2011/07/17

彼が今自分の声を使ってやっているのは、以前の彼にはできなかったことだよ - ルー・エドモンズ

FMM 2010 - The Mekons by retorta_net
FMM 2010 - The Mekons, a photo by retorta_net on Flickr.

PiL(Public Image Ltd.)の歴代ギタリストはキース・レヴィン(Kieth Leven)、ジョン・マッギーオ(John McGeoch)、スティーヴ・ヴァイ(Steve Vai)など、強烈な個性を持った錚々たる顔ぶれで、今でもその音を懐かしむファンが少なくありません。一方現在のギタリスト、ルー・エドモンズ(Lu Edmonds)はこれらの歴代ギタリストに比べると「一歩引いた控え目な」印象がありますが、これは彼が意識して選択したスタイルのようです。

2009年末の「ALiFE 2009」と先日リリースされたばかりの「Live At The Isle Of Wight Festival 2011」、わずか1年ほどしか時期の違わない二つのライブ・アルバムですが、両者のトータルな印象は大きく異なります。収録されている曲は同じ、アレンジもほとんど変わっていないにも関わらず、全体から受ける印象が大きく違うんです。特にギターと歌のカラミや間、コンビネーションが格段にアップしています。ルー・エドモンズのギターには「ジョン・ライドン(John Lydon)の歌」をサウンドの中心とし、それを後押しするという明確な意志が感じられます。

昨年春のUSツアー時の Ultimate-Guitar.Com のインタビューでそのへんを語っているのでご紹介します。

USツアーは評論家たちから賞賛のレビューが寄せられていますが、うれしく思いますか?

ああ、でもある意味当然の評価だと思うね。バンドは音楽的にすごくうまくいってるから。もちろんジョンの驚異的な歌唱力が大きいよ。これまでにないほど強力で、半音で三つ、四つ上げても同じようにう歌えるようになってる。彼の声域は驚異的に拡がっているんだ。彼は面白いこともやってて、トルコ音楽みたいな非西欧的な要素も柔軟に取り込んでいるよ。

過去の PiL の数多くの曲が今回のツアーで新たな命が吹き込まれたわけですが、こうした曲をあらためてライブで演奏するにあたって重視したことは何かありますか?

どんな作品にも寿命というものはある。だが曲のオリジナルなエッセンスに忠実であること、それがぼくらのすべきことだったんだよ。過去の作品をなぞるだけのような愚かなこともしていない。ぼくらがやっているのは自分たちの楽器を手に取り、ベストなサウンドを鳴らすこと、そしてジョンの歌をサポートするベストなやり方を見つけることだよ。

ジョンと一緒に仕事をするのはどんな感じですか?昔と今では違いますか?

チョークとチーズくらい違うよ。80年代の中頃、色々な面で当時バンドやジョンは全力投球していたとは言えないと思うんだ。ジョンはビル・ラズウェル(Bill Laswell)がプロデュースした「Album (1986)」とシングル「Rise」で成功をおさめていた。そこでギターを担当していたのはスティーヴ・ヴァイ(Steve Vai)だったし、ジョンは「Flowers of Romance (1981)」や「This Is What You Want, This Is What You Get (1984)」の実験的モードから抜け出したばかりの頃だった。だからぼくらが最初に集まったときは、ただ漠然とコード進行と曲を憶えるだけだった。ぼくらはバンドとしてあまりいい状態じゃなく、みんなあまりシリアスに考えてなかったんだ。ジョンに関して言えば、あるときは興味を持って仕事をしていたけど、そうかと思えば退屈そうにしたりでムラがあったと思う。でも今は違う、彼はあらゆることに興味を持ち、すべてに集中して、すごくいい時間を過ごしている。彼が今自分の声を使ってやっているのは、以前の彼にはできなかったことだよ。いや実際、ぼくは今まで彼以外の誰ひとりあんな風に歌うのを聴いたことないよ。

彼と一緒に仕事をすることでクリエイティヴな刺激を受けたということですね?

まさにその通り。ジョンはすごくオープンな心の持ち主だ。たとえばリハーサルでぼくが最高のギターを使ってプレイしようとすると「別の楽器を使ってみたら?」なんて言い出すんだ。で、ぼくはサズを取って演奏を始める。サズというのはベースギターと同じくらい長いネックを持つトルコのリュートなんだ。今じゃPiLの多くの曲で何よりもサズを使うようになってる。

上の写真でルーが持っている楽器がサズです。ライブでは「This is not a Love Song」や「Warrior」、「Open Up」などでサズが使われています。アルバム「Happy?」だと「Hard Times」のイントロ、あれがルーのサズの音です。

ルーのインタビューにはほかにもソ連(エストニア)でのライブや耳鳴りの悪化で脱退したときのことを話しているものがあるんですけど、それはまた別の機会に。