God Save The Queen, a photo by mirwav on Flickr. |
今年のイギリスは先日取り上げたタイタニック号100年やオリンピックなど、海外から観光客を呼び込める派手なイベントのネタに事欠きません。そしてもうひとつ、オリンピックの前に開催される大きなイベントがエリザベス女王の即位60周年記念式典ダイヤモンド・ジュビリーです。
これに便乗してレコード会社がセックス・ピストルズ(The Sex Pistols)のシングル「God Save The Queen」をジュビリーの週5月28日に再発することを決定しました。
「God Save The Queen」は35年前の1977年5月、やはり即位25周年記念のシルバー・ジュビリーの週に発売され、当時のイギリスで社会現象となるほどの大きな話題を集めたレコードです。ただしシングル・チャートでは2位にとどまったことで、王室関係者の圧力でチャートが操作されのではないかという陰謀説が流れたりしました。
今回のキャンペーンは再発をきっかけに一部のファンが Facebook などで呼びかけている「今度こそ "God Save The Queen" をチャート1位に」というものなんですが、ジョニーおじさんのところへ問い合わせが殺到しているらしく、「くだらないキャンペーンで俺を煩わせるんじゃねえ!」という声明が急遽発表されました。
「God Save The Queen」を今度のジュビリーの週末にチャート1位にしようという筋書きやらキャンペーンやらへの関与は、謹しんでお断わりする。俺の考えたことじゃないし、そんなことをしたいとも思わない。
俺はセックス・ピストルズとしてやったことを誇りに思っているし、もちろんこれからもそうだ。だが今回のキャンペーンはむしろセックス・ピストルズがやってきたことを台無しにするものだ。あんなの俺がやりたいキャンペーンじゃない。
セックス・ピストルズのレコードを若い世代が手に入れられるようになること自体は嬉しく思う。だが一緒に繰り広げられるくだらないお祭り騒ぎに加担するのはごめんだ。俺は今、パブリック・イメージ・リミテッドとしての活動で忙しいんだ。
2012年4月17日 ジョン・ライドン
5月28日にはパブリック・イメージ・リミテッドの20年ぶりのニューアルバム「This is PiL」が発売されます。ジョニーおじさんが仲間と共に全精力を注ぎ込んでつくった作品です。今あなたが住む世界と、今のジョニーおじさん自身のことを歌った「今」のアルバムです。もしセックス・ピストルズやジョニー・ロットンという人に興味があるなら、まずこのアルバムを買うことをお勧めします。
一方「God Save The Queen」は35年前のレコードで、このレコードが当時持っていた強力な意味は、残念ながら既に失われてしまっています。ただし21歳だったジョニー・ロットンとその仲間たちが音に込めたエネルギーは、時代を越えて当時を知らない若者に何かを伝えてくれるかもしれません。もしお金に余裕があるなら、手元に一枚「God Save The Queen」を置いておいて損はありません。ジョニーおじさんも「俺たちに金を貢ぐのをためらうことはない」って言ってますから。