満ちた茶番劇」と呼んでいる。こと俺に関して言えば、明らかにアリス・クーパーの影響を受けていて、もちろんそのことをものすごく誇りに思う。アリスの影響がなければ、若くしてあんな特別なチャンスをモノにすることはできなかった。彼は昔の俺に進むべき方向を示してくれる道しるべだった。

Killer は間違いなくロック史上最高のアルバムだ。もちろんその前には超名作アルバム Love It To Death もある。この2枚は当時の俺みたいな悩める子羊にはヘビー過ぎる代物だった。俺はロック・ミュージックを作ろうと思ったことは一度だってない。なぜなら最高のロックはアリスの手によって作られ、レコードとして既に存在しているんだから。ピストルズでまったく違うアプローチを取ったのはそのためだ。自分がすばらしいと思ったからこそ、そのイミテーションを自分で作りたくはなかった。すばらしい人に影響を受けたのなら、絶対にその模倣をすべきじゃない。

たとえば Luney Tune は俺が長年愛聴している大好きな曲だ。地獄のようにぞっとする気味の悪い曲だ。だが今どきのゴス・ロックの連中はカスだ。アリスがやっていたことに比べたら単なるまがい物。未熟でバランス感覚の欠如した三流コピーだ。

ひとつの真にオリジナルな作品に対して、その安っぽいコピー品が10は出てくる。なさけないのは、人々が注意を払うのはいつもコピー品の方だってことだ。連中は何か新しいものが生み出される過程を、自分で見きわめようという気がないらしい。最悪だ。歴史的な観点を放棄してしまうと、すべてのものに意味がなくなってしまう。俺はあらゆる種類、あらゆるジャンルの音楽に興味を持ち、その中にオリジナルなものを探す。オリジナリティこそ最も重要だ。そしてアリス・クーパーほどオリジナルなものは空前絶後、ほかにない。

数年前、俺はアリス・クーパーのファンクラブに加入した。すると箱いっぱいのニワトリの羽が送られてきた。すばらしい!「おい、これ、アリスが殺したニワトリの羽じゃん」これ以上悪趣味で愉快なものがほかにあるか?

アリスがいれば、ドラキュラなんて用無しだ。ドラキュラはくそ真面目すぎる。一方アリスの I Love the Dead は最高のユーモアに溢れた曲だ。昔、シドのアコースティック・ギター、俺のバイオリンのコンビで地下鉄駅へ行ってよく演奏した。I Love the Dead をくり返し、くり返し、何時間も何時間も歌い続けるんだ。もちろんシドはギターを弾けないし、俺もバイオリンなんか弾けるわけない。でも最高に楽しかったよ。どうかお願いだから歌を止めてくれって、みんな金を出すんだ。

こうしたアリスの曲はどれも時代を越えた存在だ。聴く者を開放する。時代のファッションとは無縁。すべてを超越している。しかもその曲は常にシンプルで、短くて、辛辣で、快楽に満ちていて、もったいぶった言いまわしは一切ない。核心をストレートに突いている。アリス自身そのことを理解していて、常にそれをやってのける。いつも新しくて下品な切り口がある。どの作品も下品さの新境地を切り開いている。あんたも、もうちょっとパンツのゴムを緩めたほうがいい。

野郎ばかりのバンドの名前をアリス・クーパーにするというのは、お堅い人々に嫌悪感を抱かせるなかなか魅力的なアイデアだ。彼はそうやって世界を修復不能な混沌の渦に突き落とした。むさ苦しい男たちが皮のコルセットと奇抜な化粧を身に纏い、ティーンエイジャーの悩みを歌う。これほど感動的なものがほかにあるか?イメージに左右されるのではなく、イメージを逆手にとって遊ぶ。それこそユーモアというものだ。

アリスは素晴しい見世物ショーの座長でもある。完璧なアンチヒーローだ。卓越した舞台センスで演じ、人々を虜にする。誰ひとりがっかりさせたりしない。ドレスを着た服装倒錯のマッチョのイメージは、人の興味を引き、一石二鳥の役割を果たす。

アリスには主張があり、オリジナリティと傲慢さ、大胆さがある。そして恐れずに行動する勇敢さを備えている。20年経って、すっかり人畜無害になったゴス-服装倒錯ファッションで着飾るのとはまるで意味が違う。小手先でアリスの真似するのは簡単だが、明らかに間違いだ。そこには何ひとつ危険なものはない。真似っ子連中のやることといえば、おもしろくもない麻薬がらみの長口舌ををたれるだけだ。アリス・クーパーの曲には、麻薬に頼るようなメンタリティを後押しするものは一曲たりともない。

アリス・クーパーは自己憐憫とは無縁だ。これっぽちも関係ない。天罰が下るときはそれを受け入れる。アリス・クーパーほどパワフルに、ありありとしたイメージでキャラクターを演じられるものはいない。すべてが完璧で、すべてのキャラクターが弱さを持っている。にもかかわらず、自己憐憫はない。「俺は間違いを犯した。そして今、その報いを受ける」

アリス・クーパーには「老い」を思わせる要素もない。生きる喜びだけがある。過ち、欠点など、人生のすべての醜い面はユーモアをもって描き出される。

アリス・クーパーは縄につながれた狂犬をイメージさせる。ワイルドな狂気が、擦り切れてボロボロな縄によってかろうじて繋ぎ止められている様だ。アリスにふわさしいイメージだと思う。制約は逆にパワーをもたらす。社会は個性を持った人間に対し、馬鹿げたルールを押し付け、一方で彼らはその暗黒面を照らし出す。奇妙な話だが、我々には束縛が必要なんだ。四方を強固な壁に囲まれてこそ、カオスはその力を発揮する。

アリスの功績は表面的なレベルでだけ語られるべきものではない。多くの人がその間違いを犯している。もっと深いところに数多くのものがある。アリスの曲のいくつかは大ヒットしたが、多くの人は曲に身を委ねようとしない。だからアリスを見誤る。

アリス・クーパーをロックンロールのどこに位置付けるかって?はるか空の彼方に決まってるだろ。俺はどれだけアリスを尊敬しているか、それを秘密にしようとしたことはない。俺がアリス・クーパーのファンであることを、らしくないと思う奴もいるらしい。ああ、そうかい。

セックス・ピストルズはリアルで、アリス・クーパーはそうじゃないだって?冗談じゃない。俺は今もアリス・クーパーを聴き続けている。アリス・クーパーみたいな奴こそが、世界をマシな場所にしてくれるんだ。

アリス・クーパー... すごい奴だよ。

2010/11/20

Google と「ジム・モリソンのお告げ」

Google のエリック・シュミットがアリス・クーパーをチューリッヒのオフィスに招き、社をあげての歓迎コスプレ・パーティーを開催したとのニュース。

エリック・シュミットはアリスの熱烈なファンらしい。見直したぞ、エリック。

つまり昔のエリックはこんなルックスのコンピュータ・オタクで、しかもアリス・ファンだったということになる。リアル「ウェインズ・ワールド(Wayne's World)」じゃん。

さては Google に関わるようになったのも「ジム・モリソンのお告げ」だな。

2004/09/15

アリス・クーパーまつり実施中

ムラコーは Python 使ってるくせに アリス・クーパー の曲ろくに知らないんです。日本の将来を担う若者がそうゆうことじゃいけないので The Best Of Alice Cooper を買ってきて1週間くらい流し続けることにしました。

ちなみに ジョン・ライドンの業界デビュー曲は I'm Eighteen でアリスの曲全部歌える みたいです。

2004/08/04

オリンピックが始まる前にひとこと釘を刺しておきたい

ギリシャ、アテネといえばふつう問答無用でナナ・ムスクーリでしょ。

イーノはもちろんいいよ。ネナ・チェリーもいいよ。アリス・クーパーが入ってるのは素晴らしい快挙だと思うよ。でもなんでナナが入っていないのさ!しかもなんで、選りに選って「愛・地球博」のほうに入ってんのよ!!あ、キャプテン・アンド・テニールも入ってる。