2012/03/25

ハイム(Haim)のデビュー EP「Forever」

本日ご紹介するのは、つい先日デビュー EP「Forever」をリリースしたばかりの LA 出身バンド、ハイム(Haim)です。エスティ(Este Haim 24)、ダニエル(Danielle Haim 22)、アラナ(Alana Haim 19)のハイム家三姉妹によるバンドです。なんだ、また姉妹バンドかよと思われるかもしれませんが、仕方ないでしょう、今家族バンドの時代が来てるんです。

Haim としてのライヴ活動は4年ほど前からやっていたようですが、スタジオ音源をリリースするのは今回が初めてです。このデビュー EP、実はレコード会社からの発売ではなく自主制作したもので、バンドの Web サイトで MP3 データを無料配布しています

(2012/07/16追記 上記 MP3 の無料配布は終了し、ダウンロード販売に切り替わりました。iTunes Store で購入できます。)

アマチュアの自主制作といっても最近は皆レベルが高いんですが、そんな中にあってもこの「Forever」はメロディー、ハーモニー、アレンジなどちょっとほかでは聴けないほどの完成度です。アルバムタイトル曲の「Forever」などは昔のブロンディー(Blondie)みたいな雰囲気が感じられます。

ブロンディーやスージー・クアトロ(Suzi Quatoro)などのヒット作を生み出したプロデューサーのマイク・チャップマン(Mike Chapman)、実は彼が3年ほど前にハイムに目を付け、一緒にレコーディングしていたことがあるんです。マイクが手がけた録音は残念ながらリリースされていませんが、そのときの経験がスタジオ技術や曲づくりに生きていることは間違いありません。

EP ではかっちりとしたポップな演奏を聴かせるハイムですが、打って変わってライヴではエモーショナルでワイルドな音を聴かせます。ビデオは EP には収録されていない「Let Me Go」という曲なんですが、これがめちゃカッコいいんですよ。ステージ左はキーボードとギター担当のアラナ、真ん中のギターがダニエル、右でベースを弾いてるのが長女のエスティです。パーカッションは全員が担当します。

真ん中のダニエルを見て「あれ?前にもどこかで見たような」と思った人がいるかもしれません。実は彼女、2010年のジュリアン・カサブランカス(Julian Casablancas)のツアーにパーカッション担当で参加、来日してるんです。ほかにもジェニー・ルイス(Jenny Lewis)などのツアーにも参加していて、YouTube を探すと色々出てきます。

(そのほかの Haim 関連情報、インタビューなど)

2012/03/18

BBC 6 Music 10周年記念の PiL ライヴ

UK - London - South Bank: Skate Pit under Queen Elizabeth Hall by wallyg
UK - London - South Bank: Skate Pit under Queen Elizabeth Hall, a photo by wallyg on Flickr.

ニューアルバム発売を前にして、PiL がライヴ活動を開始しました。第一弾は普通のコンサートじゃなくて、BBC ラジオ 6 Music 10周年記念のメイン・イベントとしてロンドンのクイーン・エリザベス・ホールで開催されたものです。つまりジョニーおじさんに「6 Music 10周年の顔」として白羽の矢が立ったわけです。英国放送協会 BBC の記念イベントでジョニー・ロットンが主役を努める、しかも場所はクイーン・エリザベス・ホールという、1976年には想像もつかなかった夢の組み合わせです。

思えば昨年7月、ニューアルバムレコーディング現場からの第一報が放送されたのも 6 Music でした。先日のニューアルバム発売決定も 6 Music でアナウンスされました。一連のニュースはほとんど 6 Music 独占、そして今回のコンサートです。どうやら「ニューアルバムに関するニュースは 6 Music に独占させる。だからわかってるよな、待遇は最上級で頼むぜ。」という話になっていたようです。

単にビジネス上の話だけでなく、6 Music の スタッフには「ピストルズや PiL と出会わなければ今の自分はなかった」なんて人がたくさんいるはずです。ジョンの友人のドン・レッツ(Don Letts)も今は 6 Misic に自分の番組を持っています。おそらく 6 Music 全体が「PiL のニューアルバムをプッシュしようぜ!」という感じなんじゃないかな。

ライヴで演奏されたのは新曲2曲を含む次の8曲です。

  1. Deeper Water (新曲)
  2. This Is Not A Love Song
  3. Disappointed
  4. Warrior
  5. Albatross
  6. Flowers of Romance
  7. One Drop (新曲)
  8. Rise

このコンサートでのライヴ演奏とインタビューは以下のリンク先で聴けるようになってます。ただしそれぞれ放送日から1週間の限定公開なので、お早目にどうぞ。

Tom Ravenscroft Show
2:33:00から。Deeper Water、This is not a Love Song, Warrior の3曲。
6 Music At The Southbank
1:40:00から。Albatoross、One Drop、Riseの3曲。
Peter Serafinowicz Show
2:06:00からジョン・ライドンへのインタビュー。
(放送のインタビュー部分は YouTube でも公開されました)

このほか今週は19日に Record Store Day お披露目パーティでのライヴがBoiler Room でストリーミング放送される予定です。ロンドンの19日夜7:00からで、日本時間だと20日の朝4時になります。20日は祝日ですが、前日は夜更かしせずに早めに寝て、目覚しかけとくのを忘れないように。

(2012/03/19追記)
ライヴのビデオも 6 Music Web サイトで公開されました。クイーン・エリザベス・ホールって椅子席で、普段はBBC交響楽団とかやってるところ。すごくやりにくそう。昔のロック・コンサートはこんなとこでばかりやってたんだけどね。

2012/03/14

PiL が Record Store Day のシークレット・ギグに登場

Record Store Day by Man Alive!
Record Store Day, a photo by Man Alive! on Flickr.

4月21日の Record Store Day に PiLが「One Drop」の限定盤アナログ EP を発売することは先日お伝えした通りですが、これに先駆け来週3月19日にロンドンで Record Store Day のお披露目パーティが開催され、そこで PiL のシークレット・ギグが予定されています。The Quietus のリークです。シークレットなのに一体誰がバラしたんだよ?って話に関しては pilofficial から「オラじゃねえよ」という声明が出ています。

As reported by those naughty monkeys at The Quietus... http://t.co/1DJjj9Gb It can't have been me I weren't there. 4 hours ago via TweetDeck ·  Reply ·  Retweet ·  Favorite · powered by @socialditto

ジョニーおじさんのビニール・フェチぶりは、あちこちのインタビューで頻繁に口にしていることなのでご存知の方も多いと思います。今回もこんなこと言ってます。

アナログ・レコードを手軽に入手できなくしたことが音楽業界崩壊の原因だ。レコードこそ生涯の伴侶となるものだ。ダウンロード音楽なんかに命は宿っていない。本物のヨメさんが欲しいのに、貧相な身代りで満足できる奴なんているか!

まあこの辺は偏屈じじいのたわ言と聞き流してもらってかまいませんが、若い人の中にはアナログ・レコードに一度も触ったことがないという人がかなりいます。最近は大袈裟なアナログオーディオセットを揃えなくても、USB でパソコンに接続できるレコードプレイヤーが安く入手できるので、いっぺん「レコードで聴く音楽」というのを体験してみるのもいいんじゃないかな?音楽を聴くという行為とその意味が「昔と今ではずいぶん違うんだなあ」と実感できるはずです。

話は戻ってシークレット・ライヴですが、Boiler Room でストリーミング放送されるようです。当然シークレットなので時間とか分かりませんが、たぶん日本時間だと20日の早朝になるはず。

2012/03/03

You're A Million - ザ・レインコーツ

The Raincoats @ ATP (Curated by Pavement), Minehead 05/2010 by DG Jones
The Raincoats @ ATP (Curated by Pavement), Minehead 05/2010, a photo by DG Jones on Flickr.

例によってどこもニュースにしないので、オラが謹しんでお知らせします。レインコーツ(The Raincoats)のおばちゃんたちが昨秋に引き続き、今月また北米ツアーに出ます。

まあツアーといっても6ヶ所だけなんですけどね。前々から9日の ATP 出演は決まっていたので、「1回だけじゃもったいないから、ついでに何ヶ所か廻ろっか?」ぐらいのノリなんだと思います。無理はしないんです。

無理はしなくていいんだけど、でも、もうそろそろ新作を出してもいいんじゃないかなあ。前作の「Looking in the Shadows 」から16年も経ってるんだし、また日本にも来てほしいし。

ビデオは2010年来日時のステージです。前にも書いた通り、レインコーツのライヴ・ビデオにはちゃんと撮られたのがほとんどないんですが、これは Contrarede が正式に撮影したものなので、画質、音質共にばっちりです。

曲は1979年発表のファーストアルバムに収録されてる「You're A Million」です。未練たらたらの別れ話を歌ったものなんですが、立派なおばちゃんになったレインコーツが歌うと、長年連れ添い、定年退職になったばかりの旦那に三行半を突き付ける歌にも聞こえます。切ないです。自分の怒りと悲しさだけじゃなく、相手の行く末まで憂えているようで、とっても切ないです。

だけどやっぱり、ヴァイオリンのアン・ウッド(Anne Wood)はセクスィでかっこいいなあ。子どもにはわかんないだろうけど。

もうおしまい

これでいいでしょう
私は誰も愛さなかった
雨があなたを濡らすことはなかったし
お日様があなたを暖めることもなかった

もうおしまい

これでいいでしょう
あなたは何も支払う必要なんてない
わたしは何も失っていないんだから
もう止めにしましょう
出ていってちょうだい

あとは何でも勝手にするがいいわ
もうあなたなんかに煩わされたくない
本当にイライラするの
四方を壁で囲まれてるみたいに

もうおしまい

これでいいでしょう
私は誰も愛さなかった
あなたとは、もう風前の灯
ずっとあなたを愛してたのに
あなたとは、もうおしまい
あなたのことが好きだったのに

わたしたちは風前の灯
わたしたちはもうおしまい

2012/03/02

ジンジャー・ベイカーのドキュメンタリー映画「危険、ベイカーさんに注意! (Beware of Mr. Baker)」

Ginger Baker by Zoran Veselinovic
Ginger Baker, a photo by Zoran Veselinovic on Flickr.

ジンジャー・ベイカー(Ginger Baker)というドラマーの名前、若い方はご存知ないかもしれません。やせっぽちのいんちき臭い風貌のじいさんで、似た感じの人はみなさんのご近所でもよく見かけると思います。

彼を有名にしたのは何といっても、エリック・クラプトン(Eric Clapton)、ジャック・ブルース(Jack Bruce)と共に結成したバンド、クリーム(Cream)としての活動なんですが、そのドラミングが後の音楽に与えた影響は、知名度以上に大きなものがあります。

40年以上前、アフリカのポピュラー音楽がまだ「後進国の遅れた音楽」としか見られていなかった時代に、ナイジェリアのフェラ・クティ(Fela Anikulapo Kuti)らと共演し、その音楽を世に紹介した人としても知られています。

ジャズとかロックとか民族音楽とかのジャンルの垣根を乗り越えた活動、というより「垣根?それがなんか俺に関係あんのか?」という感じの人で、もう70歳を越えてるんですが、最近になってもまだ女の人に騙されて大金をふんだくられたりしています。

ジンジャーは1986年リリースの PiL の「Album」でジョン・ライドン(John Lydon)と共演しています。fodderstompf.com の情報によると、Fishing、Round、Bags、Ease の4曲で彼がドラムを叩いています。お互い罵しり合いながらのレコーディングだったようですが、歴史に残る傑作が生まれる現場というのは往々にしてそんなもんです。

なぜか突然、そんなジンジャーさんのドキュメンタリー映画が作られて、今月9日から始まる SXSW で上映されることになりました。その映画のトレーラーがネットで公開されているんですが、冒頭で最大級の賛辞を述べているのはエリック・クラプトンではなく、我らがジョニー・ロットン様です。わはは、ざまあみろ!

これはジンジャー・ベイカーの映画だ。普通の人間にはない何かを持ってる男だ。正当に評価されていなくて、あいつの性格がいかにイカレたものに見えようとだ。

彼に神の祝福を。彼が道と共にあらんことを。あいつのお陰で俺は自分の道を切り拓くことができた。愛してるぜ、ジンジャー! ジョニー・ロットンは心底あんたに惚れてるぜ!

「文句があったら遠慮することはない、いつでも俺の鼻をぶん殴るがいい。あんたを訴えたりはしないさ。殴り返すだけだ。」 - ジンジャー・ベイカー