2011/06/30

推進派と反対派 (Two People in a Room - ワイアー)

big buddy & orangie by paparutzi
big buddy & orangie, a photo by paparutzi on Flickr.

「原子力発電には反対だ!」

「原子力発電を推進すべきだ!」

「放射能が漏れたらどうするんだ?」

「電気が足りなくなったらどうするんだ?」

「放射能が漏れたぞ!どうするんだ?」

「電気が足りないぞ!どうするんだ?」

「よし、わかった。電気は何とかしよう。その代わり大量に漏れてる放射性物質を今すぐ何とかしてくれ」

「よし、わかった。放射性物質は何とかしよう。その代わり足りない電気を今すぐ何とかしてくれ」

ワイアー(Wire)の3番目のアルバム「154」に収録されている「Two People in a Room」、この曲も最近よく演奏されているようです。2日の来日公演でも演ってくれるかもしれません。

部屋の中にいるのは二人だけ
二人のひきつった表情筋が
神経症と双方向拷問行為の
密かな披露宴の様子を露わにする

部屋の中にいるのは二人だけ
血まみれのイメージが浮かぶが
どちらも傷付いていない
二人とも武器は選んだが
動きは凍りついたまま

部屋の中にいるのは二人だけ
二人の立場が入れ替わり
停戦の号令が下される
どんな偽りの衣も貫く強烈な照明は
二人に撤退を勧告する

ああ神さま、二人への恵みに感謝します

2011/06/29

ますますひどくなる痛みは誰も直面しようとしない過去に起因する (Bad Worn Thing - ワイアー)

DSC01447 by FotoSpawn
Thomas the Train and "The Fat Controller", a photo by FotoSpawn on Flickr.

「Bad Worn Thing」はグレアム・ルイス(Graham Lewis)がイングランドを鉄道で旅行したときに味わったひどい経験を元に書いたそうです。日本からの旅行者がよくイギリスの鉄道のいいかげんさについて書いていますが、それに慣れているはずのグレアムが怒ったのですから相当ひどい目に合ったのでしょう。

普通のバンドなら怒りを込めてシャウトするところですが、ワイアー(Wire)ですからそんな曲になりません。ドラムとベースが紡ぎ出す田園地帯を淡々と進む列車のようなビートを基本に、ギターは幻想的で哀愁を帯びたどこか希望さえ漂わせるようなトーンで奏でられ、悲観的な歌詞があくまで冷静に歌われます。

実は今の日本の政治、社会状況を歌った曲なんだよ、と言っても通るんじゃないかな。

ピーラーが挟まったジャムサンドイッチ
ポン引きの所持品検査をしてカーディーラーの正体が明らかになる
太っちょ局長の鉄道はノロノロ進む
人の命を奪うことに奴は躊躇しない

駅のシャンペン・バーでポーカーパーティーのエースを監視
望みのない空間
気力の萎える胡散臭い場所
誰も働かないし、働けと言う者もいない

連中はスピーチの時間を短縮して
きみの翼を刈り取る
関係の消失による仲間の不在
アブソルートウォッカの絶対的真実
必然的結果の満員状態

俺に従え!説明は抜きだ
売り飛ばされた未来、首相はゆっくり歩く
ますますひどくなる痛みは
誰も直面しようとしない過去に起因する

連中はスピーチの時間を短縮して
きみの翼を刈り取る
関係の消失による仲間の不在
アブソルートウォッカの絶対的真実
必然的結果の満員状態

くたびれてヨレヨレのガラクタ

2011/06/28

『Red Barked Tree』は今までのぼくらの作品の中でも一番売れたアルバムだ (Clay - ワイアー)

Untitled by Fergus Kelly
Untitled, a photo by Fergus Kelly on Flickr.

7月2日のライブを前にワイアー(Wire)のインタビュー記事が Cookie Scene のサイトに掲載されています。新作「Red Barked Tree」の売れ行きが好調で、今までのアルバムの中で一番売れているそうです。大変めでたいことだと思います。

前回の来日は2004年、アルバム「Send」のリリース直後でした。ファンの中にはあのときの「ズゴゴゴゴゴ」というサウンドを期待している人が結構いるんじゃないかと思いますが、「Object 47」や「Red Barked Tree」を聴いたみなさんにはもうお分かりの通り、ワイアーはもう「Send」のワイアーではありません。あれからもう7年経ったんです。

一方、今回のツアーでは「Two People in a Room」や「Boiling Boy」、「Kedney Bingos」など昔の曲をよく演奏しているようです。eMusic のインタビューでコリン・ニューマン(Colin Newman)がその理由を話していたので、一部ご紹介します。

「Send」のノイズは素晴らしかったんだけど、ひとつ気にくわなかったのは作品としての繊細さに欠けていることなんだ。個々の楽器の音がよく聴き分けられない。ひとつのマシーンが鳴っているように聴こえる。実際あれはマシーン・ロックだった。まあ意図して作ったものなんだけどね。

「Send」期で良くなかったのはバンドの進化が止まってしまったことだ。メンバーのひとりひとりに自分の役割をより高めようという意欲が失せてしまったんだ。ものごとが何から何までガチガチに決まっていた。曲のアレンジは予め隅々まで決まっていて、レコードと同じように演奏しなくちゃならなかった。耐えられないほど退屈だったんだよ。

たとえばイタリアでワイアーが自分たちと同じ年齢層のオーディエンスに依存していたら、ライブには毎晩10人くらいしか集まらないことになるよ。実際に集まっているのは20代が中心なんだ。オーディエンスというのはそういうもんだよ。オーディエンスに対してアピールし続けなければ新たなオーディエンスは得られない。常にアピールするものを持っていなくちゃならない。よく知られていることだと思うけど、今ぼくらは過去のWireの作品からセレクトしてライブで演奏している。うまくいってると思う。だがこれは状況に応じてやっていることなんだ。もし80年代のぼくらが70年代の作品ばかり演奏したらノスタルジアという落とし穴に落ちていたことだろう。だってそんなことをしていたら80年代のオーディエンスも70年代のとまったく同じ、ただ年を取っただけの連中ばかりになってしまう。だからぼくらは意図的に新しい作品ばかり演奏するようにしていたんだ。「Send」の頃もまだ少しそのやり方をしていた。部分的だけどね。だって2000年のツアーでは古い曲ばかり演っていたからさ。一方「Send」ツアーは「Send」の曲、つまり Read & Burn 01 と Read & Burn 02 の曲ばかり、古い曲はアンコールでだけ演奏したんだよ。だけど2008年に再びツアーに出たとき「こうやって曲の構成を決めてしまうのは、もう意味ないんじゃないかな」と思い始めたんだ。

Wire's Colin Newman | eMusic

赤に変わったら
同系交配の形式を選択する
我々は先例でできているから

ペースを保ち続けろ
戦利品を回収して、不名誉を回避せよ
足跡を残さずに潜れ

非難の声が上がる
つき進め、めくらめっぽう撃ちまくれ
標的を射止めて、議論を終わらせろ

景気の踊り場
石灰に沿って境界を整えよ
罪悪の人生

お互い疎遠になっても
遊びたいという欲求はない
我々は粘土でできているから

非難の声が上がる
標的を射止めて、議論を終わらせろ
たとえ未解決の問題が残っていてもかまわない

非難の声が上がる
たとえ未解決の問題が残っていてもかまわない
つき進め、めくらめっぽう撃ちまくれ

段階的に導入する
だがいつ始めたらいいのだろう
チャンスは僅か

中は空っぽだ
間違いなく大敗に終わる
我々には影響力が不足している

非難の声が上がる
つき進め、めくらめっぽう撃ちまくれ
標的を射止めて、議論を終わらせろ
たとえ未解決の問題が残っていてもかまわない
つき進め、めくらめっぽう撃ちまくれ

きみの3分間を無駄にする歌 (The Song That Didn't Rhyme - アリス・クーパ ー)

Alice Cooper by Jan Kjellin
Alice Cooper, a photo by Jan Kjellin on Flickr.

ボブ・ディラン(Bob Dylan)がローリングストーン誌のインタビューで「アリス・クーパーのこと、忘れてねが?」と言ったのは1978年のことです。もちろんローリングストーンを読むタイプの人たちは、ディランがそう言ってもアリスのことを気にかけたりしません。だいたいローリングストーンって、昔からおっさん臭い雑誌だったんだよ。己れの中に潜むフランケンシュタインと日夜格闘している健全な悩める青少年はローリングストーンなんか読んだりしません。アリス・クーパーはこの青少年たちを相手に歌い続けているのです。

アリス・クーパーが歌手としてデビューしたのは高校で開かれたパーティーです。教師のみなさんご列席のパーティーにアリスは「キャーキャー叫ぶ女の子たちを予め雇って」臨んだそうです。またフランク・ザッパ(Frank Zappa)の主催するレーベルのオーディションでは、ザッパが「じゃ、明日の7時に家に来てくれ」と言ったのを良いことに、早朝ザッパの家へ忍び込んで機材をセット、7時になった瞬間にドカーンと演奏を始めたそうです。悩める青少年なら誰もが憧れる伝説的エピソードです。このときザッパはガウンのままコーヒーカップを持って出てきて「んじゃ、契約しよ」と言ったそうです。尊敬できる大人の対応です。以来、アリスは40年以上に渡りゲテモノ路線を走り続けています。

悩める青少年たちは大人たちが嫌がる、眉をひそめるようなものが大好きです。連続殺人鬼やゲテモノが大好きです。その中に「自分の真の姿」を見出すからです。アリスは青少年が望むものだけでなく、それ以上のものを提供します。連続殺人鬼やゲテモノの形をした青少年のさらに背後にあるものです。連続殺人鬼やゲテモノを通じてしか表現できない、説得力を持たない「本当のこと」というのが、世の中には確かに存在するのです。

「The Song That Didn't Rhyme」はアルバム「The Eyes of Alice Cooper(2003)」に収録されている曲です。「くだらない」「ゲテモノ」と言われ世間に相手にされなかったけど、そのくだらないものがこうして生き延びているんだよ、という歌です。「きみのやってるくだらないことはとっても正しい!」という歌です。ボブ・ディランは歌ってくれないタイプの歌です。

だけど、アリスにはほかにも素晴らしい曲がたくさんあり過ぎて、ライブではこの曲ほとんど歌われていないんです。

曲を書いたんだ
だけど最初の構想からしてダメで
一行一行が苦行だった
スピード感とか魅力的なところはゼロ
シリアスさもなければ気の利いたところもまるでない
韻もろくに踏んでない歌だった

バンドは途方に暮れ、シンガーは歌えない
ドラマーもまともに叩けなかった
ラジオのDJにはボイコットされ
クレジットカードの取引が停止された
ビルボードには犯罪に値するとまで書かれた

メロディーは誰にもわからないキーの中をさまよい
歌詞は何ひとつ意味を伝えない
けどあの曲が頭から離れない
きみの3分間を無駄にする
韻もろくに踏んでない歌

平凡さと退屈のあまり
グルーピーたちはみんないびきをかいていた
初めてライブで演奏したとき
レコード会社の社員はみんな解雇され、社長も辞任した
だけどその歌だけは、なぜかこうして生き延びている

メロディーは誰にもわからないキーの中をさまよい
歌詞は何ひとつ意味を伝えない
けどあの曲が頭から離れない

メロディーは誰にもわからないキーの中をさまよい
歌詞は何ひとつ意味を伝えない
けどあの曲が頭から離れない

きみの3分間を無駄にする歌
何ひとつ役に立たないのに
韻もろくに踏んでない歌に
12ドル99セント払ってくれたことを
感謝するよ

2011/06/22

ジョン・ライドン、デンマークでアイスランド首相と歌の交流

Jóhanna Sigurðardóttir talar by Socialdemokrater
Jóhanna Sigurðardóttir talar, a photo by Socialdemokrater on Flickr.

JohnLydon.com にジョンが先日アイスランドの首相と会ったときの話が載ってます。

ハロー、俺の名前はジョニー・ロットン。2日前、俺はコペンハーゲンのホテルでアイスランドの首相に会うという、めったにお目にかかれない最高に楽しい機会に恵まれた。会うやいなや、彼女は何か1曲俺に歌ってほしいと言ってきた。で、俺は歌った。俺の好きなゲール語の古いトラディショナルソングさ。すると彼女と大使たちは全員立ち上がって拍手をしてくれただけでなく、今度は彼らがアイスランド語で歌ってくれたんだ。すげえ楽しかった。最高の時間だよ。デンマークでアイスランド人たちと過ごす夕べは素晴しい。みんなに感謝だ。

その夜のギグは、今回のツアーのすべてのギグ同様、驚異的なイベントだった。みんな完全に自分自身を楽しむことに集中していたし、PiL が単なる音楽じゃない、音楽を越えるものだということをちゃんと理解していた。若い奴から年寄りまでのあらゆる年代、あらゆるタイプ、あらゆる宗教、あらゆる肌の色の連中が集まってきていた。ありがとう、感謝するよ。

John Lydon, Public Image Ltd, June 21st 2011

John trades folk songs with the president of Iceland! In Denmark...

ちょっと解説しておくと、アイスランドという国には大統領と首相の両方がいるんですよ。原文は the president of Iceland と書かれているんですが、会った相手は女性なので首相のヨハンナ・シグルザルドッティル(Jóhanna Sigurðardóttir)ということになります。

アイスランドといえば経済破綻危機や火山の噴火などで大変な状態にある国です。でもさ、その危機的状況の中で首相を務めるのが68歳の女性、しかもジョン・ライドンに会って一緒に歌を歌っちゃうような人なんだよ。うらやましい。

2011/06/15

1978年のジョン・ライドン

ニュースサイト経由でジョン・ライドン(John Lydon)の珍しいビデオを見つけました。1978年、セックス・ピストルズ(Sex Pistols)を脱退して失業、PiL 結成のために金策している頃のインタビューです。

今になって見れば、ちょっと警戒心が強いけど、まだあどけなさが残る照れ屋のあんちゃんです。こんなあんちゃんを当時は「国賊だ!」みたいなこと言って、みんなして叩きまくってたんだぜ。昔のイギリス人の大人がいかに分別のない連中だったかよくわかると思います。

2011/06/14

あんたが今まで見てきたものなんてまだ前哨戦に過ぎない (パブリック・イメー ジ - パブリック・イメージ・リミテッド)

PIL (Public Image Limited) - Primavera Sound 2011 - Jueves - 04 by scannerfm_flickr
PIL (Public Image Limited) - Primavera Sound 2011 - Jueves - 04, a photo by scannerfm_flickr on Flickr.

パブリック・イメージ・リミテッド(Public Image Limited)という名前はイギリスの女流作家ミュリエル・スパーク(Muriel Spark)の小説「The Public Image」からもらったというのは有名な話です。若き日のジョン・ライドン(John Lydon)はこれを読み、非常に感銘を受けてバンド名にしたそうです。

残念ながらミュリエル・スパークの小説は日本ではそのほとんどが絶版になっており「The Public Image」に至っては一度も翻訳されていません。でもね、すごくおもしろいんですよ、ミュリエル・スパーク。かのブレイディみかこさんなんかはスパークを最強の女流作家と評しています。

「The Public Image」はどんな話かというと、有名な女性映画スターが自らのパブリック・イメージを保つため、夫婦関係が崩壊しているにもかかわらず家庭的な女性を演じ、さらに夫の自殺を世間から隠そうとして色々画策するのだが...という話です。スパークの小説はあらすじだけ書いても「何?それ、けっこうありきたりな話じゃん」みたいなのがほとんどです。でも違うんです。スパーク小説の魅力はその文体と話の展開の仕方にあるので、あらすじだけじゃ分からないんです。登場人物はみんな根性悪いんです。滑稽なんです。で、読者は読んでるうちに色々自分にも思い当たるフシが出てきて非常にいやーな気分になる、イギリス伝統の自虐系ユーモアに溢れています。

セックス・ピストルズ(Sex Pistols)は1978年の US ツアー直後に解散しました。正確にいうとその時点でまだ解散はしていなくて、マネージャーのマルコムや他のメンバーと折り合いが悪くなったジョン・ライドンがリオでのレコーディングを拒否したため、ホテルに無一文で置き去りにされたわけです。ジョン・ライドンが再出発するに当たってしなければならなかったのはまずお金を工面して新たなバンドを作ること、そして「セックス・ピストルズのジョニー・ロットン」という自分のパブリック・イメージと戦うことだったわけです。同年暮れ、ジョン・ライドンは新バンドのパブリック・イメージ・リミテッドを率いて音楽業界への復帰を果たします。そのデビュー曲が「パブリック・イメージ(Public Image)」でした。

PiL がツアーに出るための資金をバター会社以外の一体誰が出してくれたって言うんだ?俺は18年間ずっとレコード会社相手に交渉してきたが、連中のやったことといえば俺を借金漬けにしただけだ。セックス・ピストルズ同様、俺のもうひとつのバンド PiL は注目に値するバンドだ。復活してツアーをすべきなのに借金で身動きが取れなかった。レコード会社の連中は自分たちのすべき仕事をしていないのか、それとも巧妙なビジネスをしているだけなのか?どちらにしろレコード業界は腐り切っていて、何か良くしようとしてもぜんぶ徒労に終わる。流れに逆らわなければもっと楽に生きていけるのかもしれないが、そんなものに興味はない。そんなの間違っている。

自分の曲には誇りを持っている。その中身、視点、狙いすべてに。要するに俺は世界をもうちょっとマシなところにしたいんだ。叶いそうもない夢だとか馬鹿げたことだとは思わない。ただし御託を並べてるだけじゃダメで、実行してみせる必要がある。

俺に関する伝説なんてのは、戦時中のチャーチルかネルソンみたいなもんだろ。俺がそんなものに分類されるかどうかなんて知るか。俺の人生はまだ終わらない。自分で満足していない。たかだか50年生きてきたくらいで自分を伝説や聖人視できるわけないだろ。あんたが今まで見てきたものなんてまだ前哨戦に過ぎない。

俺はできる限り長生きしたい。ふわふわの雲や天使の歌声に耳をすませみたいな宗教はどれもくだらない。天国は地上にあるべきなんだ。だから俺はガンジーから受動的抵抗の哲学を学んだ。

俺の歌は銃よりもっと強力だ。ふざけて言ってるんじゃない。言葉は俺の弾丸だ。そしてこの世界に対して充分に機能した。認めたくない奴も多いが、あいにくそれは事実だ。

断じて言う、パンク・ムーブメントなんてものは存在しなかった。ただし何とかムーブメントの一員になりたい連中が大勢いたことは事実だ。俺は俺のやりたいことをやっていただけだ。俺のやったことを他人がどう解釈しようと知ったことか。みんな同じ恰好をしたパンク・バンドで集まって一緒に戦おうだって?そんなもんまるで興味ないね。ユニフォームが着たけりゃ軍隊に入ればいい。だいたい俺はみんな同じユニフォームを着てというのが大っ嫌いなんだ。個性こそが一番重要なんだ。ひとりひとりの違いが人を生き物としてマシな存在にしてくれるのさ。俺の友人と俺は意見が激しく食い違うことが多い。だがお互いそんな相手が気に入ってる。がまんを続けてくことだって不可欠なんだ。俺がいつも言ってるだろ。同じ場所にたどり着く道はいくつもあるんだ。

野生生物と自分が同じ道を辿る生き物なんだってことを理解するまで、ずいぶん長いことかかった。だがそれが理解できるようになってすごくうれしいよ。生き物が生きている様子を見るのはすごく楽しい。昆虫を一日中眺めていたって飽きない。けど俺は菜食主義者なんかじゃないぜ。上下二組の歯を持って生まれたんだから、それを最大限活用して食べてる。

ま、実のところ本物の歯はほとんど残っていないんだ。俺の両親は色んなものを俺にくれたが、歯ブラシだけはくれなかった。そのこと自体はあきらめるしかないが、影響はまだ続いている。二つの膿瘍の治療を終えたばかりなんだ。口の中を8針縫って上唇が歯茎に縫い付けられている。だから話すと変なんだ。笑うと縫ったところが引っ張られるように感じる。

Lydon the Pistol goes off on one again - The Star

PiL のデビューから30数年経ちました。ジョニーおじさんは去年に引き続き今年もツアーに出て、ブランデーでうがいをしながら伸び伸びと歌い、聴衆もそれに応えて楽しむようになりました。でも昔は違ったんだよ。信じられないかもしれないけど「PiL の曲では踊れない」って人が昔はたくさんいたんだから。一方、お金とパブリック・イメージに関してはあまり状況は変わっていないようです。

昔はパブリック・イメージなんてごく一部の有名人だけのものでしたが、今はブログやら Twitter などのおかげで普通の人がちょっとしたパブリック・イメージと戦わなくちゃならない状況が生まれています。本当はあるのかないのか分からない小さなパブリック・イメージを崇めたり、守ったり、壊したり...。

「パブリック・イメージ」の詩で歌われている You というのはマルコムのことだと言われていますが、もちろん You はあなた自身のことであり、歌っているジョニーおじさん自身のことでもあるわけです。だからこそ2011年の今もこの歌を歌いつづける価値があるのです。

あんたは
俺の言葉を聞こうとせず
ただ俺の服を見てただけ
少しマシだったとしても
見てたのはせいぜい俺の髪の色

パブリック・イメージ

あんたの欲しがったものは
いつまで経ってもぼんやりしたまま
イメージの後ろに隠してるのは無知と不安
大衆という体制を隠れ蓑に
相変わらず昔のたくらみが通用すると思ってる

パブリック・イメージ

すべて物事には表と裏がある
誰かさんは俺をやめさせなきゃならなかった
だが俺はもう駆け出しの頃とは違う
他人の所有物になんかならない

パブリック・イメージ

すべて物事には表と裏がある
誰かさんは俺をやめさせなきゃならなかった
だが俺はもう駆け出しの頃とは違う
それにこれはモノポリーなんかじゃない

パブリック・イメージ

あんたはお望みのもの
俺のパブリック・イメージを手に入れた

俺の入り口
俺の作品
俺の最後の見せ場
そして俺からのサヨナラ

パブリック・イメージ
あばよ

2011/06/08

ConcertLive で PiL Live At The Isle Of Wight Festival 2011 の予約受付が始まってます

PiL @ Primavera Sound 2011 (3) by stinker
PiL @ Primavera Sound 2011 (3), a photo by stinker on Flickr.

今年のワイト島フェスティバル、ジョニーおじさん率いる PiL は6月11日に出演予定なんですが、その模様がライブ CD として発売されることになりました。既に発売元 ConcertLive の Web サイトで予約受付が始まってます。PiL が ConcertLive から CD を出すのは「ALiFE 2009」に続いて2回目で、例の限定版写真集「Mr Rotten's Scrapbook」も ConcertLive が企画したものです。

ConcertLive については以前「ALiFE 2009」が出たときにも書いたのですが、コンサートを録音してその場で CD に焼き、終了直後に会場で販売するというサービスをしていています。レコーディング機材と大量の CD ライターを積んだ車でコンサート会場へ乗り付けて作業しています。またコンサートに来られない人向けには通信販売もしています。

ConcertLive は学校の友達だった Adam Goodyer と James Perkins という2人が2005年に始めたイギリスの会社です。ある日の夜遅く、酔っ払った2人は以前観たマッシブ・アタックのコンサートで最後に演奏された曲が何だったのかで口論していました。Adam は「間違いなく Unfinished Sympathy だった」と主張、James は「いや、Blue Lines だった」と言い張りました。でもお互い証拠となるものが何もなかったので、結局どちらの記憶が正しいのかわかりませんでした。この言い争いがきっかけで「そうだ、コンサートの内容をすぐ CD にして家に持って帰れたらこんな口論をしなくて済む。世の中にはこういうことが原因で夫婦仲に亀裂が入ったり、ご近所との仲が険悪になったりする人がたくさんいるはずだ。ライブ CD があれば世界が平和になってみんなが幸せになれる。」ということで ConcertLive を立ち上げたそうです(About Us)。

当初はもっぱらイギリス国内のライブばかりだったのですが最近は力を付けてきたらしく、ヨーロッパでのライブ CD も販売するようになっています。似たようなサービスをやっている会社はほかにもいくつかあるのですが、下手にダウンロード販売をせずに物理的な CD にこだわったのが功を奏したようです。最近ではアリス・クーパー(Alice Cooper)やエルトン・ジョン(Elton John)などのビッグネームも ConcertLive で CD を販売するようになっています。アリス・クーパーの場合、ここ数年コンサートの録音をすべて Simfy Live で販売していたのですが、今年(ほぼ)オリジナルメンバーで再結成を果たしたアリス・クーパー・バンドのヨーロッパツアーは「No More Mr Nice Guy LIVE!」として ConcertLive から発売されます。こっちも予約受付中です。

(訂正) アリス・クーパーのツアーに昔のメンバーで参加しているのはスティーブ・ハンター(Steve Hunter)だけでした。

(7/31 追記) 国内でも販売されることになりました。9月19日の発売予定です。Amazon で予約受付中です。