2011/05/28

カーズ - ゲイリー・ニューマン

Gary Numan by Capital M
Gary Numan, a photo by Capital M on Flickr.

先日ウィキペディアを見ていて、ゲイリー・ニューマン(Gary Numan)の項目にたったこれだけしか書かれていないことに気づきました。アナログ・シンセサイザー音楽のパイオニアとして、クラフトワーク(Kraftwerk)なんかと一緒に再評価されているもんだとばかり思っていたのだけど、日本ではほとんど無視?個人的にはそれほど思い入れのあるミュージシャンじゃないんですが、もうちょっとちゃんと聴いてあげてよ、ゲイリー・ニューマン。

ゲイリー・ニューマンが登場したのは1978年です。シンセ入りのパンクバンドみたいな感じで登場したんですが、最初はパッとしませんでした。ところがサウンドの中心をギターからシンセサイザーに移した2枚目のアルバム「Replicas」からのシングル「Are 'Friends' Electric?」がイギリスでナンバーワンヒットとなり、続いてゲイリー・ニューマン名義で出したアルバム「The Pleasure Principle」は世界的なヒットとなりました。

日本でレコードが発売されたのは1980年になってからだったと思いますが、やはり「The Pleasure Principle」はたくさん売れました。実際に何枚売れたのかは知りませんが、その後数年、中古レコード屋さんで「在庫過剰のため引き取りできないレコード」の筆頭に上がっていたのがゲイリー・ニューマンでした。

アナログ・シンセサイザーのサウンドが当時そんなに珍しかったかというと、そんなことはありません。もうとっくにシンセサイザーそのものは楽器としての普及期に入っていたのですが、ゲイリー・ニューマンの場合その使い方が斬新だったのです。人力で演奏される単調なドラム、ベースの上にどこか「もわっと」としたシンセサイザーのサウンドが覆います。メロディーは単調で同じフレーズが執拗に繰り返されます。さらに天然ディレイのかかったような彼の声が乗っかり、全体が明るいような暗いようなぼわっとしたもわっとした音の世界が展開されます。聴いているとすごく心地良いような、でもどこか不安な感じのする、奇妙なバランスで成り立っているサウンドです。

最近すっかりインダストリアル兄貴としての地位を確立したトレント・レズナー(Trent Reznor)も昔からゲイリー・ニューマンが大好きで、2009年のナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)最終ツアーではゲストに招いて一緒にステージに立っています。

今回紹介するのはそのときのビデオで、昔の大ヒット曲「カーズ(Cars)」を演ってます。注目したいのはゲイリー・ニューマンのステージ・アクションです。マイクを両手で押さえてのしかかるように歌う様はまるでトレント・レズナーみたいです。一方のレズナー兄貴は後ろで演奏、曲の間奏部分ではタンバリンを振っているのですが、どう見ても筋トレにしか見えません。

車の中にいれば
最高に安全
すべてのドアをロックする
それが車の中で
生き延びる唯一の方法

車の中にいても
ラジオだけは受信できる
きみの声が聴ける
だから車の中で
何日もこのままで平気

車の中にいると
頭の中のイメージはすぐに消えてしまう
だからお願い
きみ自身がここに来てよ
車のドアを開けるから

車の中で
今夜ここを出発しようかと考えた
とはいえ車の中で考えることは
なにもかも
間違っているみたいだけど