なんということでしょう。PiLのニューアルバムWhat the World Needs
Now...はトラブルの歌で幕を開けます。その名もDouble Trouble、あろうことか便所の配管トラブル、ウンコ飛び散り夫婦喧嘩ソングです。
ここに至った経過を見ず知らずの第三者の立場から簡単にご説明いたします。ジョン・ライドンは元祖パンク、Do It Yourselfの人ですから何でも自分でやります。ご飯作ったり、義理の孫のためにPTAの会合に出席したりと家のこともマメでして、トイレの配管一式まで自分でやってしまいます。だもんで、妻のノラは別のトイレの調子が悪くなったときもまたジョンが直してくれると思ってそのままにして置いたらそれが大惨事に...という次第です。
一応解説しておきますと、Double Troubleというのはシェイクスピア由来のフレーズです。マクベスに出てくる魔女たちがヒキガエルやトカゲ、毒草なんかを大きな鍋で煮込みながら歌う呪いの歌です。映画のハリー・ポッターにも出てきます。Double, Double, Toil and Trouble(次々とふりかかれ、苦難と厄災よ)って歌詞です。実際に聴いてみると納得いただけると思いますが、三歳児ならToilet Troubleって空耳するのも無理はありません。けどだからといって、還暦を目の前にした大の男がWhat the World Needs Now...と冠したアルバムの一曲目でそれを力いっぱい歌うかというと、歌うんです。パンクですから。
彼らは活動の拠点をイギリスに移し、1974年にアルバム「Kimono My House」を発表しました。これが大ヒット、一躍彼らは大人気スター・バンドとなります。イギリスの子どもたちの方が、アメリカよりずっと孤独を感じていたのだと思います。以来、彼らはイギリス、ヨーロッパを中心に活動を続けてきました。「Kimono My House」は不朽の名作として、今も聴き継がれています。
クリスマスといえば欧米の伝統的家庭では家族が集まって過す楽しい日です。でも都市というのは、家族を持たない、あるいは一緒に過ごせない人たちをたくさん生み出す場所です。そんなクリスマスの光景を歌ったのが「Thank God It's Not Christmas」という名曲です。「Kimono My House」に収録されています。
つい先日、ロンドンのBarbicanでアルバム発売40年を記念して、フルオーケストラと一緒に「Kimono My House」全曲を演奏するコンサートが開催されました。40年来のファンがたくさん集まって大盛況でした。同じ形式のコンサートは、最近やっとスパークスに共感できるようになったアメリカでも来年2月に予定されています。
このファースト・ソロ・アルバムをリリースした後、10インチ・シングルの「Searching for Heaven」も出したんだけど、その後でRSOが潰れてしまいレコード会社との契約がなくなってしまったの。ニューカッスルの家を出てロンドンに3ヶ月住んで、その後ロバートと一緒にリバプールのトックテスへ引っ越したんだけど、その1週間後に暴動が起きた。その頃色々なゴタゴタも抱えていて、家に帰ることもできなかった。音楽の世界から逃げ出したわたしはもう二度とカムバックできないんじゃないかと感じてた。わたしは歌がうまいわけじゃないし、もうおしまい、もうこれ以上続けたくない。次のレコード会社との契約も望めなかったから、音楽の世界に背を向けようとした。
あとね、Twitterなどで「なんだ、初期の曲はやらなかったのかあ」みたいなのをよく見かけますが、ケイト・ブッシュは「今なお前進し続ける常識はずれのアーティスト」です。ケイトは「今が」全盛期です。まだ聴いてない方は最近の三作「Aerial」、「Director's Cut」、「50 Words for Snow」を聴くことを強くお勧めします。
コンサートの1曲目は「Lily」です。アルバム「The Red Shoes」のバージョンしか知らない人も多いと思いますが、近作「Director's Cut」ではこのように変貌を遂げています。このテンションで始まるんだよ。びっくりするよ。
タイトルはよくある釣りなのであわてないように。ジョン・ライドンの「No
Irish, No Blacks, No Dogs(邦題: Still A Punk - ジョン・ライドン自伝)」、書いたのはジョン・ライドン本人じゃなく別の作家ですが、ゴーストじゃなくて表紙にちゃんと名前が書かれています(上の写真)。ジョン・ライドンや周囲の人たちに取材をしてあの本を書いたのはキース/ケント・ジマーマン兄弟です。
あと何だったかな。そうだ、ジョン・ライドンはホンモノの自伝をこの10月に出します。今回はちゃんとautobiographyって言ってるので本人が書いてることは間違いありません。ただしひとりじゃ無理なので、Andrew Perryって音楽ジャーナリストとの共著になるって正直に言ってます。Amazon UKにはもう載ってます。タイトルは「Anger is an Energy: My Life Uncensored」。