2013/03/31

PiL のライヴとアイルランド流の楽しみ方

John Lydon, PIL, The Opera House
John Lydon, PIL, The Opera House, a photo by PJMixer on Flickr.

現代の社会生活、特に学校とか仕事の場において感情をあらわにすることは良くないこととされています。人前で派手に怒ったり、泣いたり、笑ったりは控えなくちゃならないことになっています。感情を抑えて人とつき合ってます。でもじゃあみんな一体どこで感情をあらわにしてるんでしょう。

感情というのはひとりだけじゃ生まれません。少なくとも自分じゃない別の存在を感じて初めて感情というものが生まれます。親しい間柄ならお互い怒って怒鳴り合ったり、一緒に泣いたり笑ったりもできます。お互いが信頼できる間柄じゃないとなかなかできません。さほど親しくない人を相手に怒鳴ったら、簡単にその関係が壊れてしまうからです。涙と鼻水をたらしておいおい泣く姿だって親しい人じゃないと見せられないし、本当に親しくないと一緒に心から笑って楽しむことなんてなかなかできません。

感情というのは人間が生きる上でとっても重要なものなんですが、会社や学校での生活では何だか「抑え込め」「我慢しろ」と言うばかりで「それはとっても大切なものなんだからちゃんと吐き出すべきものなんだよ」という人はあまりいません。

人が幸せかどうかをどうやって測るのかは難しい問題です。衣食住足りて、仕事もお金もあるのに幸せを感じられない人は世界中にごまんといます。ですがひとつ確実に言えるのは感情をあらわにできる、信頼できる誰かが身近にいるかどうかというのは幸せの大きな要素です。人間生きていれば誰にでもつらいことや悲しいことがあります。それがいかに不幸で苦しいことであろうと、そのとき誰かと一緒に心から泣いて悲しむことができるのであれば、それはとっても幸せなことです。

セックス・ピストルズの時代からそうですが、ジョン・ライドンの歌は不思議なかたちで人の感情にはたらきかけます。怒り、喜び、悲しみ、普通はそれぞれ別に分かれているはずの感情がごっちゃになって押し寄せてきます。たとえば PiL の代表曲「Death Disco」、この曲は癌で死を目前にした母親のことを歌った曲です。ジョンは本当に泣き叫ぶようにして歌います。ですが、ライヴでこの曲が始まるとなぜかそうした意味がすべてぶっ飛び観客はみな狂喜乱舞します。

ジョニー自身はこれを結婚式で泣いて、葬式で大笑いするアイルランド流の楽しみ方だと言っています。そう、みんなで悲しめるというのはとても楽しいことなんです。信じられない?だったらぜひ PiL のライヴへ行って実感してみるといいよ。

たとえばイスラエルの人々に「アッラー」と合唱させる、そんなこと普通常識的に考えてできることではありません。不可能です。ところが信じられないことに2010年、現実に彼はにそれをやってのけているんです。理屈ではなく、イスラエル人が一緒に歌わずにいられない感情を彼は引き出したのだと思います。

理屈ばかりじゃなく、みんなもっと感情、エモーションの力を信じた方がいいよ。

俺は動物の声を怖いとかうるさいとか思ったことはない。子どもの声も同じだ。子どもたちが遊んだりはしゃいだりしてる声を煩わしく感じたことは一度もない。不思議なことに子どもの声は PiL が表現してるものと同じだからさ。さらに不思議なことに PiL はなぜか子どもにすごくウケる、それも同じ理由なんだ。

心底誠実であることが素晴しい成果を上げたってことさ。俺は本当のことを率直に伝えること、そして俺を育ててくれた階級や文化、俺が信頼するもの、そして誠実さに対する愛を表現することに力を注いできたんだ。子どもは嘘つきが嫌いだからな。

子どもは大人の嘘をすぐに見抜く。まあ大人も子どもが嘘をついたらすぐにわかるけどな(笑)。だが子どもは嘘をついてるんじゃない、遊んでるだけだ。そうだろ?子どもは障壁を乗り越えるんだ。それが素晴しいんだ。実際俺の心にもそういう子どもっぽいものが残ってる。無知じゃないぜ。純粋なんだ。現実の世界がどうであろうと、惑わされたりしないんだ。

アルバムの中にエデンの園へ帰ろうって歌がある。宗教からいただいてきた言葉だが、友人や近所の人、親戚みんなが話しかけてくれる素晴しい場所を観念的に表現してる。俺が子どもの頃住んでいた場所は実際そんな感じのところだった。だが昔のことを懐しんでるだけじゃなく、今の社会に生きるみんなにもそうあり続けてほしいと願ってる。

PiL のギグは楽しいイベントなんだ。敵は誰もいない。みんなお互い友達になるために集まるんだ。子どもを連れて来るといい。PiL のギグなら安全だ。じいちゃんばあちゃんも連れて来てくれよ。きっとみんな気に入るぜ。

SmartShanghai Interview: John Lydon

PiL の曲をエモーショナルに楽しむというのは、たとえばこんな感じです。

(注) ジョニーは「子どもを連れて来るといい」と言ってるんですが、この4月の PiL 東京ライブの会場 SHIBUYA-AX は「未就学児(6歳未満)のご入場をお断りさせていただきます」だそうです。けしからんです。コンサートって花火大会なんかと同じ娯楽だよ。子どもの入場を断る花火大会なんてあり得ないでしょう。

2013/03/30

PiL の Xfm スタジオ・ライヴがダウンロードできるようになってました

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Lu Edmonds at the Royale, Boston, 10-15-2012, a photo by xrayspx on Flickr.

昨年ロンドンの FM ラジオ局 Xfm で PiL のスタジオ・ライヴが放送され、そのときの演奏が Web で聴けるようになってることは以前紹介した通りなんですが、さっき聴き直そうとしていて各曲のファイルがちゃんとダウンロードできるようになってることに気付きました。

普通 Flash のインストールされた PC の Web ブラウザで Xfm Sessions - Public Image Ltd のページにアクセスして曲の Listen マークをクリックスするとプレイヤーのウィンドウが開いて曲が聴ける仕組みなんですけど、これ実はストリーミングじゃなくてファイルのダウンロード再生なんですよ。たまたま Flash が無効になった状態でこのページにアクセスしたところ、Flash が使えない人用にファイルダウンロードのリンクが表示されることがわかりました。

ファイルは MP3 と M4A の2種類が用意されています。「Flash ってどうやれば無効になるの?やり方わかんない」という人のために、ダウンロード用のリストを作成しておきました。MP3 か M4A、好きな方を右クリックして「リンク先を別名で保存」とやれば PC に保存されます。

  1. One Drop (MP3 / M4A)
  2. Out of the Woods (MP3 / M4A)
  3. Reggie Song (MP3 / M4A)
  4. Deeper Water (MP3 / M4A)

何れも「This is PiL」に収録されている新しい曲です。ラジオのスタジオでの一発録りですが、ジョニーが「アルバム This is PiL のレコーディングはほとんどライヴのようにおこなった」という言葉が嘘じゃないとわかる素晴しい演奏です。特にルー・エドモンズ(Lu Edmonds)のサズの細かなワザがよおく聴こえます。

これを聴きながら来週のコンサートを楽しみに待ちましょう。

英語がわかんないからって気にすることない。俺もよくわかんねえんだから (PiL China 2013)

摩登天空新年钜献 后朋克传奇乐队PUBLIC IMAGE LTD双城记

今年の PiL のツアーが今夜、北京でのコンサートから始まります。来週には日本にやってきます。比較的暖かい日が続くようですが、ぎりぎりになって風邪をひいたりしないよう、お家に帰ってきたら必ずうがい、手洗いを忘れないでください。早寝、早起き、万全の体調でジョニーとその仲間たちを迎えましょう。

さて PiL のツアーの始まりは中国、北京と上海でコンサートをするんですが、日本同様、西洋とは大幅に異なる文化を持ち、つい最近まで文化的な交流が強く制限されていた国でのコンサートということで、現地ニュースサイトの取材を受けたり、ジョニーはすごく張り切ってキャンペーンをしていて、YouTube には PiL Chna 2013 という専用リストまで設けています。だけど中国から YouTube へのアクセスって制限されてるんじゃなかったっけ?

中国の現在の物価水準からすると 普通の人にとって PiL のチケットはものすごく高価なもののようです(日本だと2万円以上するくらいの感じ?)。観に行ける人はかなり限られるんでしょうけど、今回ジョニーのパフォーマンスを観る人の中から将来の中国のキーパーソンが生まれることは間違いありません。

どういうわけか、きわめて不思議なことに俺の歌詞はすべて(中国)政府に承認されたんだ(笑)。きっと俺がすごく正しいことを言ってるって認められたんだな。さすがは西洋の国にはできなかったたくさんのことを成し遂げてきた国だ。こんなにオープンに歓迎されてゾクゾクする。最高におもしろい。人生最高の経験になりそうだ。

西洋の国の人間は中国を自分たちと違う、よそ者として見てる。だが俺はその中国の、政治家じゃない普通の人々に会いに行くんだ。そしてその人々のために演奏する。

俺たちが本当に興味を持っているの今の中国の政治状況なんかじゃなく、中国の文化を築き上げてきた人々の方なんだ。俺は子どもの頃学校で孔子について学んだ。みんな学んでるんだぜ。だから俺たちが中国に対して持ってる印象は、ここ70年くらいの政治状況によるものじゃなく、何百年もの間世界中にポジティブな影響を及ぼしてきた中国の方なのさ。

かつては障壁があり、俺たちは中国に行くことができなかった。だがその障壁は今や崩れ落ちた。だが俺たちにこれからの中国をどうしたらいいかなんて話を期待しないでくれ。俺たちをエルトン・ジョンと一緒にするなよ

あいつはものごとを一方からばかり見て、両面から見ようとしない。そうじゃないか。あいつはいつも同性愛者としての視点からしかものを言ってない。だから狭くて偏狭な見方になるんだ。俺はいかなる人種、宗教的、政治的信条、性的傾向も受け入れる、かまわない。人間の中に俺の敵は誰ひとりいない。なのに政治的勢力というやつは俺に難癖をつけてばかりだ。だが一方で、中国政府は俺の歌詞をチェックして、俺が何を主張し、何のために中国に行くのか認識した上で、見事許可を出した。中国とっていいことじゃないか。

中国はずっと文化的に俺の興味を引いてきた国だし、これからも引き続けるだろう。だがその中国は現代の世界に扉を開き、PiL を受け入れたと同時に西洋の生活様式も受け入れようとしている。だから西洋の考え方に染まらないうちに、それが問題だらけなんだと言っておく。西洋と同じやり方をしていくと、西洋と同じ問題に次々と遭遇する。西洋が提供するものを鵜呑みにするな。おかしなものがたくさん混ざってる。ただし西洋には PiL がいる。こっちはすごくいいものだから素直に受け入れていい。

俺が今の中国について何か見て知ってることと言えばネットの Google マップで見たものくらいさ。ただそれもスモッグで覆われててほとんど見えなかったんだけどな(笑)。

ものすごい楽しみだよ。何も知らないからさ。何も知らない赤ん坊のような状態で中国へ行くんだ。だからやさしくしてくれよ。友達になってくれるよな。中国人は歓迎してくれるよな。素晴しい機会なんだ。俺はこの機会を絶対無駄にしたりしない。だからみんなも無駄にしないでくれ。

SmartShanghai Interview: John Lydon

John Lydon: Message for China - 「英語がわかんないからって気にすることない。俺もよくわかんねえんだから」

2013/03/15

四人組、中国へ凱旋 (Gang of Four - Broken Talk)

英国传奇后朋乐队Gang of Four和AV大久保联合专场

ギャング・オブ・フォー(Gang of Four)は来週、東京で初めての単独ライヴをやることになってるんですが、来日を前に SoundCloud で 新曲「Broken Talk」が公開されました

で、早速聴いてみたら、あれ?声が違う、一体誰が歌ってるの? よく見たら写真もジョン・キング(Jon King)じゃなく若いあんちゃんが写ってる! Featuring the vocals of John Gaoler って書いてある。ええっ、ジョン・キング脱退しちゃったの?いつ?みんな知ってた?来週ライヴなのにヴォーカルのジョン・キングがいないんだよ!

すぐにオフィシャルサイトへ行って何か情報がないか探したんだけど「印象的なリード・ヴォーカルは、1年以上ギャング・オブ・フォーとステージやスタジオ活動を共にしているジョン・ジェイラー(John Gaoler)によるもの」としか書かれてません。んー、ということはジョン・キングはもう1年くらい前に辞めていたみたい。

オリジナル・メンバーの4人が再結集して2005年にツアーを開始したときは、期待したんだけどなあ。ライヴの評判もすごく良かったし、アルバム「Return the Gift」は古い曲のセルフ・カバーばかりなのにちゃんと「2005年に聴くべき価値のある音」になっていたし、次はいよいよ新作だ! と思ってたんだけどなあ。

ツアーが一通り終わったらドラムのヒューゴが抜けて、新作がなかなか出ない状態が続いてベースのデイヴ・アレンも抜けて、代わりに若いドラマーとベーシストが加入して2011年にやっとニューアルバム「Content」が出たんだけど、その後ぱったり活動のニュースが途絶えたと思っていたら、ヴォーカルのジョン・キングも辞めてしまいました。ギャング・オブ・フォーのオリジナル・メンバーはついにアンディ・ギル(Andy Gill)ひとりだけになってしまいました。

それぞれのメンバー脱退の理由はわかんないんですけど、みんないいトシだし、やっぱお金の問題が大きいんじゃないかな。アンディ・ギルだけはプロデュースの仕事やスタジオの経営もしてるので何とか音楽で食いつなげてるのかもしれません。アンディのギターがまだ聴けるということだけでも有り難く思いましょう。

ということで気を取り直してさっきのオフィシャル・サイトの記事をよく読んでみると、日本に来る前の20日と21日、北京と上海でもライヴをやるって書いてあります。さらに中国のバンド AV 大久保Re-TROS (Rebuilding The Rights of Statues) のメンバーがヴォーカルを担当して「Broken Talk」の中国語ヴァージョンをレコーディングしたなんて書かれています。

さらに調べてみたら Rebuilding The Rights of Statues はギャング・オブ・フォーの2011年ツアーでサポートを務めていて、AV大久保の方は昨年暮、アンディのプロデュースにより北京でレコーディングしていました。アンディ、中国バンドにすごく入れ込んでるのね。

若い人は知らないかもしれないけど、ギャング・オブ・フォーって名前は中国の四人組が由来なんですよ。その四人組(ギャング・オブ・フォー)が中国でライヴをやったり、中国のバンドを支援するようになったってのはものすごく21世紀だなあ。

まあ中国もがんばってるかもしれないけど、日本も負けてないよ。ギャング・オブ・フォー公式サイトのビデオページで紹介されてる日本のバンドがスカル・ムラティ。こういうのはほかの国の人たちには絶対真似できない。演奏、振り付け、選曲、会場、聴衆、すべてシブ過ぎ。

それからもうひとつ、SoundCloud のページをもう一度よく見てください。新曲「Broken Talk」はなんとライセンスがクリエイティヴ・コモンズ 3.0 Unported なんですよ。原著者のクレジットさえ表示すれば、コピーするのも演奏するのも二次著作物を作るのも自由。それが営利目的でもかまわないんです。

この曲だけなのか、それともアルバムのほかの曲にも同じライセンスが適用されるのかまだわかんないんですけど、英断です。アンディ・ギル、57歳。まだまだ茨の道を歩む気力は衰えていません。

ただ正直新曲の内容に関しては、アンディはともかくほかの若い3人のメンバー、もうちょっと何とか気合い入れて自分のオリジナリティ発揮しろよって思わなくもないんですが...。

(関連記事) 2005年、ギャング・オブ・フォー再結成時の泣ける話はこちら「Not Great Men

2013/03/12

日本のライヴ会場は凶暴なくらいポジティヴなエネルギーに溢れてる - PiL 来日記念盤「レジー・ソング/アウト・オブ・ザ・ウッズ」

Reggie Song / Out of the Woods

ジョニー・アンド・ザ・ボーイズ、PiL の来日がいよいよあと3週間後に迫ってまいりました。みなさんいかがお過ごしでしょうか。コンサート近くになってから風邪をひいたり、お腹をこわしたりしないよう体調には充分気を付けましょう。

さてこの来日タイミングに合わせて EMI Music Japan から来日記念盤「レジー・ソング/アウト・オブ・ザ・ウッズ」がリリースされます。明日、3月13日の発売です。

イギリス、アメリカでは昨年の10月に発売されたシングルというかミニ・アルバムなんですが「This is PiL」からの2曲のほか、2010年ニューヨークのライヴ5曲が収録されています。全部で47分もあるので実質普通のアルバムと変わらないのですが値段は1500円という特別価格です。

PiLの国内盤が出る、出ないはとっても重要なんです。音楽のダウンロード販売や聴き放題サービスがあまり普及していない日本の子供たちはTSUTAYAが頼りです。健全な青少年の育成は近所のTSUTAYAにPiLがあるかないかに大きく左右されます。

現在の PiL は大手レコード会社とは契約せず、自前のレーベル PiL Official から 作品をリリースしています。世界各地での販売はそれぞれの国の販売会社と契約を結んでおこなっているんですが、EMI グループ企業で PiL の CD を販売してるのは唯一日本だけです。

EMI Music Japan の中の人、CD が売れなくて厳しい中がんばってるね。ジョニーも喜んでるよ。つい先日のインタビューでも EMI Japan は特別だって言ってたよ。

日本人は精神的な自由を持ってる。あんな狭い島に住んでるんだから、物理的な面で日本人は社会的に強い制約の中で生きている。物理的な制約と過密状態から生まれる様々な問題の中で何とかやっていかなくちゃならない。それが逆に日本人が頭の中で世界を広げるチャンスになったんだ。

PiL のすごく実験的な面、(1981年の) Flowers of Romance みたいなアルバムだって日本ではちゃんと評価してくれた。ヨーロッパやアメリカのレーベルはリリースさえ嫌がっていたのに、日本では発売翌週になんとチャート入りしたんだぜ。

たしかチャートの8位じゃなかったかな。ものすごい元気付けられたよ。お陰で(ヨーロッパやアメリカの)レーベルの連中に「このアルバムが売れないだって?生憎もう売れてるんだよ!」って言えるようになった。

日本でのショーはこの上ない最高のものにしたいと思ってる。俺はそれが目的でやってるんだ。みんなから金をふんだくるためのショーじゃない、みんなと何かを分かち合うためのショーなんだ。

俺は幸せもんだよ、また日本に行けてものすごくうれしい。日本でやるギグの雰囲気は大好きなんだ。凶暴なくらいポジティヴなエネルギーに溢れてる。それに EMI Japan は俺たちにずっと、ちゃんと敬意を持って接してくれてる数少ないレーベルのひとつがなんだぜ。他の国の EMI ではあり得ない。日本だけのことなんだ。ニホン・イチバン(笑)。

Tokyo Weekender - Q & A: John Lydon

2013/02/28

靴は脱いでってば! (Confessions of a MILF - ヴィヴ・アルバーティン)

The Vermilion Border - Viv Albertine

ジャガイモの皮をむきおえたから、もうすぐできあがり。おいしいレモン・ドリズル・ケーキも焼けてる。フォンデュのチーズをあたためなきゃね。ズッキーニのキッシュは表面がカリカリ、おいしそうに焼けた。それとおしゃれな箱に入ったビスケットが100グラム。

人に指図しないでよ。魅力的でいい匂いのする奥さんがいなくなっちゃってもいいの?あなたも相手がだれだろうと、自分の言うことを聞かせようとしてくどくど言っちゃダメ。神様のつもり?余計なお世話。

幸せな家庭、幸せな家庭、幸せな家庭。

性欲ならあるし、友だちだっている。だけどロマンチックな恋なんて大昔のことよ、20世紀の遺物。そんなに素晴しいもんじゃないのよ、結婚だって同じこと。すごくいびつな関係。

いよいよ耐えられなくなったら、そこで考え直すかもしれないわね。でも貧乏な生活を送ることになるとしても、未亡人なんかになるよりマシ。わたしのロマンチックなママみたいに夫を捨てて、どこかの変人と駆け落ちしたっていいのよ(その変人がわたしのパパ)。

幸せな家庭、幸せな家庭、幸せな家庭。

自分のことなんだからよく考えなさい。我慢できなくなったら出て行ってもいいわよ。そりゃこう言う人もいるでしょうね。運命で一緒になった二人なんだから白鳥やタツノオトシゴみたいに一生添い遂げるべきなんだって。あいにくわたしたち、それほどすてきな間柄じゃないの。ナイスじゃないの。

ナイス、ナイス、ナイス。ナイス、ナイス、ナイス。

ニュース見てて腹が立ったら、テレビを消してペディキュアを塗るの。あっ、冷蔵庫の霜取りを忘れてた。子どもたち、悪いけどお母さんこれから犬の散歩に行かなくちゃ。やだ、台所で何か焦げてる。

男の人は家に自分専用のメイドさんが欲しいのね。家に自分専用のメイドさんが欲しいのね。だけどそのメイドさんは、家にひとり考えごとができる自分だけの部屋が必要なの。家に自分だけの部屋が必要なの。それでわたしは主婦のくせにアーティストになることにしたの。

この先すごく孤独な生活を送ることになるんだわ。わたしは主婦のくせにアーティストになることにしたんだから。この先すごく孤独な生活を送ることになるんだわ。わたしは主婦のくせにアーティストになることにしたんだから。

ライフ、ライフ、ライフ。ワイフ、ワイフ、ワイフ。

家庭にまさるものはないのよね。だけどわたしは家庭なんて信じてないの。家庭なんてつまらない。家庭に愛着なんて感じない。わたしを家庭に連れ戻さないで。家庭なんて大嫌い。連れ戻さないで。家なんて大嫌い。連れ戻さないで。大ッ嫌い。

わたしはね、大嫌いなの、きれいで、清潔で、白くて、ピカピカで、整理整頓がゆきとどいてて、ござっぱりしてて、品のいいインテリアと、感じのいい建物の、こじんまりした...

靴は脱いでってば!

料理して、掃除して、ご飯炊いて、洗濯して、掃除して、お買い物行って、ご飯炊いて、自分をごまかして、セックスして、料理して、洗濯して、お買い物行って...

幸せな家庭、幸せな家庭、幸せな家庭。

2013/02/23

リメイク、リモデル (The Jazz Age - ザ・ブライアン・フェリー・オーケストラ)

The Jazz Age - The Bryan Ferry Orchestra

あなたはサミュエル・クレイマーのことをお聞きになったことがあるかもしれません。詩人のようなジャーナリストのような人物で、ファンファルロというダンサーとわけのあった人ですけれど。でも、お聞きになったことがなくても、これからお話しすることにはさしつかえありません。彼は19世紀の初めパリでなかなか威勢がよかったのですが、わたしが1946年に会ったときは、まだその威勢は衰えていませんでした。が、今度はちがう方面ででした。彼は同じ人でしたが、変わっていました。たとえば、当時すなわち百年以上も前には、数十年にわたって、なんのてらいもなく25歳くらいだとうそぶいていましたが、わたしが彼と知りあった頃は明らかに42歳の中年男でした。

熾天使(セラフ)とザンベジ河」ミューリエル・スパーク (小辻梅子 訳)

初めてロキシー・ミュージック(Roxy Music)、ブライアン・フェリー(Bryan Ferry)の歌を聴いたときのことはよくおぼえています。1975年のことです。ある日、買ってもらったばかりのラジオ・カセットプレイヤーでどこの国だかわからない短波放送のラジオ局を聴いていたらその曲が流れてきたのです。ノイズがひどく途切れ途切れにしか聞こえなかったのですが、メロディーがはっきりと印象に残りました。当時まだ小学生だったのに、なんだかすごく懐しい、前にも聴いたことがあるような気がしました。言葉はわかりませんでしたが、何かとても大切なことを歌っているんだなとわかりました。それがロキシーの「Love is the Drug」だとわかったのは、少し後になって国内の FM ラジオで同じ曲がかかったからです。

それから雑誌でブライアン・フェリーの写真も見つけました。タキシードを着たおじさんでした。当時タキシードを着て歌う歌手というのは大昔のフランク・シナトラや演歌歌手だけでしたから、なぜロックバンドでタキシードを着たおじさんが歌っているのだろうと不思議に思いました。タキシードを着るような歌手の音楽は年寄り向けって感じで好みじゃなかったのですが、ブライアン・フェリーだけは違うと思いました。ブライアン・フェリーやロキシー・ミュージックの曲がラジオでかかることはめったになかったのですが、数少ないオンエアの機会を見つけてはカセットテープに録音して繰り返し聴いていました。

ブライアン・フェリーは昔からよく他人の曲をカバーしています。1970年代前半のソロアルバムはカバー曲ばかりでした。有名な曲もあれば、ほとんどの人が知らないような曲もあります。ロキシー・ミュージックとして出した自分の曲をソロでリメイクしたアルバムまであります。

人と同様、音楽作品にも寿命があります。たいていの曲はやがて人々の記憶から忘れ去られてしまいます。ある時代にたくさんの人が共感した大ヒット曲も、時代が変わればその意味が失なわれ、後から聴き直しても「どうしてこんな曲がヒットしたのだろう?」と感じるものが少なくありません。曲が時代を越えて生き長らえるには、常に新たな生命を吹き込む作業が欠かせないのです。優れたアーティストによるリメイクはオリジナル曲が持っていた価値と意味の再発見を促すとともに、新たな価値と意味を付与します。カバー曲だけが注目されるのではなく、それをきっかけにオリジナルにも脚光を与えることにもつながります。

ブライアン・フェリーの最新作「The Jazz Age」は奇妙な作品です。ザ・ブライアン・フェリー・オーケストラ名義のこのアルバムで、彼自身は歌っておらず演奏にすら参加していません。一般にはロキシー・ミュージックおよびソロとして発表した彼自身の曲を1920年代風のジャズにリメイクした作品と紹介されていますが、もちろん違います。

なぜなら1920年代のパリやベルリンにこれらの曲は「既に存在していた」からです。その証拠がこの「The Jazz Age」です。つまり後にロキシー・ミュージック、ブライアン・フェリーがリメイクすることになる数々の曲のオリジナルがこの「The Jazz Age」に収録されているのです。ロキシー・ミュージック、ブライアン・フェリーのヒット曲は「The Jazz Age」をリメイクしたものです。

言ってることがわけわかんない?わかんなくないよ。だって俺、1926年にパリだったかベルリンだったか忘れちゃったけど、どっかのキャバレーでこの曲で踊ってたもん。