2010/12/07

アヴァロン島から The Bogus Man が帰ってきた (オリンピア - ブライアン・フェリー)

http://en.wikipedia.org/wiki/File:Bryan_Ferry_-_Olympia.jpg

一般にロキシー・ミュージック(Roxy Music)/ブライアン・フェリー(Bryan Ferry)の代表作と言えば「アヴァロン(Avalon)」ということになっていますが、そう主張するみなさんに対しては「本当にそうか?ロキシーやフェリーのアルバム、ほかにも聴いてそう言ってのか?ホントはアヴァロンとボーイズ・アンド・ガールズ(Boysand Girls)と東京ジョー(Tokyo Joe)くらいしか聴いたことないんとちゃうか?」と問いただしたいと思います。

「ブライアン・フェリーを聴き続けて35年、1977年のソロ来日公演はヤングミュージックショーで見ました」というオラにとって「アヴァロン」は、あまり高く評価できないアルバムです。むしろ「ブライアン・フェリーが伝説の島アヴァロンへ行ったっきり、帰ってこなくなってしまった」因縁の作品です。

「アヴァロン」の発表は1982年、その後の20年ほどは、ずっとアルバムが出るたび、律儀に買い続けてきたものの、フェリーの声が霧の向こうのアヴァロン島から流れてくるみたいで、オラは長いこと、とても寂しい思いをしてきました。

変化が訪れたのは2001年のロキシー再結成あたりからです。2002年発表の「フランティック(Frantic)」は、冒頭の「It's All Over Now, Baby Blue」を聴いた瞬間「オラのブライアン・フェリーが帰ってきた!」と確信し、思わず泣いてしまいました。

聞くところによると、ブライアン・フェリーは「アヴァロン」の頃、幼なじみの女性と結婚し、長く連れ添い子供も何人かもうけたにもかかわらず、「フランティック」発表後に別れてしまったそうです。原因はこれですね。間違いありません。元奥さんには大変申し訳ありませんが、オラはうれしいです。

実際のところ「フランティック」では、半分くらい戻ってきているものの、まだ片足はアヴァロンに置いたままという感じでした。続く「ディラネスク(Dylanesque)」に期待したのですが、これもいまひとつ本調子という感じではありませんでした。

ブライアン・フェリー、もうダメなのか。もはやこれまでかと、なかば諦めつつ新作の「オリンピア(Olympia)」を聴いたのですが、すごい、これ、予想に反して大傑作。1曲目の「You Can Dance」はイントロは「アヴァロン」からのサンプリングですが、そこから先のダークな展開が今までと違う。やった、帰ってきた。本当にアヴァロン島から The Bogus Man が帰ってきた!

「You Can Dance」のビデオは、「マニフェスト(Manifesto)」のジャケットからマネキンさんたちが抜け出して踊っているような映像で、フェリーの脇でお稚児さんのようにギターを弾いているのがオリバー・トンプソン(Oliver Thompson)さん、「ディラネスク」の頃から参加している兄ちゃんです。なかなか淫靡な音を出します。フェリー・バンド以前はこれといった活動をしてなかったみたいなんですけど、いったいどこで見つけてきたんでしょう?

この音、この声、そしてダンスフロアの照明が作り出す光と陰の中で経験したはずのない記憶がよみがえってきます。

去年マリエンバートでお会いしましたよね。