2010/12/24

Christmas Cornucopia - アニー・レノックス

クリスマス・ソング特集の最後は大御所登場、アニー・レノックス(Annie Lennox)です。

11月にリリースされた新作「Christmas Cornucopia」はいわゆるクリスマス・キャロル、ようするに賛美歌とトラディショナル・ソングのカバー集です。国内盤の発売がないので、日本ではリリースされたこと自体知らない人が多いと思いますが、本国 UK ではアルバムチャートの上位にランクインしています。

「クリスマス・ソング?賛美歌?興味ねー。」という人も、とりあえず1曲お聴きください。「God Rest Ye Merry Gentlemen」です。天使が空から降りてきてキリスト様の生誕を告げ、みんなでベツレヘムへ行進するとかいう内容の賛美歌なんですが、アニー様が歌うとまったく違う世界が広がります。キリスト様はともかく、アニー様には誰もがひれ伏さずにいられないはずです。ちなみにアニー様の誕生日は本当に12月25日です。

レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)をもう一度復活させるとしたら、ヴォーカリストは彼女しか考えられません。これを聴いたみなさんなら、もちろん異議ないはずです。

なお、ステージでアニー様がお召しになっている、胸に「HIV Positive」と書かれた服は、Sing キャンペーンの T シャツです。クリスマス、お正月、ヴァレンタインなどのプレゼントにお勧めします。

2010/12/23

ワイアーからのお願い (Red Barked Tree - ワイアー)

ワイアー(Wire)の曲のタイトルや歌詞で Please なんて言葉が出てくると、当然こんなふうになります。

おねがいだから
ぼくの背中に刺さった
きみのナイフを抜いてください
それから抜くときは
どうかたのむから
ひねったりしないで

ワイアーの新作「レッド・バークト・トゥリー(Red Barked Tree)」は、この歌い出しの「Please Take」で始まります。スキンヘッドのグレアム・ルイス(Graham Lewis)が誘うような目線で、しっとりと歌い上げます。

前作「オブジェクト47(Object 47)」の記事を先日書いたばかりですが、2年半ぶりの新作「Red Barked Tree」が12月20日にリリースされました。正確に言うと、ワイアー公式サイト pinkflag.com 限定の先行リリースです。ダウンロード版のフォーマットは MP3 とflac、2種類での提供です。もちろんオラは flac を予約、ゲットして毎日聴いています。ただし一般の CD ショップや iTunes で入手できるようになるのは1ヶ月後です。待てない人は pinkflag.com で買いましょう。

そういえば1曲「Two Minutes」が無料でダウンロードできるようになっているので、これ聴いてがまんするという手もあります。でも今回のアルバムは「Two Minutes」みたいな曲ばかりだと思ったら大間違いなのでよろしく。

実は「Red Barked Tree」の収録曲、アルバム発売前のギグで何曲か既に演奏していて YouTube を探すと出てきます。11月8日に UK 音楽サイト The Quietus 主催でおこなわれたギグの映像が上がっていたので「Adapt」という曲をご紹介します。コリン・ニューマン(Colin Newman)は「これはクリスマス・ソングだ!」と申しております。気象変動、災害、金融市場の破綻、児童労働、政治の空洞化などの問題がうつくしいメロディーで歌われています。

メリー・クリスマス!

2010/12/19

40キロ夜間行進訓練と鯉 (トラウト・マスク・レプリカ - キャプテン・ビーフハート & ヒズ・マジック・バンド)

In Memoriam: Trout Mask Replica by BGSU University Libraries
In Memoriam: Trout Mask Replica, a photo by BGSU University Libraries on Flickr.

キャプテン・ビーフハート(Captian Beefheart)を聴いたことがありますか?先日亡くなったドン・ヴァン・ヴリート(Don Van Vliet)がやっていたバンドです。

アヴァンギャルドと形容される音楽は、その実態はともかく頭のいい人たちが演る音楽ということになっています。そのテのアーティストはだいたい痩せっぽちでインテリっぽい顔をして、難しいことを話す人が多いからです。そのファンもまた、同じように性格の悪そうな人が多く集まります。素人がうかつに曲の感想などを述べることはできません。

キャプテン・ビーフハートこと、ドン・ヴァン・ヴリートの音楽もアヴァンギャルドに分類されるのですが、彼の場合はちょっと事情が異なります。それは彼のルックスが胡散臭そうなおっさんで、けっして頭良さそうには見えないからです。その分、曲を聴いて「何これ?変なのー」と気軽に言える親しみやすさを備えています。

またアヴァンギャルド・ミュージックといえば、その多くが即興演奏を中心としたものですが、キャプテン・ビーフハート & ヒズ・マジックバンド(Captain Beefheart & His Magic Band)の場合はぜんぜん違います。各パートの演奏内容は予めかっちりと決められており、そこからはずれることは許されないのです。バンドメンバーはその内容に沿って厳密に演奏しなければなりません。ロックやブルースというより、むしろクラシック音楽奏者的な正確さが求められます。

ヴォーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムなど、各楽器はそれぞれ異なるキー、リズム、メロディで曲が進行します。曲やパートによっては、キーとかくり返しパターンがまったくない場合もあります。個々のバンドメンバーは周りの音を聴きながら演奏すると、自分がどこ弾いているのわからなくなってします。かと言って聴かないとやはり曲がどこまで進んでいるのかわかりません。マジック・バンドのメンバーにとって、演奏するということは自分との戦いを意味していたのです。

「トラウト・マスク・レプリカ」時代にマジック・バンドでギターを弾いていたズート・ホーン・ロロ(Zoot Horn Rollo)による回顧録「ルナー・ノーツ」という本があります。そこに書かれているバンドの様子はまるで新興宗教か管理者養成学校のようです。ドンは教祖様かイケイケ企業のワンマン社長のようです。ロロは給料もろくに与えられず、合宿所に閉じ込められ、毎日毎日、朝から晩まで練習です。自分がそれまでに習得したテクニックはすべて忘れて、ドンが指示する通りに弾くよう強要されます。うまく弾けないとプライドというものが何であったのか思い出せなくなるくらい、長時間に渡ってミソクソにこきおろし、精神的に追い込みます。

聴いたことない人はおそらく何を言ってんだかわかんないでしょうから、とりあえず1曲お聴きください。アルバム「トラウト・マスク・レプリカ(Trout Mask Replica)」から「Hair Pie Bake 2」です。

いかがでしょう?バンドの一人一人が死に物狂いで戦っている様子、感じ取っていただけたでしょうか?「トラウト・マスク・レプリカ」には、そこらのアヴァンギャルドにはない血と汗と涙、根性と苦悩、陰謀と挫折があります。それが発表後40年経った今でもこの作品が愛されている秘密です。この後さらに60年経ち、今チャート上位にあるような音楽がすべて忘れられてしまっても、ビーフハートの音楽だけは「おいおい、いったいこれ何だよ?」とか言われながらも聴かれていることでしょう。

それにしても「鱒のマスクの複製」がなんで「鯉」なんだ?

2010/12/14

Frankly, Scarlett, I Don't Give a Damn - スパークス

スパークス(Sparks)、1994年リリースのアルバム「Gratuitous Sax & Senseless Violins」収録の曲で、もちろん元ネタは「風と共に去りぬ」です。

んで、ツインピークス(Twin Peaks)で製材所を経営していたジョシー・パッカード(Josie Packard)の元ネタがスカーレット・オハラ(Scarlett O'Hara)になるわけです。

だからどうしたって?

若造、こういうくだらないことを知ってるか、知っていないかで、ものごとの味わいが違ってくるのだよ。教養というやつさ。

それにしても、この時期のスパークスでパーカッションを担当しておられたクリスティ・ヘイデン(Christi Haydon)様は、今、どうしておられるのでしょう?クリスティ様はエンタープライズ号に乗務していたこともある方です。

1995年、ドイツでのライブ映像です。クリスティ様の勇姿をじっくり味わっていただきたい。

すっげー虚しい (プリティ・ヴェイカント - セックス・ピストルズ)

セックス・ピストルズ(Sex Pistols)の曲、「プリティ・ヴェイカント(Pretty Vacant)」のオリジナル・リフは、グレン・マトロック(Glen Matlock)がアバ(ABBA)の「S.O.S.」からいただいてきたそうです。結果的には似ても似つかない曲になっていますけど。

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若い人はアバのビデオを観て「うわ、昔のバンドってこんな変な格好してたの?こんなの流行ってたの?」って思うかもしれません。いいえ、あんな格好は流行ってませんでした。当時もアバの異様さは突出していました。

ちなみにグレン・マトロックとシド・ヴィシャス(Sid Vicious)は二人共、アバの隠れファンでした。

俺たちはアバのファンを一人クビにして、同じポジションに別のアバファンを入れたんだ。(ジョニー・ロットン)

また、シドはストックホルム空港でアバの女性メンバー二人に出会ったことがあります。サインをもらおうと駆け寄ったところ、悲鳴をあげて逃げられてしまったそうです。

以上、ネタ元は No Irish, No Blacks, No Dogsです。

ところで、「すっげー虚しい(Pretty Vacant)」と歌うおじさんたちが、この上もなく充実しているように見えるのはなぜでしょう?

おじさんたちといっしょに歌いたい人はこちらを参照

2010/12/11

Object 47 - ワイアー

http://en.wikipedia.org/wiki/File:Wire_Object_47.jpg

若い人などは今でも、ロックバンドといえば「一発当たればお金持ちになれる商売」というイメージを抱いている人が多いかもしれません。残念ながら、もう既にそういう時代ではありません。バンド業だけで裕福な暮しができるのは、本当にごくごく一部の人たちだけです。

普通のロックバンドの現実は厳しいものです。バンドを維持していくためにはメンバーの食い扶持だけでなく、レコーディングやツアーのマネージメントをはじめ、諸々の手伝いをしてくれるスタッフの給料も払っていかなければなりません。サウンドにこだわって自前のスタジオやステージ機材を揃えたりすると、その維持、管理だけで毎月かなりのお金が飛んでいきます。それに所詮は人気商売です。CDを作ったから、ツアーをしたからといって、確実にお金が入ってくる保証はありません。

ワイアー(Wire)は1976年にイギリスで結成された4人組のバンドです。いわゆる 初期のロンドン・パンクとして登場しました。1990年代に一時活動を休止していたこともありますが、長い間ずっとオリジナルメンバーで活動を続けてきました。初期のパンクバンドとしてはかなり有名なほうですが、CD はそんなに売れません。ツアーでまわるのはどれも小さな会場です。

おまけにこの人たちは、あえて売れるのを拒否するようなやり方ばかりしています。ライブで演奏するのは毎回ほとんど新曲です。みんなの知ってる古い曲は、アレンジを大幅に変えて、すぐにそれと分からないように演奏します。たとえばバンド初期の人気曲に 12 XU というのがあるのですが、昔出したライブアルバムには、この曲が「イントロだけ」しか収録されていませんでした。「それでこそオリジナル・パンク、オトコのバンドだぜ!」と言えなくもないのですが、一方でお金にはずっと苦労してきたはずです。

30年以上も苦楽を共に活動を続けているので、ワイアーのメンバーはみな年を取っています。ずばりジジイです。しかも写真を見てわかる通り、全員かなりコワモテのジジイです。メンバーのうち三人は50代後半で、最高齢のブルース・ギルバート(Bruce Gilbert)は1946年生まれ、現在64歳です。グリーン・デイみたいなのをパンクだと思っている人がワイアーのライブへ行くと、ショーの間ずっと、ステージ上から爆音でコワいオヤジに脅迫されているような気分になるはずです。

そんなワイアーにも、一度だけまとまったお金が入ってきたことがありました。それは先日紹介したエラスティカ(Elastica)のコネクション(Connection)が売れたときです。実際、2000年代に入ってからのワイヤーの復活は、このときのお金が元手になって実現できたのだと思います。

復活して再び注目されるようになったワイアーは Read & Burn 01 と 02、そして Send という新作を作成しました。さらに、過去のライブ音源や映像の CD/DVD 化や旧作のリマスターに取り組みました。

1970年代後半登場のパンクバンドには、ヒッピー文化から引き継いだ平等主義思想の名残りが強く残っていました。そのためセックス・ピストルズ(Sex Pistols)を始め、多くのバンドが曲のクレジットを「メンバー全員の名前」で記載していました。初期のワイヤーもそうでした。

ところが、リマスター版のボックス・セットの発売に当たり、スリー・ガール・ルンバ(Three Girl Ruhumba)などファーストアルバム「ピンク・フラッグ(Pink Flag)」収録曲のクレジットを、実際に作曲に関わった人のものに変えようという提案がコリン・ニューマン(Colin Newman)から出されたのです。これに異議を唱えたブルース・ギルバートは、最終的にバンドを脱退することになってしまいました。傍から見ると、そんな30数年一緒にやってきて、お互いトシなんだからもうちょっと仲良く、と思うのですがそうはならないのが人生です。

現時点でのワイアーの最新アルバムは2008年に発表された「オブジェクト47(Object 47)」です。ブルース・ギルバート脱退後、初のアルバムということになります(正確に言えば、前作の Read & Burn 03 のレコーディングにもブルースは参加していないのですが)。

ギタリストのブルースがいなくなったためか、全体に轟音ギターと曲のテンポが抑えられています。特に1曲目「ワン・オブ・アス(One of Us)」はちょっと今までのワイアーにはなかったタイプの曲で、音だけ聴くと「さあみんなで手を取り、朝日に向かって歩き出そう」という雰囲気です。でも歌詞がやっぱりワイアーです。出だしはこんなフレーズで始まります。

文句を言ってもいいかな?きみがそんなつもりだったとは思ってもみなかった

思わず一緒に歌いたくなってしまう軽快なリフレインは

ぼくらの中の一人は、ぼくらが出会ったあの日を悔やむのだろう

もうあからさまにブルース・ギルバートへのあてこすりです。30数年一緒にやってきて、60という年齢で去って行ったメンバーに対して、そこまで言うかという内容です。

でもね、違うんです。ワイアーだから。ワイアーにかかれば仲間割れもアートになるんです。嘘だと思ったら、リフレインの部分、一緒に歌ってみてください。

One of us will live to rue the day we met each other

発音しやすいようにひらがなにすると、こうなります。

わーんの すぅぃ とぅ ぅぃ てぃ ち

歌っているうちに、ほら、One of Us の one が、あなたの知ってる誰かに思えてくるでしょう?なんだか切ない気持ちになってきたでしょう?さらに繰り返してると、だんだん自分自身のことのように思えてきます。

One of Us の元ネタは、ひょっとしたらこれかも

2010/12/07

アヴァロン島から The Bogus Man が帰ってきた (オリンピア - ブライアン・フェリー)

http://en.wikipedia.org/wiki/File:Bryan_Ferry_-_Olympia.jpg

一般にロキシー・ミュージック(Roxy Music)/ブライアン・フェリー(Bryan Ferry)の代表作と言えば「アヴァロン(Avalon)」ということになっていますが、そう主張するみなさんに対しては「本当にそうか?ロキシーやフェリーのアルバム、ほかにも聴いてそう言ってのか?ホントはアヴァロンとボーイズ・アンド・ガールズ(Boysand Girls)と東京ジョー(Tokyo Joe)くらいしか聴いたことないんとちゃうか?」と問いただしたいと思います。

「ブライアン・フェリーを聴き続けて35年、1977年のソロ来日公演はヤングミュージックショーで見ました」というオラにとって「アヴァロン」は、あまり高く評価できないアルバムです。むしろ「ブライアン・フェリーが伝説の島アヴァロンへ行ったっきり、帰ってこなくなってしまった」因縁の作品です。

「アヴァロン」の発表は1982年、その後の20年ほどは、ずっとアルバムが出るたび、律儀に買い続けてきたものの、フェリーの声が霧の向こうのアヴァロン島から流れてくるみたいで、オラは長いこと、とても寂しい思いをしてきました。

変化が訪れたのは2001年のロキシー再結成あたりからです。2002年発表の「フランティック(Frantic)」は、冒頭の「It's All Over Now, Baby Blue」を聴いた瞬間「オラのブライアン・フェリーが帰ってきた!」と確信し、思わず泣いてしまいました。

聞くところによると、ブライアン・フェリーは「アヴァロン」の頃、幼なじみの女性と結婚し、長く連れ添い子供も何人かもうけたにもかかわらず、「フランティック」発表後に別れてしまったそうです。原因はこれですね。間違いありません。元奥さんには大変申し訳ありませんが、オラはうれしいです。

実際のところ「フランティック」では、半分くらい戻ってきているものの、まだ片足はアヴァロンに置いたままという感じでした。続く「ディラネスク(Dylanesque)」に期待したのですが、これもいまひとつ本調子という感じではありませんでした。

ブライアン・フェリー、もうダメなのか。もはやこれまでかと、なかば諦めつつ新作の「オリンピア(Olympia)」を聴いたのですが、すごい、これ、予想に反して大傑作。1曲目の「You Can Dance」はイントロは「アヴァロン」からのサンプリングですが、そこから先のダークな展開が今までと違う。やった、帰ってきた。本当にアヴァロン島から The Bogus Man が帰ってきた!

「You Can Dance」のビデオは、「マニフェスト(Manifesto)」のジャケットからマネキンさんたちが抜け出して踊っているような映像で、フェリーの脇でお稚児さんのようにギターを弾いているのがオリバー・トンプソン(Oliver Thompson)さん、「ディラネスク」の頃から参加している兄ちゃんです。なかなか淫靡な音を出します。フェリー・バンド以前はこれといった活動をしてなかったみたいなんですけど、いったいどこで見つけてきたんでしょう?

この音、この声、そしてダンスフロアの照明が作り出す光と陰の中で経験したはずのない記憶がよみがえってきます。

去年マリエンバートでお会いしましたよね。

2010/12/05

Home Sweet Home (...at Christmas) - ヴィヴ・アルバーティン

Viv Albertine by Man Alive!
Viv Albertine, a photo by Man Alive! on Flickr.

クリスマスソング第二弾です。今日はヴィヴ・アルバーティン(Viv Albertine)の「Home Sweet Home (at Christmas)」をご紹介します。

ヴィヴ・アルバーティンと言えばもちろん、あのスリッツ(The Slits)のオリジナルメンバーのヴィヴです。あまり知られていませんが、2008年のスリッツ再結成には、当初ヴィヴも参加していました。

テッサ(Tessa Pollitt)が「またバンドで一緒に演りましょうよ」って言ってきたの。「でも、4ヶ月練習して曲を全部思い出さなくちゃダメよ」って。私、25年の間、一度もギターにさわってなかったのよ! それで近所のあんちゃんからフェンダー・スクワイアを買って、キッチンのテーブルにすわって練習を始めたの。そしたらダンナが「頭おかしくなったのか?いったい何をやってるんだ?」って。でも前にも同じことがあったのよ。スリッツを始めた頃、仲良くしてた友達が「ヴィヴ、あなたにギターなんか弾けるわけないでしょ。止めて何かほかのことをしなさいよ。」って。今になって、昔とまったく同じことを言われたわけ。冗談じゃないわ。あなたたち、私を見くびらないで。
February 25th, 2010 - thequietus.com

ということで、小学生の娘を持つ50代既婚女性として、スリッツの活動を再開したヴィヴですが、Ladyfest など数回のギグに参加しただけでスリッツを脱退してしまいます。理由は「かつてのスリッツの曲、そして現在のアリの曲が、今の自分にはしっくりこない」ということでした。

(スリッツを脱退したのは「Shoplifting」みたいな曲を演るのがイヤだったんですか?という質問に対し)
それもあるわね。「Shoplifting」は特に恥かしい(笑)。でもプレイ自体はいいのよ。自分の演奏したギターパートは大好き。我ながら素晴しいと思う。ギターはいいんだけど、あの歌詞を今、自分が歌うということにしっくり来なかったの。それにセットリストの半分はアリ(Ari Up)の新曲で、アリの曲にも共感できなかった。私は彼女のバックバンドのメンバーじゃないのよ。
January 13th, 2010 - www.pennyblackmusic.co.uk

その後、ヴィヴ・アルバーティンはソロアーティストとしての道を歩み始めました。で、本題の「ホーム・スウィート・ホーム(アット・クリスマス)」です。

これ元は「Confessions of a MILF」というタイトルで、あちこちのライブで演奏されています。自虐ネタで、YouTube に上がってる映像を見ると、タイトルを紹介するところで必ず笑い声が上がります。演奏はこれ以上ヨレようがないというくらいヨレヨレです。

ヨレヨレのミックスはデニス・ボーヴェル(Dennis Bovell)が担当しています。キーボードを弾いているのは UK 音楽サイト The Quietus のライターで、Typical Girls: The Story of the Slitsを書くことによりスリッツ再結成のきっかけを作った Zoe Street Howe です。ヨレヨレのドラムは何でこんなところにいるんでしょう、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター(Van Der Graaf Generator)のガイ・エヴァンス(Guy Evans)が叩いてます。

MP3 ファイルは このページ一番下にある欄にメールアドレスを入力すると、無料ダウンロード用のリンクが送られてくるようになっています。ヨレヨレの曲なので「ああ、ヨレヨレだなあ。どうしてこんなにヨレヨレなんだろう。」と聴いているうち、あなたもヨレヨレになるかもしれません。

2010/12/02

ブラック・クリスマス - ポリー・スタイリーン

2010年の暮れも押し迫ってきて、来月あたりお正月になりそうな気配ですが、みなさんいかがお過ごしでしょう。

この時期になると、どうしても出てきてしまうのがクリスマスソングというやつですが、今日はイギリス在住のポリー・スタイリーン(Poly Styrene)さんの新曲をご紹介します。

ポリーさんはもちろん、かのエックス・レイ・スペックス(X-Ray Spex)のヴォーカリストだった人です。2008年にエックス・レイ・スペックス再結成コンサートやゴールドブレイド(Goldblade)との共演シングルなどを出した後、しばらく音沙汰がなかったのですが、現在ソロとしてニューアルバムを作成中で、来年3月にリリースされる予定です。

この曲はアルバムからの先行シングル(?)で、娘のセレスティ・ベル(Celeste Bell)さんとの共作、歌も一緒に歌っています。また、Web サイトでメールアドレスを登録すると、MP3ファイルを無料でダウンロードできるようになっています。

楽しいクリスマスなんて知らない
サンタクロースはろくでもない男だった

黒い煙が夜の空に吹き上がる
黒い、真っ黒なクリスマスを夢に見るの