2012/02/27

セックス・ピストルズがユニバーサル・ミュージック・カタログ UK に移籍

久しぶりのセックス・ピストルズ(The Sex Pistols)に関するニュースです。先日の PiL の新レーベル設立に続き、ピストルズもヴァージンを離れ、ユニバーサル・ミュージック・カタログ UK に移籍しました。北アメリカに関しては元々ユニバーサルワーナーで変わりないのですが、他の地域はすべてユニバーサル・グループからの発売になるようです。今年は、ピストルズ唯一のスタジオ・アルバム「Never Mind The Bollocks Here's The Sex Pistols」リリース35周年になるのですが、その記念特別盤の発売も予定されています。

音楽は偉大な者の手で創られてこそ初めて、偉大なものになり得る。
セックス・ピストルズは、最も偉大なる存在だ。
ユニバーサル・ミュージックは、偉大な俺たちを迎え入れるに当たり、トロフィー保管庫まで用意した。
音楽は自然の模倣に過ぎないが、セックス・ピストルズは自然そのものだ。
だから俺たちに金を貢ぐのをためらうことはない。
ご静聴、感謝する。

ジョニー・ロットン

あー、そこのきみ、「なり得る」を「なりえる」なんて読むなよ。ジョニーが頭悪そうに聞こえるぜ。「なりうる」って読もうな。いいか、ジョニーおじさんとの約束だぜ。

2012/02/21

PiL、新レーベルの立ち上げとニューアルバム「This Is PiL」の発売日発表

Public Image Limited @ Glasgow O2 Academy by twistyfoldy.net
Public Image Limited @ Glasgow O2 Academy, a photo by twistyfoldy.net on Flickr.

つい先ほど PiL の公式サイトで、新レーベルの立ち上げとニューアルバムの発売日が発表されました

まず、アルバムに先がけて4月21日に Record Store Day 限定アナログ EP「One Drop」が発売されます。収録されるのは以下の4曲。

  • One Drop
  • I Must Be Dreaming
  • The Room I Am In
  • Lollipop Opera

そして待望のアルバム「This Is PiL」は5月28日に発売されます。これらは何れも、新しく自分たちで設立したレーベル「PiL Official」からのリリースとなります。

ヴァージン(現 EMI?)との契約がずっと尾を引いてゴタゴタしていたのが、どうやら解決したみたいです。結局、既存のレーベルとは契約せずに自前のレーベルを作ることになったのですが、うん、そのほうがいいよ、絶対。

One Drop には、俺が育ったロンドンのフィンズベリーパークという場所が反映してる。俺という人間を形作り、文化的にも音楽的にも大きな影響を及ぼした場所だ。この先も一生、あの場所とのつながりを忘れることはない。だが同時に、生まれた場所に関係なく、今も昔も、そして未来の若い連中にも共通する感情を歌ってるんだ。今年はロンドンでオリンピックがあるが、それでロンドンやイギリスのためになることが何かあるのか...

「One Drop」もう聴きました?みんな待ち切れなくて、SoundCloud にアップされている非公式なやつ(2月13日に BBC 6でオンエアされた内容を録音したもの)を聴いてるんだけど、ビットレートが低いせいか一部音が割れて聴こえるんだよね。早いとこ、この曲だけでも正式のちゃんとした音源をインターネットで公開して欲しい。今年のオリンピックのテーマソングにぴったりだと思うよ。

Public Image Ltd., 'One Drop'

2012/02/19

こんな陳腐な歌のいったいどこがいいんだ (I Can't Believe That You Would Fall For All The Crap In This Song - スパークス)

Ron and Russell Mael, aka Sparks by mellotrongirl
Ron and Russell Mael, aka Sparks, a photo by mellotrongirl on Flickr.

世の中には陳腐なありふれた表現の作品がたくさんあります。ありふれていると言うくらいですから、世の中にある大半のものは陳腐でありふれてます。ラヴソングなんか、その最たるものです。

でも、ありふれるくらいですからニーズはたくさんあるんです。多くの人が求めているものは、当然提供しようという人もたくさん出てきますから、似たようなものがたくさん出てくるのは仕方ありません。

ところが人は、自分の求めているものがありふれていることに気付くと、「ありふれている!俺が欲しいのは、こんなんじゃない!」と文句を言ったりします。とはいえ、じゃあ自分で作ってみろと言われると、やはりありふれたものしか出てこなかったりします。

ありふれたものが嫌いな自分が出せるものが、実はありふれたものしかないってこととに気付き、絶望してしまう人もいます。でもよくよく考えてみると、自分の言いたいことは、ありふれたことかもしれないけれど、それでも言いたいんだから、ありふれていたって構わない、言ってしまえ、歌ってしまえ、というのもありです。

それでとにかくありふれたことを力いっぱいやってみると、ありふれているんだけど、誰かがにっこり笑ってくれたりして、ありふれているんだけど、幸せな気持ちになったりします。

スパークス(Sparks)の歌というのは、昔からずっと、全部そういう歌です。この曲は振り付けもシンプルでわかりやすいので、力いっぱいがんばりましょう。健闘を祈ります。

きみが欲しいんだ
きみなんだ、きみなんだ、何より欲しいのはきみなんだ
きみを愛してる
きみだけだよ、きみだけだよ、きみだけを愛してる

こんな陳腐な歌のいったいどこがいいんだ
こんなくだらない歌にだまされるなんて信じられない

誓うよ
永遠に、永遠に誓うよ
一緒だよ
いつまでも、いつまでも一緒だよ

こんな陳腐な歌のいったいどこがいいんだ
こんなくだらない歌にだまされるなんて信じられない

きみが欲しいんだ
きみなんだ、きみなんだ、何より欲しいのはきみなんだ
きみを愛してる
きみだけだよ、きみだけだよ、きみだけを愛してる

2012/02/13

20年ぶりのニューアルバム「This Is PiL」は初夏にリリース!

PiL, John Lydon, Primavera Sound Festival 2011 by jaswooduk
PiL, John Lydon, Primavera Sound Festival 2011, a photo by jaswooduk on Flickr.

つい先ほど、PiL のオフィシャルサイトで待望のニューアルバムに関する発表がありました。以前報じられていた通りタイトルは「This Is PiL」、12曲入りのアルバムで5月か6月頃にリリースされるそうです。アルバムに先行して「One Drop」という限定アナログ盤 EP のリリースも決まっていて、こちらは4月21日の Record Store Day に発売されます。

またこの発表の少し前、BBC ラジオ6 の番組にジョン・ライドン(John Lydon)が登場して、ラジオ 6 Music 10周年記念コンサートへの PiL としての出演がアナウンスされました。これが2012年の PiL 初ライヴになります。

それからもうひとつ、同じラジオ6 の Steve Lamacq Show で今日、新曲の「One Drop」が初披露されます。イギリス時間で16:00から19:00の番組なので、日本時間だと今晩深夜1:00から4:00までになってしまうのですが、この時間帯のどこかで新曲が放送されます。

いやあ、長かったねえ、前作「That What Is Not (1992)」から20年。今のメンバーで2009年暮れからライヴ活動を再開、資金稼ぎのツアーで1年半。レコーディングは昨年9月に完了したものの、レコード会社が決まらなくてずうっと出せなかったアルバムがやっと出ます。

まあ普通ならもっと簡単に出してるんですよ。レコード会社と適当なところで折り合い付けるとか、契約がゴタゴタしてるなら PiL の名前は諦めて別のバンド名で再出発して自前のレーベルを立ち上げるとか、色々テはあったはずなんです。でもそれをやらないで20年かかったんです。

彼が具体的に何にこだわって、どう戦ってきたのか、細かいことはよくわかりません。でも、明かなのは、ずっとそうしてきたからこそ今のジョン・ライドンがあり、あの驚異的な声が出るようになったんです。ずいぶん遠回りして、やっとここまで来たんです。

もう少しです。楽しみに待ちましょう。今年も日本に来てくれるかなあ?

(2012/02/14追記)
昨夜 BBC 6 の放送で新曲「One Drop」を聞き損ねた人、BBC の Web サイトで聴けるようになっています。「Listen Now」ボタンを押して、プログラムの時間を 1:16:00 あたりに合わせてください。1週間限定の公開なので、お早めに。

2012/02/12

おかえりなさい (タホ湖 - ケイト・ブッシュ)

Lake Tahoe by wili_hybrid
Lake Tahoe, a photo by wili_hybrid on Flickr.

山の水は冷たく、泳ぐなんてとても無理。ただ岸に立って、眺めることしかできません。でもひょっとしたら、湖の底に沈んだ女性を見ることがあるかもしれません。言い伝えでは、いつの日か突然彼女が浮び上がって、現れると言われているのです。

ヴィクトリア調のドレスを身に纏った彼女は、迷子になった飼い犬を「スノーフレーク、スノーフレーク!」と名前を呼びながら探していたのですが、その途中、誤って湖に転落し溺れてしまいました。かわいそうに、陶器の人形のように、湖の底に沈んでいったのです。

彼女が目を覚ますと、家には誰もいませんでした。長らく留守にしている間に時計は止まってしまったのです。家には誰もいませんでした。

彼女が飼ってる年老いた犬は眠っていました。もう足が弱っていて、満足に歩けなかったのです。でも犬は夢の中で立ち上がり、走っていました。岸に沿って、ぬかるんだ野原を走りました。お化けの出そうな怖い森を通り抜け、彼女を探して走りました。

家のベッドは整えられ、食事のテーブルも準備ができていました。玄関のドアが開いて、誰かが呼んでます。彼女です。

こっちよ、こっちよ! おかえりなさい!あなたの大好きな骨やビスケットが用意してあるわよ。待ってたのよ。

さびしかった?私のこと、恋しかった?ほら、キッチンよ。あなたが眠るカゴがあるでしょう。ここは玄関ホール、いつもここで私を待ってるのよね。こっちは寝室だけど、ここは入っちゃだめよ。そしてここが私の膝、枕にして眠っていいのよ。

おいで、いい子ね。おかえりなさい。

おかえりなさい。

ケイト・ブッシュ(Kate Bush)の曲の評価で「癒される」「落ち着く」「おやすみの音楽にぴったり」なんてのをよく見かけるんですが、えーっ、みんなホントにそうなの?

オラなんか、この曲聴くと涙と鼻水で寝るどころじゃないんですけど。ケイト・ブッシュに「おかえりなさい」なんて歌われたら、ジョン・ライドンだって涙がこみ上げてきて、洟かみながらじゃないと聴けないと思うぞ。

2012/02/11

きもちわるいですか? (The Light Pours Out of Me - Magazine)

Little insect on the wall by drkaos86
Little insect on the wall, a photo by drkaos86 on Flickr.

あなたがある音楽を聴いて「すばらしい!最高だ!!」と感じたとしても、ほかの人が同じように感じるとは限りません。たとえ「すばらしい!」と感じる人が数多くいたととしても、「こんなのどこがいいの?」という人が必ずいます。ほとんどの場合、音楽の好き嫌いはその人の感じた結果であって、意識的な選択によって生じるものではありません。

意識が高度に発達した生物においても、知覚や思考は無意識に生じるのがふつうである。なかでも、人間はその最たるものにちがいない。はっきりと意識される知覚は五感を介して受容することのごく一部であって、それよりもはるかに多くを人間は閾下知覚によって感じ取る。意識に上るのはすでに知っていることの薄れかけた影でしかない。

現に知っていることと、意識を介して学習することを同等に置くのは致命的な誤りである。精神の寿命と肉体の寿命は表裏している。覚醒した意識にばかりすがって制御しようとすれば、精神は機能しない。

- 「わらの犬(Straw Dogs) 2002」ジョン・グレイ(John Gray)

もちろんオラは、マガジン(Magazine)のサウンドやハワード・ディヴォート(Howard Devoto)の声がすばらしいと感じます。子どもの頃は「このすばらしさが、どうしてみんな分からないのだろう?」と思っていたのですが、今は大人になったので、分かんない人には分かんないんだと分かります。どっちかと言うとハワード・ディヴォートの声やルックスは「あー、あたしこのタイプ、絶対ダメ!」という人が多いことも、今は経験で知ってます。

好きな人も嫌いな人も、選択した結果じゃないんだから、仕方ないんです。最初っからそうなんです。なんでか知らないけど、人間はそうゆう風になってるんです。

でもね、今まですごくイヤだったものが、ある日突然好きになることもあるんです。だからもう一度聴いてみてください、マガジン。

時は
飛ぶように過ぎ去るかと思えば
のろのろと這いまわる
壁の表面を上に、下に
虫けらのように

光がぼくの中から溢れ出す
光がぼくの中から溢れ出す

沈黙の陰謀は
どうしてもぼくを洗脳したいようだ

光がぼくの中から溢れ出す
光がぼくの中から溢れ出す

つめたい日の光が
ぼくの中から溢れ出す
ぼく自身は照らさず
そのままにして

光がぼくの中から溢れ出す

この静止した世界で
まるで血が吹き出すように
一気に溢れ出す
心臓の鼓動で
愛が叩きのめされる

光がぼくの中から溢れ出す

何人が死んで、生き残っているのは何人だろう? (ピンク・フラッグ - ワイアー)

Wire by : : Kasper
Wire, a photo by : : Kasper on Flickr.

ワイアー(Wire)の新作はライヴ・アルバム「The Black Session - Paris, 10 May 2011」です。と言っても普通の会場で演ったものではなく、昨年5月にパリのラジオ・フランスで、少数の観客を招待して録音されたスタジオ・ライヴです。実は昨年後半のツアー会場で限定販売されていたものなのですが、今回めでたく一般販売されることになりました。

国内盤の CD は2月20日の発売ですが、ダウンロード版のほうは先行リリースされていて、すぐに購入可能です。

昨年のツアーは、2010年暮れにリリースされた「Red Barked Tree」からの曲が中心だったのですが、Two People in a Room、Drill、Kidney Bingos など、しばらく演ってなかった古い曲も多く演奏されました。

ただしこのアルバムのハイライトはやはり、演奏時間10分にも及ぶロング・ヴァージョンの「Pink Flag」でしょう。1977年にリリースされたファースト・アルバムのタイトル・トラックで元々コードが2つしかない曲だったのですが、さらにコードを減らしワン・コードで延々と続きます。2000年のワイアー復活以降もライヴでは毎回必ず演奏されてる曲です。もう35年近く演奏し続けてます。

何人が死んで、生き残っているのは何人だろう?

ぼくは赤い奴隷商人に買い戻された
物資がかき集められ、戦略を策定
時計はすべて、18時15分に合わせられた
1955年の死者、生存者数を報告せよ

ピンクの旗が、うなり声を上げてはためき
少年兵たちはラッパを吹き鳴らした
懺悔する間もなく、命令が下る
3月4日には帳簿が改竄された
3月12日現在、消息が判明した数を報告せよ

何人が死んで、生き残っているのは何人だろう?