2001年9月11日の夜、仕事から帰って家のテレビをつけると、もうもうと煙を吹き上げる高層ビルの様子が映っていました。なんだこりゃ?と思って見ていたら、その後すぐに飛行機のようなものが飛んできて、ビルにぶつかり爆発しました。ああ、これ前に見たやつだって思いました。PiL の「シアトル(Seattle)」のビデオで見たやつだって。
1986年春、しばらくライヴ活動から遠ざかっていたジョン・ライドン(John Lydon)は、ジョン・マッギーオ(John McGeoch)、アラン・ディアス(Allan Dias)、ルー・エドモンズ(Lu Edmonds)、ブルース・スミス(Bruce Smith)と共に、ヨーロッパと北米で本格的なツアーを開始しました。このメンバーで翌年作成されたのがアルバム「Happy?」で、「シアトル」はこのアルバムからのシングルです。
皮肉なことに「Album」のレコーディングを終えると、またバンドでやりたくなったんだ。なぜかって?そもそもひとりになったのは、ゴタゴタから逃れて、状況を見直したかったからなんだ。そうやって考えた結果、俺のバックグラウンドである、ライヴ・パフォーマーとしての自分に戻るべきだとわかった。ソロ・アーティストにはなりたくなかった。グループとして活動するのが好きなんだ。
普通はやらないんだが、「シアトル(Seattle)」だけはツアーの最中にレコーディングしたんだ。ツアー中に数日、時間を確保できた場所がシアトルだってわけさ。実によく考えられた話だろ?
(「Plastic Box」ライナーノーツ)
1980年代、アメリカの経済は低迷していました。その低迷生活が生んだ音楽がグランジなのですが、一方でマイクロソフトに代表されるグローバル企業を数多く生み出したのも、このシアトルという町で、当時既にその萌芽が始まっていました。
ジョン・ライドンがそんなことをはっきり意識していたとは思いませんが、何か大きな力が動き出している気配と、それに対する嫌悪感がこの歌を生み出したに違いありません。
キラキラ輝くようなジョン・マッギーオのギターが印象的なこの曲ですが、その背後をルー・エドモンズのノイジーなサズがしっかりサポートしている様子が、今聴くとはっきりわかるはずです。
この古い町の風景が気に入らない
上ったものは、いずれ地に落ちる
人気(ひとけ)のない競技場には、個性が置き忘れられる俺の前から消えうせろ
一体これは何なんだ射程距離の中に追い込まれて、あらゆる能力が品定めされる
代わり映えのしない新しい競技場で、思考も身体も縛り上げられる
連中が理解できないことは、当たり前のことでも無視される
まるで、何ごともなかったように無視される
そして、何ひとつ変わらない一体これは何なんだ
一体これは何なんだ
一体これは何なんだ
俺の前から消えうせろ
俺の前から消えうせろ
俺の前から消えうせろ
起きろ、出ていけ、俺の前から消えうせろさあ、何か言ってみな
秘密の合図に訳知り顔
いい天気の日には帳簿をごまかす
この人生がもたらす悲惨な状況は
喜びとともに受け入れようこの古い町の風景が気に入らない
上ったものは、いずれ地に落ちる
人気(ひとけ)のない競技場には、個性が置き忘れられる一体これは何なんだ
一体これは何なんだ
一体これは何なんだ
俺の前から消えうせろ大邸宅とバリケードが建ち並ぶ町に
脅威が確実に忍び寄る大邸宅とバリケードが建ち並ぶ町に
脅威が確実に忍び寄る