2012/06/11

俺がここにいるだろ。見えないのか? (This is PiL - パブリック・イメージ・リミテッド)

Rolling The Ball 絵: ジョン・ライドン

PiL のニューアルバム「This is PiL」が発売されてそろそろ2週間になります。みなさん、もうお買い求めになられたでしょうか?「DVD 付きの限定盤待ちで、まだ届いてないんだよ」という人も多いみたいですね。何だかディストリビューションやってる会社が限定盤の出荷をミスって流通が混乱してるという噂もあるんですが、大丈夫、もうすぐちゃんと届きますから、もう少しだけ辛抱しましょう。

ただ老婆心からアドバイスさせていただきますと、アルバムだけで64分に及ぶ大作です。アナログだと2枚組で、中身の濃ゆい12曲がみっしり詰まっています。一度聴き終えると、またすぐに繰り返し聴きたくなります。この上さらに2時間半のライヴを丸ごと収録した DVD まで届いたら大変ですよ。寝てるヒマなくなってしまいますよ。とりあえず単体の CD かレコードを先に買って、ゆっくり味わいながら DVD を待った方がいいと思うけどなあ。

そうすると CD がダブっちゃう?それも心配ありません。だって聴けばほかの知らない人に「いいから、一度黙って聴いてみな!」って絶対 CD を押し付けたくなりますから。2、3枚くらい余計に手元に置いといても無駄になることはありません。

さて、今回のアルバムは何度かここにも書いた通り、イギリスはコッツウォルズの田舎のスタジオで6週間かけてレコーディングされたものです。ジョン・ライドンはインタビューでしきりに「納屋で羊と一緒に録音した」なんて言ってますが、本気にする人がいるといけないので一応説明しておきますと、使ったのはスティーヴ・ウィンウッド所有の Wincraft Music Studios という石造りの納屋を改造したスタジオです。アルバムを通じて聴こえるライヴな感じの残響音は、このスタジオの石壁によって生み出されたものです。ただし羊に囲まれていたのはホントです。「One Drop」のプロモーション・ビデオでスタジオや周囲の風景が見られます。

俺たちにふさわしいスタジオだよ。似合わないって?本当のことを言えば、予算の都合もあって、見つけた中で一番安く使えるスタジオがあそこだったんだ。スティーヴィ・ウィンウッドが所有してる羊の国のど真ん中にある納屋みたいな建物さ。ヤッホー、羊たち!

蓋を開けてみると、これが最高だったんだよ、何しろそのスタジオにはジム(James Towler)っていうすげえエンジニアがいたんだ。俺がずっと音楽に関して言い続けてきたこと、俺たちがずっと言ってきたことを、彼はちゃんと理解していた。マイクがちゃんとセットしてあってすぐに使えるようになってるから、俺たちはリハーサルをして、ジャムって、あとは録音するだけでいいレコードが仕上がる。いちいち細かな指示をする必要なんてない。最高のスタジオだよ。曲のほとんどはライヴ形式で録音したんだ。

PiL のメンバーはお互い複雑に影響し合い、いわばパッションのトレードで成り立ってる。ペンと紙で書くだけのものとはわけが違う。俺たちにはゆっくり新曲のリハーサルをする時間なんてなかったし、一旦レコーディングに入ればハードワークになるってことが分かっていた。だが俺たちはお互い人間としてよく分かり合ってるから、そんなことは問題にならない。だからほかのメンバーが即興で演奏するその場で、それに合わせて詞を書くことができる。

俺達のやる即興というのは、膨大な考えを様々な作品に注ぎ込む作業なんだ。6ヶ月に及ぶ集中的なツアーを終えると、脳味噌が「また何か新しいことをやらなくちゃならない」って状態になるんだ。

でき上がったアルバムは、ちょっとラフに聴こえるなって自分でも思う。だがそういう作品なんだ。俺たちは完全に働き過ぎの状態だった。毎晩、毎晩、連日毎回、2時間半のギグを続けていて、俺の声も枯れ気味だった。けど俺たちは望んでそうしたのさ。過労状態でそりゃつらいさ。だがハードワークは素晴しいものを産み出すんだぜ。

俺がピアノの前に座って、歌のインストラクターと一緒にド、レ、ミ、ファ、ソーなんてやるわけないだろ。そんなんでろくなものはできない。

すげえ大変な道のりだったよ。だがもう解決したんだ。俺たちはツアーをすることで、バンドとして生き残るために必要な金を作ることができた。うれしいことに、俺たちはそうやって生き残れたんだ。メジャー・レーベルの足枷や束縛から逃れられて本当にうれしい。俺は20年間金がなくて、ツアーもできなければ、レコードも作れない、何ひとつできない状態だった。多少の金を稼いでも、レコード会社への借金返済に消えていたんだ。だからメジャー・レーベルがどんどん没落してうれしいよ。自業自得だ。

John Lydon interview – the long version

アルバムを聴いてまず印象に残るのが、新メンバー、スコット・ファースの弾くぶ厚いベースの音です。人によっては「あれ?Metal Box?」と思うかもしれませんが、よく聴いてください。Metal Box とはまた質感が全然違います。ベースの音色も曲ごとに多様で、何というか、アルバムを通じてこれまでのPiL にはなかった暖かでハッピーな感触を、彼のベースが醸し出しています。

スコッティは初日からバンドにしっくりと馴染んでいた。彼が最初にネットで送ってきたのは、コワ面のフーリガン風スキンヘッドの写真だったんだ(笑)。思わず吹き出してしまったよ。彼の経歴がまた多岐に渡っていて傑作だった。スティーヴ・ウィンウッドと一緒にやっていたと思えば、次はすぐにスパイス・ガールズのツアー・バンドに切り替わるんだぜ。俺たちと一緒にやっていけるオープンな心の持ち主だと思ったね。

Interview: John Lydon

信頼できるメンバーやスタッフと共に、約2年に渡るツアーでオーディエンスから大きな力を得て、経済的な問題もクリア、ニューアルバムを引っ提げて新たなツアーに出るジョン・ライドンはこれまで以上にパワフルでポジティヴです。なんだか最近は「熱血」という言葉が似合うようになってきました。そうです。パンクとは熱血で真っ直ぐなことなんです。This is PiL!

Q: パンクはまだ生きてると思いますか?

俺がここにいるだろ。見えないのか?

John Lydon talks PiL, Sex Pistols, Green Day and the Olympic Games

(2012/06/12 追記) ジャケットの動物は毛刈りの途中で逃げ出した羊かと思ってたんですが、正しくはバッファローだそうです。ジョンが新しく始めたビデオ・ブログ、ロリポップ・ブログでそう言ってました。

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