2012/04/25

PiL の新作 EP「One Drop」がついに出ました!

混沌が俺たちを生んだ
俺たちを変えることなど、誰もできない
誰もそのわけを説明できない
だがそれこそが
俺達が俺達たる所以(ゆえん)

年齢なんか関係ない
俺たちは皆ティーンエイジャーだ
俺たちは絶望から這い出して
注目の的となった
俺たちこそ
最後のチャンスだ

PiL 20年ぶりのニューアルバム「This Is PiL」に先行して、4曲入りの EP「One Drop」が4月21日にリリースされました。ただしこれは Record Store Day 向けの数量限定アナログ盤なので、国内で手に入れた人はまだ多くないようです。私自身もディスクユニオンの通販で予約したのですが、現時点でまだ「在庫手配中」となっていて発送すらされていません。20年も待ったのに、ここへ来てまだジラすのかよという感じですが、ひたすら待つしか仕方ありません。

この EP を CD の形でリリースする予定は今のところないようなのですが、イギリスやアメリカでは iTunes Store や Amazon MP3 のダウンロード販売が始まっています。iTunes Store では「One Drop」のプロモーション・ビデオも一緒に販売しています。おそらく日本でも近日中に販売が始まるはずです。

それでも、どうしても、一日も早く聴きたいという人は海外のサイトですが boomkat から購入することが可能です。ここからは MP3 だけでなく FLAC のデータも購入できます。私も我慢できなくてゆうべ買ってしまいました。でもでも、やっぱりアナログで聴きたい!

それからアルバム「This Is PiL」のほうですが、通常盤の CD、レコードのほかに CD + DVD の限定版が出るもようです。曲目から察するに、今月始めにロンドン Heaven でおこなわれたライヴの DVD みたいです。ただし日本の Amazon や Amazon.com には出てなくて、Amazon UK でだけ予約を受け付けています。オフィシャルサイトにはまだ何のアナウンスもなく確かなことは言えませんが、ひょっとしたらイギリス限定のリリースなのかもしれません。なおイギリスの DVD は PAL 方式なので、輸入盤の購入を考えている人は注意してください。

(2012/07/16 追記) UK 盤の DVD もリージョン・フリー NTSC で再生可能なものと判明しました。

あ、それから EP の中の1曲「Lollipop Opera」のラジオ・エディット・ヴァージョンは SoundCloud で聴けるようになっています

イギリスの歴史を紐解いてみれば、暴動と反乱は輝かしいイギリス文化の一部だとわかる。この伝統がこれからも続くことを望む。

(追記) 2ちゃんねるで指摘をいただき、冒頭の詩の誤訳を修正しました。あとこれを書いた直後に EMI Music Japan から「This Is PiL」の国内盤発売がアナウンスされました。めでたい!

2012/04/18

ジョン・ライドン、God Save The Queen の再発に「くだらないキャンペーンで俺を煩わせるんじゃねえ!」

God Save The Queen by mirwav
God Save The Queen, a photo by mirwav on Flickr.

今年のイギリスは先日取り上げたタイタニック号100年やオリンピックなど、海外から観光客を呼び込める派手なイベントのネタに事欠きません。そしてもうひとつ、オリンピックの前に開催される大きなイベントがエリザベス女王の即位60周年記念式典ダイヤモンド・ジュビリーです。

これに便乗してレコード会社がセックス・ピストルズ(The Sex Pistols)のシングル「God Save The Queen」をジュビリーの週5月28日に再発することを決定しました。

「God Save The Queen」は35年前の1977年5月、やはり即位25周年記念のシルバー・ジュビリーの週に発売され、当時のイギリスで社会現象となるほどの大きな話題を集めたレコードです。ただしシングル・チャートでは2位にとどまったことで、王室関係者の圧力でチャートが操作されのではないかという陰謀説が流れたりしました

今回のキャンペーンは再発をきっかけに一部のファンが Facebook などで呼びかけている「今度こそ "God Save The Queen" をチャート1位に」というものなんですが、ジョニーおじさんのところへ問い合わせが殺到しているらしく、「くだらないキャンペーンで俺を煩わせるんじゃねえ!」という声明が急遽発表されました

「God Save The Queen」を今度のジュビリーの週末にチャート1位にしようという筋書きやらキャンペーンやらへの関与は、謹しんでお断わりする。俺の考えたことじゃないし、そんなことをしたいとも思わない。

俺はセックス・ピストルズとしてやったことを誇りに思っているし、もちろんこれからもそうだ。だが今回のキャンペーンはむしろセックス・ピストルズがやってきたことを台無しにするものだ。あんなの俺がやりたいキャンペーンじゃない。

セックス・ピストルズのレコードを若い世代が手に入れられるようになること自体は嬉しく思う。だが一緒に繰り広げられるくだらないお祭り騒ぎに加担するのはごめんだ。俺は今、パブリック・イメージ・リミテッドとしての活動で忙しいんだ。

2012年4月17日 ジョン・ライドン

5月28日にはパブリック・イメージ・リミテッドの20年ぶりのニューアルバム「This is PiL」が発売されます。ジョニーおじさんが仲間と共に全精力を注ぎ込んでつくった作品です。今あなたが住む世界と、今のジョニーおじさん自身のことを歌った「今」のアルバムです。もしセックス・ピストルズやジョニー・ロットンという人に興味があるなら、まずこのアルバムを買うことをお勧めします。

一方「God Save The Queen」は35年前のレコードで、このレコードが当時持っていた強力な意味は、残念ながら既に失われてしまっています。ただし21歳だったジョニー・ロットンとその仲間たちが音に込めたエネルギーは、時代を越えて当時を知らない若者に何かを伝えてくれるかもしれません。もしお金に余裕があるなら、手元に一枚「God Save The Queen」を置いておいて損はありません。ジョニーおじさんも「俺たちに金を貢ぐのをためらうことはない」って言ってますから。

2012/04/17

人はなぜ沈み行く船に魅かれるのか (Song To The Siren - ブライアン・フェリー)

Siren - Roxy Music  1975 by oddsock
Siren - Roxy Music 1975, a photo by oddsock on Flickr.

サイレン(The Siren)というのは、ギリシャ神話に出てくる岩礁に住む妖怪の名前です。上半身は女性で、下半身は魚の姿をしています。英語だとサイレンと発音するんですが、日本語ならセイレーンとかシレーヌと呼んだほうが雰囲気が出ます。セイレーンは美しい歌声で船を引き寄せ、沈めてしまうと言われています。

今年はタイタニック号沈没事故から100年ということで、イギリス各地で様々なイベントが開催されています。そのひとつが4月13日にベルファストで開催された MTV 主催のタイタニック・サウンズ・コンサートで、ブライアン・フェリー(Bryan Ferry)も出演してセイレーンの歌を歌いました。

「Song To The Siren」という曲、オリジナルはティム・バックリー(Tim Buckley)で、1970年のアルバム「Starsailor」に収録されてる古い曲です。ブライアン・フェリーは2010年のアルバム「Olympia」でこの曲をカバーしています。

実はブライアン・フェリー、1975年にロキシー・ミュージック(Roxy Music)でその名も「サイレン(Siren)」というアルバムを作っているんですが、このアルバムに「Song To The Siren」は収録されていません。当時はこの歌の存在を知らず、ずっと後になってディス・モータル・コイル(This Mortal Coil)のカバー・バージョンを聴いてこの曲を知ったそうです

さて、ビデオはオーケストラをバックにセイレーンの歌を歌うブライアン・フェリーです。コンサートにはほかにも色々な人が出てたみたいなんですが、この人、この曲が完全に主役です。まるでこの歌のためだけに開かれたコンサートのようです。

ティム・バックリーのオリジナルはあくまでギリシャ神話を題材に取った、悲しいラヴソングなんですが、ブライアンが歌うと世界が一変します。沈みゆく自らの運命、その官能的な悦びに溢れています。また、嫌がるセイレーンにつきまとうストーカーの歌のようでもあります。

沈み行くタイタニック号の船内では、オーケストラが最後まで演奏を続けていたという話がありますが、その曲はこの「Song To The Siren」に違いありません。

船影ひとつない海原を、長いことただよっていた
きみがその瞳と指で歌い
きみのいる島へ
ぼくを引き寄せてくれることを願って

きみの歌声が聴こえた

へさきをこちらに向けて
ここまで辿り着いて
あなたをこの手に抱かせて
わたしはここよ
わたしはここよ
あなたを抱きしめたくて
待っているわ

きみがぼくを夢に見てくれることを
ぼくは望んでいたのだろうか
キツネのぼくを、きみが追いかける夢を
ぼくの無謀な船は
岩場で痛手を受け
もう傾きはじめている

きみの歌声が聴こえる

わたしに触れないで
わたしに触れないで
ここへ来てはいけない
もう悲しむのはいや

生まれたばかりの赤子のように
ぼくは途方にくれ、潮の流れに戸惑っていた
波の渦に足を踏み入れるべきなのか
横たわり、死を花嫁として迎えるべきなのか

ぼくが歌う番だ

ここへ来て
ここまで泳いで来て
きみをこの手に抱かせて
ぼくはここにいるよ
ぼくはここにいるよ
きみを抱きしめたくて
待っているよ

2012/04/14

アルバム「This Is PiL」のトラックリスト公開、国内の予約受付も開始!

John Lydon 10 by michaelz1
John Lydon 10, a photo by michaelz1 on Flickr.

前作以来20年ぶりとなる PiL のニューアルバム「This Is PiL」のトラックリストが公式サイトで公開されました。次の12曲です。CD、アナログ同時発売ですが、アナログ盤は2枚組になるもよう。

  1. This Is PiL
  2. One Drop
  3. Deeper Water
  4. Terra-Gate
  5. Human
  6. I Must Be Dreaming
  7. It Said That
  8. The Room I Am In
  9. Lollipop Opera
  10. Fool
  11. Reggie Song
  12. Out Of The Woods

アルバムは新たに自己資金で設立したレーベル PiL Official からのリリースで、配給は Cargo UK Distribution が担当、5月28日の発売で、国内でも Amazon などで予約受付が始まっています。レコーディングは昨年、コッツウォルズにあるスティーヴ・ウィンウッド(Steve Winwood)のスタジオ Wincraft Music Studios でおこなわれました。

収録曲のいくつかを、ジョン・ライドンが次のように紹介しています。

ええと、12曲あるんだけど、どれから始める?どの曲も紹介したいので迷うよ。まず「One Drop」だな、これは俺がフィンズベリーパークで過ごしたガキの頃のことを歌ったものだ。すばらしい曲だぜ! ハロー、俺たちはみなティーンエイジャーなんだ。それを忘れちまったわけじゃないよな! 年齢なんか関係ない、若くあれって歌だ。「Lollipop Opera」は美しいバックグラウンド・ノイズの一群さ。イギリスとその多様な文化を音楽で表現している。 「The Room I Am In」はドラッグと公営住宅での生活について歌っている。昔から変わらない、今なお続く悲劇さ。「I Must Be Dreaming」はわかるだろ、政治とか政治家に耐えるしかない現状を歌った曲だ。

知ってる人はもちろん知ってますが、知らない人はまったく知らないので、Public Image Limited、略称 PiL のメンバーを改めてご紹介します。

ジョン・ライドン(John Lydon)
セックス・ピストルズ(Sex Pistols)のヴォーカルでもあり、またの名をジョニー・ロットンと言います。1978年 PiL 結成以来のオリジナル・メンバーです。ビア樽みたいなお腹で、前歯が1本抜けてるのに治さないし、ステージでは手鼻飛ばし放題なんですが、ものすごい声量で多少の音程の違いなんか屁ともしないで吠えまくる、世界最高のヴォーカリストです。
ルー・エドモンズ(Lu Edmonds)
セカンドアルバム「Music for Pleasure」時期のダムド(The Damned)に参加していたギタリストで、1986年に PiL に加わりアルバム「Happy?」のレコーディングに参加しました。その後、持病の耳鳴りが理由で一時脱退したのですが、2009年のツアーで PiL に復帰しました。普通のギター以外にエレクトロ・サズやバンジョーを改造した楽器などを用いて、他に類を見ないユニークなサウンド空間を創り出します。PiL 以外にミーコンズ(Mekons)やレ・トリアボリーク(Les Triaboliques)などのメンバーとしても活躍しています。
ブルース・スミス(Bruce Smith)
ザ・ポップグループ(The Pop Group)やスリッツ(The Slits)などでドラムを担当し、ロックやジャズ、ファンク、レゲエ、アフリカ音楽などを融合したいわゆるミクスチャーなドラミングの先駆者です。やはり1986年に PiL に加わり、アルバム「Happy?」と「9」のレコーディングに参加、2009年のツアーで PiL に復帰しました。
スコット・ファース(Scott Firth)
2009年に新たに加わったメンバーで、スティーヴ・ウィンウッドやエルヴィス・コステロ、スパイスガールズなどのレコーディングやツアーに参加していたという、他の PiL メンバーとはちょっと違う経歴の持ち主ですが、Religion の演奏で破壊的ベースサウンドを出しているのがこの人です。PiL では主にベースを担当しているのですが、女性ベーシストのヨランダ・チャールズ(Yolanda Charles)と一緒にやっているザ・ディープ・モー(The Deep Mo)というバンドではギターを担当しています。

(2012/04/21訂正) 90年代後半から抜けたままになっていたジョンの前歯は最近インプラントを入れて治したそうです。ビデオを見直して確認すると、本当に前歯が揃ってます。

2012/04/13

セックス・ピストルズ、オリンピック閉会式への出演を拒否

pretty vacant by Nesster
pretty vacant, a photo by Nesster on Flickr.

というニュースが報じられていますが、オファーがあったのは本当だそうです。NME 4月14日号でジョン・ライドン(John Lydon)とザ・ホラーズ(The Horrors)のリース・ウェッブ(Rhys Webb)が対談してるんですが、そこでこんな風に言ってます。

オリンピックのイベントに参加してくれないかと言ってきたんだ。で、連中が何を計画していたかというと、セレブたちが車の荷台のステージに乗っかってスタジアムを一周するあれだよ。ヴィヴィアン・ウェストウッドのドレスを着たナオミ・キャンベルがいて、マッドネス(Madness)が「バギー・パンツ(Baggy Trousers)」を演奏した後でピストルズが「Pretty Vacant」を演奏するんだと。でも「ヴェイカント」は止めてくれ、「プリティ」だけの検閲済みバージョンでやってくれってさ。もちろん返事は「冗談じゃない、誰がそんなもんやるか!」。

よく意味が分からない人がいると思うので無粋ながら解説しておくと、普通 vacant はこんな風にヴェイカント」と発音するんですが、ジョニーはアクセントの位置を変えて「ヴェイカント」と歌うんです。本来公衆の面前であまり口にできない言葉を、正々堂々と叫べる方法を35年前に発明したわけです。

まあオリンピックはまだこんなもんでしょうけどね。その点こないだ BBC 6 Music でピーター・セラフィノウッチ(Peter Serafinowicz)がやったジョン・ライドンのインタビューはなかなか気が効いてたんだよ。インタビュー最後の会話がこれ。

ピーター「本日はスタジオに来てくれてありがとう。それに"不適切な"言葉を使わずに行儀良くしていただいて恐縮です。BBC は放送であなたがカントリー・ライフ・バター(CUNTry life butter)とか言い出すんじゃないかとすごく心配していたんです。」

ジョン「みんな俺のことを、かなり虚しい(pretty va-CUNT)やつだと思い込んでるからな。」

このインタビューは YouTube にも上がってるんですが、残念ながら上記部分はカットされてます。

2012/04/06

PiL、2012年これからのスケジュールと YouTube ビデオ

PiL - FIB (Benicassim) el 16/07/2010 by feiticeira_org
PiL - FIB (Benicassim) el 16/07/2010, a photo by feiticeira_org on Flickr.

現時点で発表されている PiL の今後のスケジュールですが、まず今月21日の Record Store Day にアナログ EP 「One Drop」が発売されます。これはレコードショップでの店頭販売がメインの限定盤なので、日本にはあまり多く入ってこないかもしれません。国内ではディスクユニオンHMV で通販の予約を受け付けているので、とりあえずは申し込んでおきましょう。レコードプレイヤーを持ってない人も申し込みだけはしておきましょう。入荷数未定で予約先着順ですから、運良く手に入ったら一生の宝物になります。手に入ってからレコードプレイヤーを買っても間に合います。

そして来月28日には待望のニューアルバム「This is PiL」が発売されます。新レーベル「PiL Official」からのリリースとなるので、今のところ日本国内のレコード会社を通じての販売がされるかどうかは不明ですが、まあ入手に関しては心配ないでしょう。ジョニーおじさんが嫌いな iTunes 等を通じたダウンロード販売もされるはずです。

その後は6月29日にセルビアで開催される Belgrade Calling Festival への出演を皮切りにツアーが始まります。今のところ決まっているのはほとんどがイギリスでのコンサートで、来日のスケジュールはまだ出ていませんが、たぶん近いうちにまた来てくれるはずです。

ということで、新作が到着するまでまだ少し時間があります。ここで PiL 復活後のおさらいをしておきましょう。「ALiFE 2009」と「Live At The Isle Of Wight Festival 2011」は持ってますか?まだの人はちゃんと購入しておきましょうね。

YouTube にもたくさんのコンサートビデオがアップされています。その中で公式にプロが撮影した画質、音質の良いものを中心に再生リストを作成してみました。バラバラにアップされている同じコンサートのビデオを続けて観られるようになってます。

  • Country Life British Butter Adverts
    PiL 再始動ツアーの資金源となった伝説のバター CM。放送後、バターの売上が85%もアップ!
  • PiL Live at Coachella 2010
    2010年4月16日、カリフォルニアのコーチェラ・フェスティヴァルに出演したときのステージで、これはネットでストリーミング放送されました。
  • PiL Worldwide Live Broadcast on DetroitCityTV
    2010年4月28日にアメリカ、ミシガン州ポンティアックの Crofoot Ballroom でおこなわれたコンサートで DetroitCityTV がストリーミング放送したものです。
  • PiL Live at the Isle of Wight Festival 2011
    ConcertLive が CD として発売した2011年6月12日、ワイト島フェスティヴァルのステージです。ビデオはイギリスの Sky TV で放送されたものです。
  • PiL Live at Off Festival 2011
    2011年8月7日、ポーランドのカトワイスで開催された Off Festival のステージです。
  • PiL LIve at the Southbank Centre
    2012年3月18日、BBC 6 Music の10周年を記念してクイーン・エリザベス・ホールで行われたコンサートです。

このほかに昨日紹介した Boiler Room のライヴもあるので、全部観ると結構な時間になります。私のお勧めはポーランドの Off Festival 2011 です。これだけがいわゆるPro-Shot じゃなく、観客が撮影したものなんで画質、音質共にちょっと落ちるんですが、それを補って余りある迫力です。昨年のツアー終盤、日本に来る直前のものです。バンドの勢いが最高潮に逹してる時期のやつなので、去年サマソニや新木場のコンサートを観た人は「そう、これ、これ!これなんだよー!」と感じること請け合いです。Albatross ではルー・エドモンズ(Lu Edmonds)が幻のアホウドリ・ダンスを踊っています。

2012/04/05

PiL Live in the Boiler Room

Boilerroom by mezzoblue
Boilerroom, a photo by mezzoblue on Flickr.

先月、日本時間の20日早朝にロンドンのクラブ Boiler Room で行われた Record Store Day お披露目イベントでの PiL ライヴが YouTube で公開されました。ネットで生中継されたされたやつです。ビデオだけじゃなくオーディオトラックの MP3 データも公開されていて、iTunes を使ってダウンロードできるようになっています。曲は次の8曲で、約50分のライヴです。

  1. Deeper Water
  2. This Is Not A Love Song
  3. Disappointed
  4. Warrior
  5. Albatross
  6. Flowers Of Romance
  7. One Drop
  8. Rise

私は早起きしてリアルタイムで観たんですが、なぜかステージの照明がすごく暗くてよく見えませんでした。公開されたビデオもやっぱりそのままで、ジョニーおじさんも心配して「暗くて見えねーよ。みんなちゃんと音聴こえてるか?」って言ってます。

ただし音の方は非常にクリアでベースの音も太く録れてます。2、300人くらいしか入らない小さな会場のようですが、ほとんどスタジオライヴです。普段のライヴ録音では聴こえない演奏の細かな技とかが、はっきりと聴こえます。

なお Boiler Room 側で作成した再生リストだと実際とは逆の曲順で再生されてしまうため、新たに再生リストを作っておきました。下の埋め込みビデオも正しい曲順で連続して観られるようになってます。ただし Boiler Room の中の人がアップロードの際ミスっていて、「This Is Not A Love Song」のビデオだけ抜けてます(MP3 の方はすべての曲が揃っています)。

2012/04/04

There is a PiL in Heaven

John Lydon / Public Image Ltd. by /ivan
John Lydon / Public Image Ltd., a photo by /ivan on Flickr.

既に日本語のライヴ・レビューも出てる(ここここ)のでご存知の方も多いと思いますが、4月1日と2日、ロンドンのクラブ Heven で PiL のコンサートが開催されました。YouTube にもその様子が色々アップされています。

3月の BBC と Record Store Day のミニライヴはビデオやネット中継で私も観ました。ジョニーおじさんは風邪をひいていたらしく声は抑え気味、また招待客中心のせいか聴衆の反応がいまいちだったんですが、今回は2010年7月以来、新曲を引っ提げての地元ロンドンでのライヴということで、大盛り上がりの大成功だったようです。

最近のライヴアルバムや昨年の来日コンサートを観た人たちはよく分かってると思いますが、今の PiL はもうかつての PiL ではありません。昔の曲では基本的なメロディーやアレンジこそ以前の形を踏襲してはいますが、そこに込められ、伝わってくるエモーションが昔とはまるで違います。ルー・エドモンズ(Lu Edmonds)は以前のインタビューで次のように言ってます。

どんな作品にも寿命というものはある。だが曲のオリジナルなエッセンスに忠実であること、それがぼくらのすべきことだったんだよ。過去の作品をなぞるだけのような愚かなこともしていない。ぼくらがやっているのは自分たちの楽器を手に取り、ベストなサウンドを鳴らすこと、そしてジョンの歌をサポートするベストなやり方を見つけることだよ。

人間と同様、音楽作品にも寿命があります。かつて輝いていた作品も時が経つに連れ、その意味と力を失います。もしその作品の中に今も通用する意味が残っていたとしても、アーティストが再びそこに力を吹き込まなければ、人から顧みられず、忘れられてしまいます。

作品に新たな意味と力を吹き込むのは作ったアーティスト本人だけではありません。聴き手もまた力と意味を注ぎ込み生き返らせる役を担っています。ジョニーおじさんも2009年の再始動以来、オーディエンスと一緒になって新しい PiLを作ってきたんだということを、よおく理解してます。だから4月2日には Death Disco を演奏した後でこんなことを言ってたそうです。

力を貸してくれてお前らにはすごく感謝してるよ。こんな風に楽しめるなんて変だよな、これは死を歌った曲なのにさ。でもこれこそがアイルランド風の楽しみ方ってやつかもしれないな。ありがとう、感謝する。みんなに安らかな死がもたらされんことを!

Public Image Ltd live at Heaven: 'Lock up your children'

次のビデオは4月1日のアンコールで演奏されたもので、今までの PiL にはなかったタイプの曲です。ジョンは曲名を紹介してませんが、twitpic にアップされていたセットリストによると「Out of the Woods」という曲のようです。ジョンがこう言ってから曲が始まります。

これはみんなの知らない曲だが、前にも聴いたことがある、そう感じてくれたらと思う。