2011/10/22

U.S.L.S. 1 - パブリック・イメージ・リミテッド

Lockerbie Memorial by Mr Ush
Lockerbie Memorial, a photo by Mr Ush on Flickr.

1988年12月21日夜、ニューヨークへ向けてヒースロー空港を飛び立ったパンアメリカン航空103便がスコットランドのロッカビー(Lockerbie)上空を飛行中に貨物室の荷物に隠されてていた爆弾が爆発、バラバラになった機体が住宅地に落下炎上し、ロッカビーの住人11名を含む270名が死亡する大惨事となりました。ジョン・ライドン(John Lydon)は妻のノーラと共にニューヨークへ行くためヒースロー空港からこの飛行機便に乗る予定だったのですが、この日に限ってなぜかノーラが荷造りに手間取って乗り遅れたため、幸いにも事故を逃れています

事件はリビアが関与したテロと言われており、2001年に容疑者の一人がスコットランドで終身刑に処せられ服役、2003年にはリビアが国としての責任を一部認めて遺族に対する補償金の支払いに応じています。

リビアという国は人口570万人くらいで北海道と変わらない規模なんですが、石油資源を持っているため数字上はアフリカ大陸の中で1人当たりの所得が最も高い国です。16世紀以降長らくヨーロッパ、イタリアの支配下にあったのですが、第二次世界大戦後に独立を果たしました。石油採掘が本格化したのも独立後のことです。

石油を掘るには莫大な設備投資、資金を必要です。このため当時の国王らは資金を求めて親欧米路線を取ったのですが、その利益を王家一族で独占したため国民の間では反王家、反欧米、反キリスト教感情が高まる結果となりました。そこに登場したのがカダフィです。1969年、カダフィの率いる軍がクーデターを起こして政権奪取に成功しました。当時の彼は若干27歳、イギリスへの留学経験もあるエリート将校でした。つまりこの時点の彼は、王家と欧米による圧政に敢然と反旗を翻し、無血革命を達成した若きヒーローだったわけです。

その後彼はアフリカにおける反欧米、汎アラブ(反イスラエル)の急先鋒となり欧米諸国と対立します。反イスラエルのテロ、ゲリラ勢力を支援しているという理由により、リビアは度々空爆や経済制裁にさらされることになります。先のパンナム機爆破事件は、アメリカがリビアを空爆したことに対する報復テロだと言われています。そんな中カダフィは、国内政治には直接民主制という高邁な理想を掲げる一方で、独裁体制を強固なものにしていったようです。

とここまでは表向きの話ですが、いくら石油がたくさんあったって買ってくれる国がなければリビアの利益は生まれません。カダフィとアメリカやイギリスをはじめ欧米各国との間にたくさんの裏取引があったと言われてます。カダフィの独裁体制がここまで強固なものになったのは、表向きは敵対関係にある欧米各国がカダフィを支持していたためというわけです。欧米からすれば、カダフィとうまくやれば利益も得られるし、反イスラエル勢力への牽制も効くので一石二鳥です。空爆やテロは本気でやっているわけでなく、お互いの国民感情を抑えるためのデモンストレーションというわけです。実際、パンナム機事件は270名の犠牲者を生んだ大犯罪にもかかわらず、なぜか犯人は2009年に病気で余命僅かという理由により突然釈放されリビアに帰国しています(そして2011年現在も存命)。またカダフィが今回、裁判にかけられることもなく殺されてしまったのはなぜでしょう?

カダフィの住む邸宅が空爆されることはなかったし、大統領が乗る旅客機エアフォースワンも爆破されませんでした。犠牲になったのはいつも何も知らない一般の人たちです。正義感に燃えていたはずの若者がやがて独裁者や裏取引をする政治家になってしまうのはなぜでしょう?何を間違えたのでしょう?何かそうなってしまう力が働いているんでしょうか?わたしたちはどうしたらいいんでしょう?

そんなこと俺に聞くなよ。自分の頭で考えな。

U.S.L.S. 1
またの名を US エアフォースワン
無用の存在

砂漠の夜空に月が輝くころ
澄んだ陽光の裏の顔、隠されていた人格が姿を現わし
夜が明けぬうちに騒ぎを起こす

やつらは自らの計画を遂行する
自分ですべきことを持たないやつのために、良からぬ仕事を作り出す
厳重に閉じ込めていたやつが脱走する

やつらは自分の利益のためなら骨身を惜しまない

U.S.L.S. 1
無用の存在

雲が何もない空を引き裂き
この航空機に挨拶をする
貨物室に仕掛けられた爆弾

やつらは自分の利益のためなら骨身を惜しまない

U.S.L.S. 1
無用の存在