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Vini Reilly, a photo by Eifion on Flickr. |
ドルッティ・コラム(The Durutti Column)のヴィニ・ライリー(Vini Reilly)が金銭的な危機に瀕しており、彼を助けるための寄付を募る記事が昨日Facebook に投稿され、日本の Facebook や Twitter なんかでもちらほら話題になっています。
ホントはあまり気がすすまないんですが、以前書いた「ヴィニ・ライリーと貧困問題」がシャレにならなくなってきてるのにも関わらず、ヴィニの情報を求めて検索エンジンから飛んでくる人がたくさんいるみたいなので、彼の近況についてネットを通じて私が把握している限りのことを書くことにします。
ヴィニの甥にあたる Matt Reilly さんが昨日 Facebook に投稿したのは以下の内容です。
ヴィニへの援助を...
以前もこの(Facebook)ページに書いた通り、私の叔父、ザ・ドルッティ・コラムのヴィニ・ライリーは金銭的な危機に瀕しており、家賃や食料、電気代など基本的な生活費の支払いにさえ苦労しています。親切にもヴィニに寄付をしてくれる人たちのためにいい方法がないか、私たちは探してきました。
ヴィニはインターネットにアクセスする手段を持っていないため、寄付は一旦私の PayPal アカウントに入金してもらい、それを私があらためて彼の銀行口座に振り込むというのがその方法です。最初は Paypal の「寄付(Donation)」ボタンを設置するのが良いのではないかと思ってジョン・クーパー(John Cooper)に調べてもらったのですが、たとえ個人による寄付であっても Paypal の手数料が発生することが分かりました。結局、私の Paypal アカウントに私のメールアドレス mattreilly@hotmail.co.uk を使って振り込んでもらい、個人間の送金としてお金を受け取るのが(余計な手数料が発生しない)最善の方法だと判断しました。
銀行口座やクレジットカードを使って振り込んでもらった場合、振り込み手数料がかかってしまうので、それよりは良い方法だと思います。しかしそれでもみなさんからいただいた金額の5パーセントほどを手数料として Paypal に支払わなければならないようです。
この方法を理解し、寄付をしていただける方は PayPal のリンクをクリックしてください。
寄付に対しては金額の多寡を問わず、心から感謝いたします。
https://www.facebook.com/groups/58125881422/permalink/10151156944541423/
ここで念の為注意、上記訳文からはあえて PayPal 送金ページへのリンクをはずしてあります。寄付をしたいという人は必ず Facebook の原文を確認した上で、自分自身の責任において行ってください。
さて、これだけじゃヴィニ・ライリーがなぜそんなにお金に困っているのか分からない人が大半だと思います。2010年の9月、彼は脳梗塞の発作に襲われ、その後遺症により左手が自由に動かなくなってしまったのです。そのときの様子は2012年2月のインタビューでヴィニ自身が語っています。
その日の朝目覚めると、彼は自分の身体の異変に気付きました。言葉がちゃんと話せなくなっていたのです。彼はすぐに NHS(National Health Service) の担当医師に電話しました。電話でヴィニの様子を知った医師は脳梗塞に間違いないと判断します。救急車を手配する一方でヴィニに「一階へ下りて玄関を開けられるか?」と尋ねました。ヴィニが這ったままどうにか玄関へ辿り着いたときには既に救急隊員が到着していました。救急車の中でヴィニは二度目の発作に襲われたのですが、医師が的確な指示を出していたたため一命を取り留めることができたのです。診断の結果、心臓や肺には影響がなく、動脈血栓も見つからなかったのですが、神経の損傷によりヴィニは左手が自由に動かせなくなっていました。
もうギターを弾いたり歌ったりはできないかもしれないと聞かされたときは絶望的な気分になったよ。それまでは自殺する人間になんて共感できなかった。残された人にとてつもない苦しみを残すだけだからね。だけどそのときは、もう死んでしまいたいって思ったよ。ぼくは音楽のために生きてきたんだ。ぼくの生きる意味は音楽にあるんだ。なのにそれがもう終わってしまったように思えたんだ。
左手はまったく感覚がなかった。ギターの弦にさわっても分からないほどだった。リハビリの一環としてずっとギターは弾き続けていたんだけど、しばらくしても感覚は戻らなかった。
その上声もうまく発せなくなってしまった。ときに話すことさえ困難になってイライラすることもあるんだ。傍から見れば何か変だなってすぐに気付くくらいなんだよ。
ぼくは今、身体障害者に分類される身だけど、たくさんの人たちがそばにいてくれて、ぼくを金銭的、肉体的な面で助けてくれている。同じ病気で苦しむほかの人たちと同様、日が経つに連れて現状を受け入れられるようになってきたんだ。今はもう死にたいなんて思っちゃいないよ。
もうヴィニは以前と同じようにはギターを弾くことができません。それでも周囲の人たちや友人に支えられてニューアルバム「Chronicle」を完成させ、2011年の4月にはアルバムのプレ・リリース・ギグをマンチェスターとヨークで開催するまでに回復しました。このときのライヴの様子が YouTube にアップされているのですが、自分のイメージ通りの演奏ができないヴィニの苛立ちが伝わってくるようで、なかなか見ていて辛いものがあります。
ドゥルッティ・コラムとしての公式ステージは現時点ではこれが最後なのですが、ほかにもリハビリの一環として友人のカバー・バンドにも参加していて、2012年1月にパブで「Jumpin' Jack Flash」を演奏している姿が YouTube にアップされています。これを見る限りはずいぶん回復してきているように見えます。
このカバー・バンドでの活動はぼくにとってきわめて大切なリハビリ活動なんだ。希望を失いかけてたのをこのバンドが救ってくれたんだよ。ぼくの希望の灯なんだ。ひとりで演奏して歌うんじゃなく、バンドのメンバーとして演奏する楽しさを思い出させてくれたんだ。すばらしいバンドの一員として活動すること、それがすごく重要なんだよ。
ただしその後も病状は一進一退を繰り返しているようで、2012年の春には三度目の発作に襲われ、再びギターを弾けない状態に陥ったという報せが入っています。
ヴィニがこのような状態にあるため、Twitter の Durutti Column アカウントや Facebook のファンページは彼の甥にあたる Matt Reilly さんが運営しています。冒頭の内容はヴィニの窮状を少しでも改善したいと思った彼が投稿したものです。
PayPal の個人間での送金には(おそらくマネー・ロンダリングを防止するための各国の法律がからみ)色々制約があるのですが、試してみたところ「日本→イギリス」の送金は問題なくできるようです。ただこのやり方はあまり良いとは思えないなあ。
当然寄付でヴィニの生活をずっと賄っていくことなんてできません。また
PayPal で寄付(Donation)扱いにすることで発生する手数料を回避するために個人間の送金という手段を取っているんですが、これがトラブルの元になる可能性もあります。特定個人に一時的な送金が集中すれば、運営してる PayPal は当然調べるはずです。そこでアカウントが凍結されたりすると、せっかくの厚意を無駄にしてしまうことにもなりかねません。さらに寄付を騙ったネット上の詐欺というのはたくさんありますから、そういうものに利用されないとも限りません。ヴィニの音楽活動を支援するなら、時間や手数料がかかったとしても、もうちょっとちゃんとした形にすべきだと思います。
ということで、今すぐヴィニに支援をしたいという人はこうしたリスクを承知の上、自らの判断と責任の元で行ってください。PayPal にアカウントを持ってない人は無理しないで CD やダウンロード販売でドゥルッティ・コラムの曲を買った方が良いと思います。その方がヴィニ自身の発奮材料にもなると思うし。
それから、まだはっきりとした日程は発表されていませんが、ドゥルッティ・コラムのニューアルバム「Chronicle」はもうすぐ発売にされるそうです。
(2013/01/05追記) 「ヴィニ・ライリーの病状と彼への寄付について」の続報があります。