The Raincoats, a photo by Jason Persse on Flickr. |
ウェストボーン・グローブをあなたが歩いてるところを見かけた。手を上げていることに気づいた。空に向かって、うんと高く上げていた。でもそれはわたしに手を振っていたんじゃなくて、黒い大型のタクシーを停めるためだった。そしてあなたは素早く乗りこんで行ってしまった。
ねえ、わかってる?わたしは木なんかじゃないのよ。わたしの名前はBirchだけど、樺の木なんかじゃないの。なのにあなたはわたしを無視する。
それでもかまわないのだけど、やっぱりわたしは考えはじめてしまう。わたしたちが年を取って白髪頭になっても、きっとわたしのことを見て見ぬふりをするんだわ。きっとあの日みたいにふるまうのよ。
いつかある日、わたしたちは、それぞれ孫たちと一緒に公園のベンチに腰かけるの。そしたらあなたは「こっちにおいで!」って大きな声を出すんだわ。でも呼んでるのはわたしのことじゃなくて、孫のジミーかジェニーかジャックのこと。きっとわたしたちのどちらかは、心臓を悪くしてるわね。
「おじいちゃん、おじいちゃん!どうしたの?早く動物園へ行こうよ!」
「静かにしろ、ジミー!だまってわしの手を握って歩くんだ!」それでもかまわないのだけど、やっぱりわたしは考えはじめてしまう。わたしたちが年を取って白髪頭になっても、きっとわたしのことを見て見ぬふりをするんだわ。きっとあの日みたいにふるまうのよ。
そんなのわたしの勝手な思い込みだって、きっとあなたは言うわね。妄想体質だとか何とか。でもあなたに会ってからもう1年以上たつのよ!もうこれ以上涙をかくせないの。
あなたは冷たくふるまって、去って行った。でもわたしは本当にあなたのことが大好きだったのよ!意地悪しないでよ!意地悪しないで!ねえ、わたしに意地悪しないでってば!
それでもかまわないのだけど、やっぱりわたしは考えはじめてしまう。わたしたちが年を取って白髪頭になっても、きっとわたしのことを見て見ぬふりをするんだわ。きっとあの日みたいにふるまうのよ。
さようなら、愛しい人。さようなら。
レインコーツ(The Raincoats)のおばちゃんたちは現在北米ツアーの真っ最中です。まあツアーと言っても7ヶ所だけなんですけどね。それでも1982年以来、スポットでのフェス出演などを除けば実に29年ぶりの北米ツアーです。あちこちのブログやニュースのライブ評で「すんばらしい!」という声が上がってます。
ライブで必ず演奏される「Don't Be Mean」は、1996年にリリースされた4枚目のアルバム「Looking in the Shadows」に収録されているんですが、けしからんことにこのアルバム廃盤なんですよ。ほかの3枚のアルバムは権利を取り戻して、自分たちのレーベル We ThRee からリリースしてるんですが、「Looking in the Shadows」だけは大手ゲフィン・レコードから出したことがアダとなってるのか、再発できないようです。ただし同じ曲の別テイクがEP「Extended Play」に収録されており、こちらは入手可能です。
この曲はジーナ・バーチ(Gina Birch)の作品で、彼女がリード・ヴォーカルを取っています。彼女が40歳の頃に作ったブライアン・フェリーばりのパラノイア・ラブ・ソングです。ジーナが50代半ばになった今もこの曲を大きな声で歌い、多くの人がそれに感動しているって事実、とても素晴らしいことだと思います。これこそパンクです。